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何度も読み返したい素敵な文章の数々 vol.6

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チャーハンなんか、うまくなくていい。

 フライパンの上に、サラダ油をがんと注ぐ。大さじ一杯、二杯、知らねえ知らねえ。ボトルのままどくどく流し込んだら、ひねりを一気に回して強火にしてやる。パチパチカンカンにあったまったフライパンの周りから、白い煙がひょろひょろ舞い上がってきた。

 卵を手に取って、雑多に割ったらそのままどぼん。バチバチ言いながら固まり始め、このまま炒り卵として醤油でも垂らせば1品完成しちゃう。その頃、冷や飯をぶち込む。

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ダサいと思っていたものが、いつか突然格好良くなる。

 昼過ぎ、二日酔いの頭を手で叩きながら起き上がる。目は半開き、頬はむくんで水風船のよう。ただ、服装と髪の毛だけは昨日のまま、かっちり仕上がっている。バカみたいだ。

 いい加減目覚めようと思い、テレビを点けた。今流行りの俳優が、今流行りの女優と隣り合わせで座っている。僕は、その内容に大した興味も無く、タバコを吸いながらぼけーっと見ていた。水を飲んだら、血の味がした。俺はまた昨日も何かやらかしたのか

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気づかれないけど、大事なこと

気づかれないけど、大事なこと

・実在する地方の町における、高校生たちのありがちな休日の過ごし方。
・食品加工場でありがちな辛い作業。
・ちょっとマニアックなスポーツについて、ファン同士はどんな会話をすることが多いか?

これらはいずれも、私が最近、脚本執筆のために調べたことです。
どれも、いざ調べるとなると、なかなか確からしい答えにたどり着けない。
「今どきネットでちょちょいと検索すれば大抵のことはわかるだろう」と、思われるか

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倚りかからず

反省と共に書いているのだけど、権威があるものに倚りかかることは何ともダサいことである(僕はダサいと思っているが、価値観は人それぞれです)。

倚りかからずとも、いい仕事をしていたらお客さんと人はついてくる。ダサいと思いながら権威に寄りかかることから生じる負い目の悪影響は、権威にすがることの好影響を相殺して余りある。少なくとも、僕の場合は。

何かにすがるのは、自分のやっていることに自信が無い証拠で

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小手先のデザイン

小手先のデザイン

穴が空いたり、小さなシミができてしまった衣類の補修に、ダーニングという技術がある。ダーニングマッシュルームとよばれるキノコ状のツールを使って、毛糸や刺繍糸で穴を補修するものだ。

ようするに "かけはぎ" なのだけど、ダーニングには " 装飾ダーニング " と呼ばれる、あえて目立つ色の糸を使って繕うことで、補修跡をワンポイント刺繍のようなアクセントに生まれ変わらせるものがある。
裁縫が得意でなくて

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自分がクソほどムカつくので、本を読むことにしました。

 これまで僕に『三浦は本を読むと良いよ』と言ってくださった方々、すみませんでした。いつも(そうなんだろうなぁ 読まなきゃなぁ)とは思いつつも、心のどこかで(いやぁ、別に読まなくてもなんとかなるっしょ)と思っていました。本当にすみません。ありがたいお言葉を無下にしてしまって。

 もう、書くことがどんどん見つからなくなってしまい、デクレッシェンドです。じわじわと自分の首が締まっていくのを、底抜けの怠

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書けないときほど部屋はきれいになり、溜まった録画が減る

書けないときほど部屋はきれいになり、溜まった録画が減る

お正月明けに手がけた文章は、思いのほか難産だった。年末から続いている仕事で、締切はもとから年明けに設定していたので遅れてはいない。でも設定した当初は「年末か、年明けすぐには仕上げて余裕を持とう」という目標だったのに、全然達成できないまま締切直前を迎えた。

難産のタイプにもいろいろある。今回は材料がそろっていてあとは書くだけなのに、書くまでの時間がかかってしまった。いわゆる「腰が重い」というやつだ

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ヒーローは傷だらけ

ヒーローは傷だらけ

どうしようもないことに、いつまでも浸っていたってなにも生まれない。声をあげて上を向いた瞬間、霧の中に光が差した日。ふと、そんなことを思った。

昨日R-1ぐらんぷりで優勝した濱田祐太郎さんは盲目の漫談家。ネタの中には目が見えないことにまつわるエピソードが連ねられて、それがおもしろおかしく語られる。

賞金を意味のないことに使いたいんですよね、例えば3Dテレビとか買って、だまされへんぞ!とか言い

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3、4、5月がヒマです。仕事が欲しいです。

切実です。

昨年末にひとつ仕事を辞めたので、ガクンと収入が落ちてスタートした2018年。

山野、仕事辞めます!
https://note.mu/yamanononote/n/nb279c0c25e16

見切り発車で辞めたので、次の仕事のアテもなく、とりあえず今日まできました。

1月は年明け早々から舞台がはじまり、それが終わったら福島でWSと、かなり楽しくスタートしたわけですが、今月の後半は

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言葉とその奥にあるものと伝わらないもの

言葉とその奥にあるものと伝わらないもの

ネットで「xxの本当の発音は〇〇だから、日本もそれに合わすべきじゃない?」というのを見てちょっと考えた。

そういうことを言い出すのは英語を得意とする人たちだ。他の言語の人はあまりそういうこと言わない気がする。(英語以外は全てマイナー言語の意識があるから?フランス人は言いそうだな)

「ゲイリーじゃなくて、本当はギャリーだよね」的な。まあ間違っていないとは思うけど。言葉ってそう簡単にはいかないよな

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愛すべきおバカ映画たち3選。

愛すべきおバカ映画たち3選。

映画っていいですよね。
知らなかったことが知れたり、
見たこともないような映像が観られたり、
物語に自分を重ねて感動したり。

楽しみ方は人それぞれだけど、
映画が持つちからって、すごい。

たくさんの映画たちの中で、
上質な人生の無駄遣いができる映画というジャンルがあります。
とても真剣に作られているのに、
観るとなぜか可笑しい。
深くない。
気軽に楽しめる。
そして観終わった後、そんなに何

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満たされすぎて困っていた、と思っていた

満たされすぎて困っていた、と思っていた

私はひとりっこだ。
親がそこそこの年齢になってから産まれたからなのか、ただただ中途半端な成金だったからなのか、はたまた私自身がカワイイからなのか(すみません)、私はけっこう甘やかされて育った気がする。

小学校に入った頃から不足なくお小遣いを貰っていたし、習い事もやりたいと言ったこと全部しっかりやったし、そのために引っ越しまでしたりしたし、物心ついた頃から遠慮しいだった私がひとたび「あれがほしい」

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