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オンガク猫団コラム

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記事一覧

アイムソーリー【オンガク猫団コラムvol.37】

アイムソーリー【オンガク猫団コラムvol.37】



ついこないだの昼下がり、オイラは某ファストフード店へ行った。
なんだか休憩をしたくなったのだ。オイラの前に並んでいた、小太りでハゲ頭のおっさんは、小声でバニラシェークのSをオーダーした。体型から邪推するに、ホントはLサイズにしたいのに、遠慮したように見えなくもなかった。少しは、健康に気を遣っているのかもしれない。焼石に水の健康法って、思わずやってしまうことがある。

おっさんは、肩に大きな皮の

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阿呆につける薬 【オンガク猫団コラムvol.36】

阿呆につける薬 【オンガク猫団コラムvol.36】



オイラは、選挙に行くのが好きである。実は投票すること自体は、それほど好きじゃない。じゃあ何が好きかっていうと、投票所の学校内にズカズカと入れることが好きなのだ。母校でもなんでもないから一切の感傷はないのだけど、学校という日頃近づくことを許されない不可侵でミステリアスなタブーエリアに正々堂々と入れる権利を有する非日常性に、奇妙な感興をそそられるのだと思う。ま、学校なんて入ったところで、大したこた

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夏の町内会薬撒き事情【オンガク猫団コラムvol.35】

夏の町内会薬撒き事情【オンガク猫団コラムvol.35】



東京暮らしを始めて30年近く、23区内でヒグラシの鳴き声を聞いたことがなかった。3.11のあった2011年の夏、オイラは諸事情で引っ越すことになり、あちこちを物色していたのだ。吉祥寺あたりで手頃な賃貸のアパートを探していて、目ぼしそうな3つの物件を内見し、不動産屋の営業用軽ワゴン車で井の頭公園の脇を通った。その時、東京暮らしで初めてヒグラシの鳴き声を聞く。懐かしい、と 思わず快哉を叫びたくなっ

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臭いものに蓋【オンガク猫団コラムvol.34】

臭いものに蓋【オンガク猫団コラムvol.34】



バロック系のコンサート行ってきた。区の広報で知った無料の催し物ではあったが、かなり内容の濃いものだったように思う。スマホをウォークマン代わりにのべつ音楽を聴いていると、生の音が愛おしくなることがある。日頃から温かいアナログの音を奏でる力量のある、ハイエンドのスピーカーから再生して音楽を享受していれば、あるいは生の楽器の音をオイラの耳が欲しがることがないのかも知れない。アルコールに耽溺していて日

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スマホとの距離問題【オンガク猫団コラムvol.33】

スマホとの距離問題【オンガク猫団コラムvol.33】



CDなんかで落語を聴いていると、古い日本語の表現に出くわして「ほぅ~」と唸ることがある。そんな言葉、きょうび日常会話ではまず使わないなあ、と。オイラの日常会話のセンスがズレている可能性も否定出来ないけれど、例えばこんな言葉。「やったりとったり」とか。こういう手合の言葉を日常会話にさり気なく差し込んで、話相手の反応を見たりなんかしたいなあ、なんて遊びゴコロみたいな気持ちがいつも胸の中でスタンバイ

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ドアホンが街から消える日【オンガク猫団コラムvol.32】

ドアホンが街から消える日【オンガク猫団コラムvol.32】



5/5のNEWSポストセブンのコラム記事で、こんなのがあった。
「自宅にいるときに、突然の訪問者。チャイムが鳴っているが誰かはわからない。こうした場合、きちんと対応をしているだろうか?」

えっ、こういうのって、そもそも対応しないといけないもんなんだろうか。最近オイラが考えるドアホンってのは、基本的に知らない人が押すもんじゃなくて、知り合いが訪ねてくる時用のものだと捉えている。大前提で、自

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コモディティ化のほろ苦い事情【オンガク猫団コラムvol.31】

コモディティ化のほろ苦い事情【オンガク猫団コラムvol.31】



吉野家が現在のPOSシステムを導入する以前の店員は、客が注文した物を全て暗算で対応していたように記憶している。駅のキオスクの店員も、レジで精算するシステム以前は、客が買った商品を瞬時に暗算をして、電光石火の手際の良さで、正確に客に釣り銭を渡していたものだ。接客に向いている資質と、頭の中の計算能力がものをいう技能職だった。彼らの仕事を見るのは楽しいものだったし「こんな芸当とても真似できねえ。オイ

