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何度も読み返したい素敵な文章の数々 vol.4

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#エッセイ

スローライフ。フツーライフ。

日が高くなりはじめてから目を覚まし、布団に横たわりながらスコット・フィッツジェラルドの短編集『冬の夢』に収められた「罪の赦し」を読み進める。緊張感を含んだ物語が繊細な描写とともに進んでいく。

読書がひと段落すると、洗面所へ行って髭を剃る。奥さんが沸かしてくれたお風呂に入るためにドアをあけると、湯気がもわっと漏れ出てくる。浴室いっぱいに充満した湯気のおかげで湯船につかる前からあったかい。地味な幸せ

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弱火でトロトロ書くように。

弱火でトロトロ書くように。

昨年のある暑い夏の日。額に汗がじんわりとにじむ夜。彼はうちの自宅へとやって来た。彼がいったい誰なのか、ぼくにはわからない。そんなぼくは顔に笑みを作っていたが、その仮面の奥はというと…自信がなかった。なんなら少し、困り気味だったかもしれない。それくらいに、ぼくには彼の存在の意味がとんとわからなかったのだ。

しかし、妻は彼のことを知っていたようで、快く我が家に招き入れていた。「うれしい!」と弾むよう

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「らしくなさ」を磨くこと。

「らしくなさ」を磨くこと。

今日は女4人で、大阪から三重くんだりまでブルーベリー狩りへ行ってきた。車で片道2時間くらいか。
車中話題になることと言えば、大体決まってて、そりゃ恋愛の話になる。

そこで、盛り上がったのは、意外性を出すことで、異性の気を惹くことが重要だというハナシ。

なぜか、私がターゲットになって、どうすれば男性がその気になってくれるか、ということをビシバシ指摘された。

一、髪型をゆるふわにする。
∵私は常

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市原悦子さんが大好きな件。

市原悦子さんが大好きな件。

日本で好きな女優は、と聞かれたら迷わずそう答えます。いや、今までもそう答えてきました。

いつからかと言われると、多分小学生時分に「黒い雨」を見たときからだと思います。あとは大河ドラマで竹中直人演じる秀吉の母親役を演じたとき、かな。それから悦ちゃんの出るドラマ(もちろん「家政婦は見た」です)を見るようにしていたら、「桜乙女の事件帖」だったり「弁護士高見澤響子」だったり「いじわるばあさん」だったり色

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もう一度あなたに勘違いできるだろうか

もう一度あなたに勘違いできるだろうか

恋は勘違いのようなもの。

こんな言葉を耳にしたことがあるのだけれど、一体どこで耳にしたのだったか、そもそも耳にしたのではなく目にしたのだったか、それは定かではない。定かではないのだけれど、確かにその言葉はわたしの中にある。

確かにそうなのだろうなあ、なんて思う。誰かを好きになるきっかけなんて、たいていほんのささいなことで、そこからのめり込むようにして想いを募らせていきました。

ひとりで(あー

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飲みこもうとするそいつに、わたしは全力で抵抗する

飲みこもうとするそいつに、わたしは全力で抵抗する

それはいつでもわたしの周りに漂っていて、気を緩めていると突然ふわりとわたしを包みこむ。

ぞわっとした寒気のような感覚のあと、襲ってくるのは強い吸引力。洞穴から風が吸いこむようにして、わたしのことを引き寄せようとする。

わたしはいつでもその風から逃げ出そうともがいて、必死に抗いつづけている。

……たとえるならば、こんなイメージ。

わたしのメンタルががくりと不安定に傾くときの印象です。

これ

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フィルター越しの欲求

フィルター越しの欲求

「これがほしい」「あれがやりたい」「どこそこへ行きたい」「あれが食べたい」

人間の欲求は果てしない。欲求があるからこそ、物事へのモチベーションが上げられるという側面もある。

ただ、この欲求は、正しく育まれなければ健全に持てないものなのかもしれない、と思っている。

何度か話したことがあるけれど、わたしは何かを選ぶとき、真っ先に値段を見るくせがある。それは自分のお小遣いをもらい始める前、幼少期か

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イライラ撃退法

イライラ撃退法

何となく、周りの人に対してイラついてしまう日、ありませんか?
約束したことをいつまで経ってもやってくれない人があっちにもこっちにもいるぞ、と思ったり、「私のこと軽く見てるよね?」という態度を人からとられてしまったり……。

