儚い
予測変換であの人の名前が一番最初に出てくることは無くなった。だって、もう、あの人の名前を入力することは無くなったから。
画像フォルダには私の大好きな笑顔が、昔のまま残っている。私に向けられた笑顔が。
繋いだ手を離すと、少しずつあの人の温度が私の手から消えていく感覚を知った。私の右手にはあの人の匂いが残っていて、胸がひどく締め付けられた。大好きな、この匂いともお別れだ、と思ったその瞬間、まだ好きであることを痛感した。
最後であると悟ったとき、それから、その「最後」を終えたあとの余韻、残り香、温度。そして、色のない生活。
恋の恐ろしさを知った。
そして、今も縛られている。