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清潔なファシズム【オンガク猫団コラムvol.30】

清潔なファシズム【オンガク猫団コラムvol.30】



ファストフード店で、時折見かける光景がある。1リットル大の水筒が、机の上にドンと置かれているのである。他人の持ち物にとやかくいうつもりは毛頭ないが、なんとなく気になってしまう。そこでオイラは、自分の食事を粛々と摂るわけだけど、どうしてもその水筒に視線が行ってしまうのだ。いや、そんな瑣末なことに神経を尖らせてしまうのは、みみっちい人間のなせる技で、鷹揚に構えて自分の食事を楽しむべきなのである。

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闖入者は笑う【オンガク猫団コラムvol.29】

闖入者は笑う【オンガク猫団コラムvol.29】

ニューヨークのイーストリバーでは、釣糸にサメが引っ掛かることもあるそうだ。日がな一日ぼんやり過ごしていたマンハッタンの釣天狗は、さぞかしビビったことだろう。日本でも最近タマゾンとか言われている多摩川では、外来種だらけという話をよく耳にする。噛みつき亀、アリゲータ、なんとピラニアまでいるらしい。これじゃあ、おちおち川遊びなんてやってられない。

そこまで大袈裟な話ではないけれど、よく行くスーパーの買

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華麗なる梍(サイカチ)【オンガク猫団コラムvol.28】

華麗なる梍(サイカチ)【オンガク猫団コラムvol.28】



あまり自分とは縁のない駅や土地に行くと、なんだかちょっとウキウキした気分になることがある。オイラに関していえば、例えば山手線だと、全駅で降りたことがあるけど、それ以外の線となると未踏の駅はやたらとある。JRなら比較的知っている駅は多いけど、私鉄、地下鉄となると、謎の領域だらけだ。用事がないと勢いそうなるものかもしれない。

つい2週間前くらい前、野暮用で水道橋駅に行った。オイラにとって水道橋は

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ドヤラーの黄昏【オンガク猫団コラムvol.27】

ドヤラーの黄昏【オンガク猫団コラムvol.27】



創業40年越えの喫茶店に行った。タバコの精霊が宿っているような、煤けた純喫茶だ。以前からずっと気になっていたのだが、カフェブームのせいか、いつも混んでいて入れなかった。昨日、エアポケットのような客のいない時間に、ワイフと一緒に運よくフラリと入店することができた。東京は昨日満開宣言が出たので、多くの人は、コーヒーよりも桜に関心が寄っていたせいかも知れないな。

純喫茶といえば、何故かヨーロッパ中

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時間の神様との対話【オンガク猫団コラムvol.26】

時間の神様との対話【オンガク猫団コラムvol.26】



会社の中で特にやるべき仕事がなくなった時、持て余した時間をやり過ごさなきゃならないってことがある。ずっと以前に勤めていた会社ではそういうことがしょっちゅうあった。
そんな手持ち無沙汰な時間をやり過ごすことに関しては、オイラは得意なタイプなんだと自負している。そんなの大した自慢ではないが、ということを一応付記しておく。

やることないときは、ホントは読書がベストな選択だと思うのだけど、一見地味に

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キャメルボーンが割れるとき【オンガク猫団コラムvol.25】

キャメルボーンが割れるとき【オンガク猫団コラムvol.25】



オイラが子供の時分には、犬のフンは往来のあちらこちらに落ちていたものさ。実際、踏んづけてしまったことも数知れない。道路の真ん中にシェパードなんかの大型犬が大便しようものなら、面白いように車がタイヤで轢いてしまったものだ。そういう他人の不幸をウォッチングするとオイラは、なんだか得をしたような気分になったことを思い出す。同情心のカケラもない、底意地の悪いガキだったのかもね。何しろ大型犬の排泄物は、

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親孝行という重たい年貢【オンガク猫団コラムvol.24】

親孝行という重たい年貢【オンガク猫団コラムvol.24】



ついこないだの早朝、オフクロから電話があった。高齢の親から、出し抜けに電話があると不吉なイメージしか湧かないものだ。こんなに朝早くどうしたの?とオイラは訊く。するとオフクロは何だか口ごもる。自分から電話しておいて、全く意味が分からない。少し間を置いて、ようやくオフクロが苦々しく言葉を発する。
「お前、これから仕事行くのか?」
「うん、そうだけど、何なのこんな朝早くから電話なんてさ」
「実はね…

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