見出し画像

旅をする石③ ラ・フィカ

Dear my friends,

こんばんは。今日は久しぶりの良いお天気だったので、もう一度サイクリングに行きました。

道沿いのトゥルッリは、昔のが崩れたまま放置されているものや、コンクリートで補修したもの、白い塗装が塗られたものなど、いろんな種類があります。これをあまりよくないという人もいるかもしれませんが、その自由な感じが私は好きです。石は、表面が時間の経過とともに黒っぽい色に変色していきます。新しくリノベーションするとまた白に近い色になり、新しい家は見た目の印象も若いです。

進んでいくと、緑の牧場に突然大きな穴が開いてるのを見つけました。遠くから覗いてみると、地面を掘ったすぐ下が石だらけです。これがその土地なんだなと実感させられます。日本では水や木の自然の循環が語られることが多いと思うのですが、ここではそれが石なのかもしれません。太古の昔の動物たちも、まさか2−3億年後に海から陸になって石として掘り出されて家になるなんて、きっと思ってなかっただろうなという感じもします。

風が吹くとオリーブの木が揺られて、銀色に輝いて見えます。オリーブの葉は常緑樹で、葉の裏側の方が表よりも白っぽくなっています。眼下に広がるオリーブ畑には、まだ若い木から樹齢何百年という木まであるのですが、よく剪定されているので背丈はあまり変わりません。

ジョヴァンニさんはよく、オリーブは大きな盆栽みたいなものだと言います。丁寧に何十年何百年かけて、人が育てていくものなんですね。5年経ってもまだ苗木と呼ばれるオリーブですが、昔からある木は幹が太く右回りにトルネードしています。長年生きていると地球の自転を受けて、全部同じ向きにねじれているので、木によって個性があって形が違ってとても面白いのです。

樹齢1000年のオリーブ

それから根を横に横に伸ばしていくので、隣の木との間に一定の間隔が生まれます。それが独特の景観を生み出していて、飛行機から見ると地面に黒い点がたくさんあるように見えます。木の枝も伸び方が独特で、夜などは少し怖いです。愛・地球博のキャラクターのモリゾウのようだったり、伊坂幸太郎の『クーパーの森』の動く木のようだったり、白雪姫に出てくる森の怖い木だったり、に見えます。

オリーブは400種類以上あって、農家や地域毎に特徴があります。ここでも、18種類の木を育てていて、それは病気への対策や収穫時期をずらすためだったりします。昔は全部手で収穫していたようですが、今では自分の家で食べる分は手で、それ以外は木を揺らして実をネットに落とす方法でやっているようです。

収穫からオイルにするまでのスピード感も重要で、秋になると毎日とても忙しいと言っていました。オイルにするまでが収穫なので、かなり長い時間の作業が必要です。時間や振動で少しずつ品質が変わってしまうので、やはりここで食べるのが一番美味しいなと思います。

イタリア全体で生産されているオリーブの約60%はここプーリア地方で作られています。昔は南で採れた色々な種類のオリーブを全部まとめて北に出荷し、北部でオイルに加工して国内外に届けていました。でも次第に南部で加工する機運が高まって、オリーブの品種や各家庭ごとに精製するようになり、今では地域や農家の特色が感じられるオイルが増えました。同じイタリアンレストランでも、オイルの香りや味が違うので面白いです。

オリーブオイルは全ての料理に使いますが、私が一番驚いたのは卵かけご飯です。卵自体も、庭で飼っている鶏が産んだものなので鮮度も気持ちも美味しいのですが、その旨みをさらに引き出してくれるのがオイルです。香りがたまりません。

さて、オリーブオイルの話をしていたらお腹が空いてきました。そろそろご飯の時間です。

蜂の巣を使った伝統料理のトリッパ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?