観音様ウォッチ【オンガク猫団コラムvol.12】

オイラの散歩コースに、中規模の眺めのいい公園がある。ジャングルジムを始めとしたスタンダードな遊具は一揃いあって、24時間明かりのついたユニバーサルトイレもある。歴史のある公園らしく、桜の大木もあり、春には地元民でちょっとした花見になって賑わう。その公園に去年末、ふいに、観音様がやってきたのだ。

廻国供養塔という「観音菩薩像」が忽然と現れたのである。詳しいことは不明だが、どこかに祀られていた観音様が何らかの事情で、お引越しをしたということらしい。残念ながら、ファティマのような化現ではない。区の指定の業者が設置工事をしたようだ。

小学校がすぐ近くにあるからか、その公園に遊びにやってくる子供たちは、興味津々でおっかなびっくり観音様ウォッチングを始めた。子供たちにも畏怖の念があるのか、観音様をベタベタ触ったりはしない。拝んだり、ジロジロ見たりしている。

翌日、その公園に行ってみると観音様の足元には、びっしりと「どんぐり」がお供えされていた。一円玉も数枚ある。花瓶には生花が刺さっている。おまけにいい天気だ。エライ歓迎ぶりである。観音様の意外な人気ぶりが、なんだかオイラまで嬉しくなり、ご同慶の至りのような心境になった。

それからというもの、観音様へのフォロワーが日に日に増えていく。お供えも次第にバージョンアップする。公園に落ちているどんぐりから脱却し、きちんとスーパーで買った商品にシフトしていった。みかん、りんご、柿、といった生モノを始め、賽銭額も増えていく。公園に来る子供以外に、フォロワーは、地元の年寄りもいるようだ。

ある時は、「一日分の野菜ジュース」ってのがお供えにあった。観音様にも一日に必要なビタミンCとか植物繊維があるんだろうか。うむ。意外とあったりして。逆にビタミン不足気味の観音様ってどんな状態なんだろうか。実は下界のわれわれの知りえない天上界も世知辛く、バランスの取れた食事が難しいのかな。想像すると不謹慎だけど笑ってしまう。

ひょっとして、今の仏具屋さんでは「一日分の線香」とかあるんだろうか。今、気になってググってみたら「一日分のドライアイス」ってのがあった。これは観音様じゃなくて、亡くなった人用。最近の人の言い方で表現すると、亡くなった人って、「意識ない系」って言うんだろうか。いや、言わないか。ワカゾー言葉わかんねーな。

ところで、この公園のブランコは、日が暮れて誰も遊ぶ子供がいなくなってから、大人の利用者が出るのである。単なるブランコ好きなのか、ストレス発散なのか、振り幅の角度が90度になるくらい全力で、大スイングする人がいるのだ。それもかなりの時間やっている。推測だけど、20分くらい漕ぐ。常連の女性を始め、数人の大人がいるようだ。何故か昼間ではなく、夜漕いでいるのである。

ひょっとしたら、この公園のブランコは、一風変わったスペクタクルがあるのかも知れない。いつしかオイラはそう考えるようになった。そしてある日の晩、誰も公園にいなかったのを見計らい、ン十年振りにブランコに乗ってみることにした。それで気が付いたことがある。ガキどもの三半規管は、やっぱりスゲーな、ということだ。

さすがにブランコで、酔っ払いはしなかったが、なかなかのアトラクションで恐れ入った。多分、子供時代に比べて体重がある分、怖いくらいの重力が情け容赦ない。まさかこんな、スリリングな体験になるとは。夜、このブランコを漕いでいる大人の人の気持ちが少し分かったような気がした。いっそのこと、もっと漕いで見るか! とにかく勢いをつけるだけつけてみる。有り得ない加速が付く。すると目線ジャストの所にクリアな月が見えた。そうか、月だったのか! 何か少し分かったような気がしたが、その刹那、吐きそうになった。それから、オイラはそのブランコには乗っていない。

オンガク猫団(挿絵:髙田 ナッツ)

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