「やるべきことをやってくれない人」に関しては、催促したらうるさがられるかな?と遠慮するのを止めて、リマインドの回数を増やすぐらいしかできることはないと思います。
こういう時は「

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「特別なじぶん」と「平凡なじぶん」が編みだす世界のひみつ

「特別なじぶん」と「平凡なじぶん」が編みだす世界のひみつ

一見似ても似つかぬふたつの項目を見比べたら、実は根っこの原理は同じだということがある。

2年くらいまえに、「ストレングスファインダー」なる、個人の気質や能力を5つのカテゴリーに分類してくれる、いわゆる性格診断をやったのだけれど、その5つのうち「着想」というタイプが含まれていた。

他の4つは「達成欲」「学習欲」「内省」「収集心」だったが「着想」だけが少し異質で、でも説明を読めばとかくドンピシャだ

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いい文章を書けと神さまが遣わした人

いい文章を書けと神さまが遣わした人

デパートで知らない人に声をかけられた。
アメジストのような色の、おしゃれなコートを羽織ったおばあさん。

「ねえ、申し訳ないのだけれど、もしお時間があればタイツを選んでいただけないかしら。私のために」

私はすこし驚いて、とまどいながら、もちろんですと答えた。向こうの方を見やると、手持ち無沙汰で足を交差させ、たたずんでいる店員さんが見えた。

なぜ私に…?、と一瞬考えたのが透けて見えたのか、おばあ

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給食、体育、図工が好き!な理由

給食、体育、図工が好き!な理由

仕事の関係で「教育」や「学び」について、調べることが多い。
子どもの頃は、勉強って嫌なものの一つでしかなくて、掃除当番くらい嫌だった。逆に給食や体育、図工は大好きで、それっと明確に何に繋がるかが子どもながらに理解していたのかもしれないと思った。

そんな壮大なことではなくて、給食=お腹いっぱいになる、体育=動くの楽しい、図工=なんか作れる。本当それだけのことなのに楽しみで仕方なかった。コツコツと努

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意味をなさない言葉が宙を舞い

意味をなさない言葉が宙を舞い

ノイズキャンセリングの隙間を抜けて風の音がボーボー流れ込んでくる。テクノロジーVSネイチャーの攻防を聞き分ける。ネイチャーの圧倒的勝利。そんな遊びをしてる間に204番のバスが到着する。

足の悪いおじいさんが、ゆっくり乗り込むのを待って温かい車内へ。いつもの通り満席満杯すし詰め状態である。おじいさんは無事に座れたようで何より。

バスの中は老人5割。外人4割。若者1割。
これが修学旅行シーズンとな

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母が加トちゃんだった頃

母が加トちゃんだった頃

大学進学を機に上京すると、郷里の母から三日と空けずに電話がかかってくるようになった。
電話は夕飯どきに来ることが多く、
「ご飯、食べたんか?」
「お風呂は?」
「風邪引いとらん?」
と、毎回ドリフの加トちゃん的チェックを受けなくてはならなかった。
最後は、
「あんたの方からなんか連絡は?」
と聞かれ、
「別に」
と答えると、
「愛想のない子やねえ」
と言われて終了、というのがパターン。

私は大学

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健全な自信を持つには?

健全な自信を持つには?

「自信を持ちましょう」と言われて、「はい、わかりました」と自信を持てることって、まぁまずないですよね。そうやって持った自信というものは、自信ではなく、ただの妄想です。

根拠のない自信が大事だと言われたりします。それも必要なことだと思います。思いますが、ずっとそれだけでやっていくのは、やっぱり妄想です。

たとえばぼくには、文章に対する自信がありません。読んでくださるみなさんがどう思われるかわかり

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