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GⅠマイルチャンピオンシップ

そのマイル重賞が産声を上げたのは1984年、今から39年前のことである。当時の日本競馬における競争体系は、いわゆる「八大競争」に集約されるよう長距離の競争が重視されており、主だった伝統重賞には長距離戦が多かった。
同年に「グレード制」が導入された際、日本競馬界は競争体系を見直し、近年欧州で主流になりつつあったスピード能力を重視する競馬の促進を図った。

マイルチャンピオンシップの誕生である。

国際競争へ追いつけ追い越せ、という日本競馬の奮励はこの頃には始まっていた、というわけだ。
1995年から指定交流競走となり地方競馬所属の馬にも出走資格が与えられ、98年には国際競争として外国馬の出走も可能となった。
そして04年、晴れて国際GⅠとして格付けされ現在に至るわけである。
その40年の歴史の中において数多くの名レースが繰り広げられ、幾多の名馬が誕生してきた。結果、1600mを主戦とする「マイル専」の競走馬は当たり前の存在になり、日本は世界でも有数の、スピード馬場を擁する競馬先進国へと生まれ変わったのだった…。
「マイルチャンピオンシップ」とは、いわば世界のトレンドに追いつくためにあがき続けてきた日本競馬の、挑戦の歴史なのかもしれない…。

とある競馬ファンが言う
「マイル戦はスプリント戦よりもエキサイティングだ」と。
またあるホースマンがこうも言う
「マイル戦は長距離戦よりも奥深く、面白い」と。


マイルはエキサイティングだ。
マイルは奥深く、面白い。
マイルは挑戦の歴史だ。
マイルには伝統と歴史が介在する。

ワンターンで行われる芝1600mのレースにはいつだって、僕たちが競馬に求める、そのほとんど全ての魅力が詰め込まれている…。

さあ、次のチャンピオンを決めよう。

「GⅠマイルチャンピオンシップ、まもなく出走です。」


はじめに

秋のマイル王決定戦。今年は4年ぶり京都での開催。
春のマイル戦線でヴィクトリアM、安田記念を連勝した女王ソングラインはアメリカ遠征により出走せず。安田記念2着だったセリフォスに昨年の勝馬として連覇の期待がかかります。対抗はシュネルマイスター。今春マイラーズカップを制しており以降も安定した成績。ルメール騎手の継続騎乗でマイルCS初制覇を目指します。以下、毎日王冠優勝のエルトンバローズ、京成杯AHを勝ったソウルラッシュはモレイラ騎手を鞍上に迎えて、と。絶対的主軸不在のなか強豪たちが集い、波乱含みといかないまでも、どことなく混戦ムード漂う一戦になりそうです。

コース攻略

2コーナー奥のポケットからスタートする外回りコースを使用。3コーナー過ぎの下りをスムーズに乗り切った馬が加速、直線で切れる脚を使って好走するケースが目立ちます。シンプルに能力の高い馬、瞬発力に長けた馬を選ぶのが良いでしょう。また位置取りも重要になるため鞍上の取捨も重要視したいです。

京都外回りは差し追込みが決まりやすい

今回のマイルCSにける要訣4点を箇条書きにしました。マイル重賞においては特に重要な勝利への条件となります。今回のNote記事のキモになる部分です。ご自分の推奨馬に当てはまるかどうかもチェックしてみてはいかがでしょうか…?

・3歳春までに重賞を勝っている、もしくは好走している
早い段階で才能を開花させた馬が、その後様々な臨戦過程を経て、マイル戦に戻って来たとき爆走。過去のマイルGⅠでは幾度となくこのパターンがありました。クラシックを経験した馬のマイル適性を見抜く目も求められます。

・マイル重賞での勝利経験かマイルGⅠでの3着内がある
中長距離路線と異なり、混戦模様のマイル戦線。別路線からの参入も目立つ中、マイルでしっかりと結果を残してきた馬にこそ印を打つべきです。
また1年以上重賞で結果を残していない馬は大幅に割り引いていいと思います。

・京都か阪神外回りコースで勝利、もしくは重賞で連対
久々の京都開催、未経験の馬が多いです。右回りで直線の長いコースは京都を除けば阪神外回りだけ。そこでの実績は高く評価したいです。新設京都で行われた重賞、マイラーズC組は加点して評価してみてもOK。

・上がり3F最速か33秒台の末脚で勝利したことがある
過去10年全馬に該当。また勝ち馬7頭が当日の上り1位もしくは2位でした。インディチャンプ、グランアレグリア、稀代のキレ馬たちの活躍はまだ記憶に新しい。

