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ドキュメント72時間 コンビニイートイン【オンガク猫団コラムvol.16】

コンビニのイートインが、最近気になって仕方ない。カフェとかファーストフードが満員状態で溢れて流れ着いたのか、それとも初めからイートインを目指してやって来るのか。いずれにせよ、コンビニイートインが最近盛況になってきている。

オイラが色んな街で、ウォッチィングしたイートインな人で、特に印象に残っている人たちを列挙してみよう。

缶コーヒーを一つ買って、スポーツ新聞を見ながら競馬予想を熟考するお爺ちゃん。机のコンセントにワンセグテレビを繋いで、イヤホンで熱心で見入るオッサン。同じくコンセントにテーブルタップを挿入して、スマホ、携帯ゲーム機、携帯の充電器、等々を精力的かつアクロバティックに電源を使う、ニートのような風貌の小太りの若い男。くるくるヘアカーラーをコンセントに挿して、アンニュイな表情で毛先をクリンクリンにしている茶髪の大学生位のお歳のオネエちゃん。

最近、地元のイートインで見かけた推定65歳位のインテリそうな初老のオッサンは、分厚い英文系の書類と、手垢で擦り切れた「古事記」を傍らにマックブックに何やら必死に入力作業をしていた。随分とアカデミックな感じがするけども、どうしてイートインなんだろう。カフェよりもBGMが静かで、店内が蛍光灯の白い光だから勉強とか研究にもってこいだからなんだろうか。自宅で作業をしようとすると、そんなに落ち着かないものなのか、オイラは理解に苦しむ。

数日前、某所のコンビニのイートインで見かけた人たちは、これまで見た人たちとはちょっと違っていた。8人掛けの座席に一席ずつスペースを空けて、3人の爺ちゃんが座っていたのである。一人目は、青味がかったバナナを剥きピンと立てた状態で「はぅ、はぅ」と荒呼吸のような鼻息で、官能的にかぶりついていた。二人目は、酎ハイとおでんで、完全にアルコールで仕上がっている。三人目も、酎ハイでズブロク状態になっていて、椅子から尻が半分はみ出していた。超ヘベレケである。オイラはその光景を見て、あることに気づいたのだ。

それは、コンビニのイートインで、しっぼりと酒が呑めるということである。そこにいた爺ちゃんたちは、いち早くその恩恵に浴していたのだ。千円でべろべろに酔えるせんべろ酒場つーのがあるらしいけど、コンビニだとさらにコスパの良い酔っぱらい方ができるってことなんである。ゲコのオイラには無縁だが。

オイラは20代の頃、銀座周辺で働いていた。当時、銀座には「角打ち」といって、一般の酒屋で量り売りで升酒を売り、その店先で飲む呑兵衛のオッサンがいたものだ。今、立ち飲みが気軽で安いなんていう考え方があるけども、恐らくそんなの目じゃない。よっちゃんの酢漬けイカとかを齧りながら、サンダル履きのオッサンと、スーツを着たオッサンが普通に並んでコップ酒を飲んでいる。仕事でその付近を通る時、空気がちょっと怖いんで急ぎ足で通り過ぎたけど、ああいう風景も泥臭くていいじゃないか、と今になって思う。

もしかしたら、かつて路上を締め出された呑兵衛たちが、コンビニのイートインに鮭のように戻って来ているのかも知れないな……。そんな事に思いを馳せながら、オイラはこないだ某所ファミマのイートインで、ココアを飲みながら考えた。いや、戻ってくるのは鮭ではなくて、酒だったな。

オンガク猫団(挿絵:髙田 ナッツ)

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