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アリバイと渡り鳥【オンガク猫団コラムvol.13】

オイラのちょっとした知り合いで、お節介な親戚とSNS上で不幸にも繋がってしまった人がいる。かなり不本意だったらしいけど、親戚なので友達申請を拒否できなかったとか。それからというもの、その人はSNSにちょいちょい嘘を書くようになった。つまりは、目眩まし。鵜の目鷹の目の親戚を欺くために、敢えて誤情報を垂れ流して、プロパガンダする作戦なのだとか。うむ、なるほどね。

実は休日なのに「頼りにされているから、休日返上。でもこういう時の仕事は燃えるね~!」というような内容の、お仕事リア充を装った「カムフラー充」を振りまいて、その親戚から余計な詮索をさせないという寸法なんだとか。

日本人の特性なのか、SNSに対して割と多くの人は真実を語りたがる傾向があるような気がする。そういえば、ネット黎明期には「ネカマ」とかいう人種がいたなあ。彼らは今どうしてるんだろう。オイラも一度ネカマってヤツをやってみたかったけど、やったらやったで直ぐに飽きてたのかも。

誰かを傷つけないという配慮ができるのなら、まぁ多少のホラなら吹いてもいいとオイラは思うんだ。あとね、活字になると逐語的に信じてしまい易い、という国民性があるんじやないかな、と思う。

これは孫引きになっちまうんだけど、三木清さんがこんなことを言っていたそうだ。以下引用
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「(新聞に)自分のことを書かれたら必ず間違ってるのなら他人のことも間違っているはずですよ。それならほかのものも疑ってかかるのが当然なのに、ほかのものは信じる。これが活字の恐ろしいところなんです」
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まさしくその通りだ。そういえば上京して独り暮らしをしてる息子のツイッターを逐一チェックする子離れができていない母親のことが、ネットで話題になったことがある。田舎の親戚の中には、得てしてこういうヘリコプターペアレント的な傾向の人が意外と多いのだとか。

実は今回の話は、続きがある。ウソを書き連ねたはずのSNSの内容が、緩行性肥料みたいにじわじわとホントの事になってきているのだ。まさかの仕事リア充。まるでデスノートが完璧な殺人遂行能力を発揮するように、そのSNSに書くと少し遅れて実現してしまうという未来日記と化している。不思議なことがあるもんだ。

不思議といえば、こんなことがあった……。

今の時期は、様々な渡り鳥が飛んで来ている。オイラがとりわけ気に入っているのが、ジョウビタキのオスだ。オレンジのお腹に真っ黒いマントを背負っていて、翼には白い斑点がある。ジョウビタキは、何故かメスよりもオスの方が個体数が少ないし、メスはオスに比べると極端に地味な外見なのだ。お気に入りのこの鳥をいつか生で見せたいと、ついこないだオイラの奥さんに話していたのだ。

今朝、仕事に向かうオイラをいつも通り奥さんがお見送りしてくれた。その時、アパートの玄関前にあるフェンスの上にジョウビタキのオスが停まっていて、オイラたちをじっと見つめていたのだ。綺麗で可愛い。眼福だった。奥さんに見せたいと念じていたら、その念波がジョウビタキに届いたのかも知れない。

以前、ジョウビタキのオスを見かけたのは雑司ヶ谷霊園で、もう10年前のことになる。ズームレンズのデジカメで撮影して、家に帰ってPC上でデータを確認したら、なんと上の嘴が半分折れていた。大陸を横断飛行してきて、あの嘴で日本を満喫できたんだろうか。オイラは、この時期になるとあのジョウビタキのオスをたまに思い出してしまうのだった。

オンガク猫団(挿絵:髙田 ナッツ)

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