以上4点に加え、3~5歳馬、関西騎手もしくは短期免許の外国人騎手が騎乗、などを考慮し馬券を考えたいです。

それではここから今回の注目馬をピックアップしていきたいと思います。
今回は本命サイドから2頭。中波乱を期待して狙ってみたい穴馬1頭を抜いてみました。

本命推奨馬

◎セリフォス

4歳牡馬・ダイワメジャー産駒 栗東・中内田厩舎 鞍上・川田将雅

昨年阪神で行われたマイルCSでは、外から末脚を一閃して豪快な勝利を収めました。あれから一年、舞台は京都へ変わりますが、どのような進化を遂げたのでしょうか?
春の安田記念。昨年とは違い、後方からではなく好位ポジションを取った馬群の後ろ目につけ、馬なりで追走。直線では進路を見つけてから一気に加速、最終的にソングラインに交わされ2着に終わりましたが「負けて強し」の競馬だったと思います。今回も先行から好位につけ直線勝負の展開に持ち込みたいところ京都こそ初経験になりますが、阪神外回りのマイル戦は3戦して連対率100%。レーン騎手から先行意識の高い川田騎手へと乗り替りになることもプラスだと思います。
ダイワメジャー産駒におけるマイルGⅠ勝ちはセリフォス以外に4頭。
レシステンシア、カレンブラックヒル、アドマイヤマーズ、メジャーエンブレム…。どの馬も先行ポジションから押し切る競馬を得意としていた印象ですし、ダイワメジャー自身もそうでした。
古馬になり、父親譲りのレーススタイルを覚醒させたとなれば、やはり期待せずにはいられません。ここを勝利すればコパノリチャードが高松宮記念を勝った4歳3ヶ月を抜き、ダイワメジャー産駒における最年長GⅠ勝利記録を更新します。
不安要素を上げるのであれば、秋初戦に予定していた富士Sを夏バテにより回避し、春GⅠから直行となる点。ここで臨戦過程が狂ったことは大いに不安視されます。が、管理の中内田厩舎はGⅠ直行ローテで何度も結果を残してきました。好相性の川田騎手を鞍上に迎えGⅠ連覇に期待したいと思います。

対抗推奨馬

〇シュネルマイスター

5歳牡馬・Kingman産駒 美浦・手塚厩舎 鞍上・Cルメール

一昨年のNHKマイルC覇者、同年毎日王冠を制しマイル戦線の主役に名乗りをあげましたが、昨年はマイルCS5着と振るわず、他の重賞でも勝てないまま試練の一年を過ごしました。今年になって2戦目のマイラーズCで勝利。復活を印象付けると安田記念3着、毎日王冠3着と安定してきたように見えます。
22年の戦績を振り返ってみると。2月のドバイターフ(1800m)では直線で良い反応をみせたものの末脚を持続できず敗戦。中山スプリンターズS(1200m)に参戦の際は、追走するもペースについていけず終盤にバテてしまいました。翻って安田記念では勝ったソングラインと同じ上り32.9で2着。5着に終わったマイルCSも内で揉まれる不利があったことを考えればそこまで悲観する内容ではなかったかもしれません。
そう考えるとこの馬にとって真価を発揮できるのがマイル戦、といえるのではないでしょうか?4歳時の、いわば「武者修行」によって己の立ち位置を再確認した5歳の古馬は、このマイルGⅠを最大の目標に調整してきているはずです。前走毎日王冠では4角10番手から上り33.3で3着。エルトンバローズ、ソングラインには追い着けなかったものの、前に壁があり進路を右に切ってからのあのスパートは素晴らしいものがありました。
また前年までの輸送による失敗を考慮して栗東で滞在調整をしている点も大きな強みといえます。マイラーズCに続き輸送リスクはこれでクリアでしょう。
不安要素は毎回後方からの競馬になってしまっていること。幾分か展開の助けが必要かもしれません。とはいえ、鞍上Cルメールの過去5年における芝マイル重賞連対率は約35%。仕掛けのタイミングは誰よりも心得ているはず。
盤石の布陣で、2年越しのGⅠ奪取へ邁進します。

狙ってみたい穴馬

☆ソーヴァリアント

5歳牡馬・オルフェーヴル産駒 美浦・大竹厩舎 鞍上・池添謙一

前哨戦の富士Sから一頭。遅れてきた未完の大器が5歳にしてGⅠ初挑戦です。
前走富士Sは初のマイル戦にもかかわらず3着に入線。距離を不安視する声を一蹴しました。向こう正面で鞭が入り、いかにも初マイルといった走りではありましたが最後の直線ではしっかりと脚を使ってきました。
富士Sでこの馬に先着した2頭、ナミュールとレッドモンレーヴですが、マイルCSにおいては割引評価を入れています。
ナミュールは休養明け初戦が最も好パフォーマンスを発揮できる傾向にあり、好走の後は着順を落とすタイプです。レッドモンレーヴは気性難な一面があり、初の長距離輸送に大きな不安があります。マイルよりも1200~1400mの短距離の方が向いているような気もします。
話を戻しますが、昨年末のGⅢチャレンジカップを快勝して迎えた23年、初戦の中山記念はスローペースからの上り勝負になり着いていけませんでした。休養明け+12㌔も響いていたと思います。
続く鳴尾記念では好位に着けるも直線で伸びず惜敗。馬がやる気なくしたようにも見えたので扱い辛い一面もあるのかもしれません。
前々走の札幌記念では五分のスタートを最内枠から中団に着けて追走。先着したプログノーシス、トップナイフには離されましたが何とか3着に。巻き返しに成功しました。
基本ワンペースで、末脚勝負になった際の切れ味は他馬に劣りますが、時計のかかる馬場や展開になった際には一気に台頭してくると思います。
血統背景では母ソーマジックは桜花賞3着、マジックキャッスルはVM3着とマイル適性は低くないはず。妹のソーダズリングも先日の京都マイル3勝クラスを勝っています。
そしてなんといっても父オルフェーヴルの存在。鞍上に池添謙一騎手を迎えては否が応でも期待してしまいます。また池添騎手自身、デュランダルで連覇などマイルCS最多4勝の実績を誇ります
強豪揃いのなかどこまでやれるか不安な点も大きいですが、なんとか3着までには入れば、馬券妙味もあるな、と淡い期待を抱いてもいいかもしれません。

最後に

今回も序文からまあまあな文量のNoteになってしまいました。最後まで読んでくれる方がいたら、心からの感謝を申し上げます。

早いもので今年も一年、終わりが見えてきましたね。来週は秋の大一番ジャパンカップ待ち構えています。まずはここを当てて次週に臨みたいとこですが…。
こればかりは分かんないッスね(笑)



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