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ムスタンへの旅 10 (ローマンタンの生活)

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紆余曲折あって到達したローマンタンは、すでに陽は傾き寒々とした様子の街だった。 ガイドは旧知の宿をいくつか回るが固く鍵が閉まった所、今は対応できないと申し訳ない様子で断るところ、やはり外部の人間がこの季節にローマンタンに来る事が珍しくいくつか断られた後、シャングリラゲストハウスというところを紹介してもらい宿泊することになった。

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このゲストハウスを営む夫婦も毎年冬季はカトマンズの家で過ごすらしいのだが、今年は実家とゲストハウスの手入れをする為 数年ぶりにローマンタンで冬を越すのだという。

急遽食事を作ってもらい夕食とするが、ストーブの燃料節約と電気の供給時間が2時間ほどと短いためにゆっくり話もできないでお開きとなった。

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ここでローマンタンの冬の生活についてお話ししましょう。
ローマンタンはチベット系のロッパ族が900人程暮らすムスタンの旧首都 電気は町はずれに設置されたソーラーパネルから供給されるが、雪に覆われる季節は電力を多くは作れず6時ごろから2時間程度供給されるだけとなります。 電話は丘の上に設置されたアンテナを使い時間不確定でときたま通じるといった具合。これも専用のソーラーパネルと供給される電気で動いているので状況が悪いと電気供給される2時間程度以外ほぼ通じない日も。

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水道は凍結により全く使えず毎日朝になると人々はタンクを担いで川に水くみに出かけます。 そのためシャワーはもちろんの事トイレも水が流れなくなり、トイレのたびにストーブで作ったお湯(大量に沸かして魔法瓶に保存している)と水を混ぜてぬるま湯を手桶にもらい用を足すことになります。

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暖房は薪ストーブなのですが木々が大きく育たないこの地では家畜などの糞を乾燥させたものを使います。ただローマンタンの周辺ではあまり多くの燃料を集めることが出来ずチャラン近くまで車で燃料集めに行く人が多いとのことで大事に燃料を使っていました。

薪ストーブは 朝/昼の食事時に1時間ほど 夜は2時間ほど燃やすのですが、ムスタンの人々はネパールの人と同じく部屋のドアを閉めないため
暖かいのはストーブの周りだけ。 

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またチベットの家は上から見るとロの形をしていて内部は吹き抜け、上にはプラスチックボードの屋根はついているのだがやはり室内は寒々としています。昔はこの吹き抜けに屋根もなくここで煮炊きをして食事をしていたそうですが、冬季は寒いので室内に囲炉裏を作ってそこで調理をしたそうです。
冬の時期は囲炉裏の煙で部屋の中は相当煙たく大変だったが薪ストーブを使うようになって今はとても快適になったと笑っていましたが・・・ 
私としては、もっと断熱を考えた部屋を作れば暖かく快適だろうと思うばかりでした。

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朝 敬虔なチベット仏教徒である彼らの多くはお香を焚きチベットのお経を唱えます。そして水を汲んだり雪かきして一日が始まるのですが隙間だらけのチベット住宅は家の中にも多くの雪が入り込み朝は吹き抜けの雪集めも大切な仕事でした。

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昼になり陽が出ると外で雑談や屋根の雪下ろし、陽が少ししか出ず寒い日は家の中の吹き抜けに当たる陽を求め 移動しながら雑談をし、女性はヤクの毛を紡いで編み物をしたりするそうです。 そして6時ごろに夕飯を食べ8時には布団に入る日々。雪と寒さのなか生活する彼らはとても強く優しい人々でした。

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