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NJRPG非公式プレイエイド/【人間性の楔】

「彼女はただの人間で、狂っていたけれど」シャドウウィーヴは泣き咽びながら、幻影の師匠を見た。自らの妄執が作り出した影を。その影はすでに生首ほどの大きさになり、人形めいた無表情を続けていた。師に何度も否定された人間性の脆弱さが最後に自分を救った。その意味する所は明らかだった。 キョート・ヘル・オン・アース 急「ラスト・スキャッティング・サーカス」#6より

人間性の楔

ニンジャソウルが齎すのが「ニンジャソウルの闇」であるのならば、「人間性の楔」は、モータルソウル…即ち、ニンジャの人間部分の心が齎すものである。「人間性の楔」は「ニンジャソウルの闇」と対になる存在であり、ニンジャに、様々なペナルティと…とても大きな可能性を与える。

『人間性の楔』基本ルール:『人間性の楔』は、キャラ作成時に1つ所持することを選択することができる。(基本的に、シナリオ途中で得ることはできない)『人間性の楔』を得たPCは、キャラクターシートに『人間性の楔(カラテ-1)』/『人間性の楔(ニューロン-1)』/『人間性の楔(ワザマエ-1)』/のいずれかを記入すること。PCがこのルールを所持している限り、選択された能力値は現在値や『成長の壁』の有無に関わらず-1修正を受ける。脆弱なモータルの心では、ニンジャの力を生かしきることは出来ないのだ。また、『人間性の楔』を持つキャラはシナリオ終了時に【DKK】が-1される。

心の弱点

心の弱点:『人間性の楔』を得たPCは、同時に『心の弱点』も1つ獲得する。『心の弱点』は2D33(6面ダイス2個を振り、どちらかを十の位、どちらかを一の位として見て半分にする)またはNMとの話し合いで決定する。

1系列…「ニンジャ能力への非適応」

「イヤーッ!」死神がチョップを放つ。一発目は囮、二発目こそが本命の一撃だろう。今はこの攻撃を敢えて受けて…受けて?本当に?あの鋭い一撃を喰らえば…人は死ぬ!「イヤーッ…アバーッ!?」反射的に固めた防御を通り抜けて、致命的な一撃が心臓に突き刺さった。

11:ニンジャ耐久力への不信:あなたは、ニンジャになることで得られた肉体的耐久力を信じられない。どんな攻撃にも死の危険を感じ、反射的に防御してしまうだろう。あなたが回避判定を行う時、回避ダイスが残っている場合、必ず1個は使用しなくてはならない。

いつのことだったか。屋根の上に置き去りにされたのは。…いや、川の中州だったか?どちらにしても、足の震えが止まることはない。ニンジャだからできる?…そんな事は分かってるつもりだった!

12:ニンジャ脚力への不信:あなたは、ニンジャになる事によって得られてた超人的な運動能力を信じる事が出来ない。それはなにかのトラウマだろうか?あなたが連続側転を行う際、1dを振る。1,2が出た場合、その連続側転の難易度を+1する。

どうやら、ニンジャというのはいっぱい居て、ネオサイタマを支配しているのはソウカイヤというニンジャ組織であり、首領のラオモト・カンは7つのニンジャソウルを宿しているという。…ありえない。カトゥーンでももう少しマシな設定を考える。これは悪い夢だ。そう、長く、悪い夢だ。

13:非現実的現象からの逃避:あなたは、ニンジャ真実を知ることから心を閉ざしてしまっている。素朴な防衛機制だ。きっとこれは夢だろう。いつか覚める。あなたがジツを回避する際、その回避難易度を+1する。また、あなたはニンジャネームを名乗れない。

2系列…「特定事項への忌避感・ストッパー」

散乱するクローンヤクザの死体。部屋の四隅には桐箪笥。中には万札、ハンコ、トロ粉末などのオタカラが詰まっている事だろう。鍵がかかっているがニンジャのカラテの前には役目をなさないだろう。…だが。この工芸品を造り上げた者は、どう思うだろうか。不意に襲うフラッシュバック。破られるオリガミ。壊された子供用UNIX。「…俺にはできない。」

21:物品破壊、略奪への忌避感:あなたは、物品を破壊したり、他人の金品を略奪することに対して忌避感がある。道徳心などニンジャ、そうでなくてもソウカイヤのヤクザには不要だ。…だが、無くせないものはある。あなたがトレジャーを入手してダイスを振る際、その出目を-1する。

ネギトロめいた死体が撒き散らされた事務所。先頃までまで人間であったものが辺り一面に広がる。戦利品を前に談笑する仲間たちが見える。…どうして、そんなに平気でいられるんだ。血の匂いが鼻を貫く。胃の奥から熱いものが込み上げてくる。これが日常になる?それは…嫌だ。

22:殺戮への忌避感:あなたは、惨たらしく生物を殺す事、あるいは殺された姿を見る事に忌避感がある。それはモータルとしては当然の生理的な反応だ。しかし、ニンジャにとっては。あなたが【サツバツ!】の効果を決める1d6を振る時、その出目を-1する。(1が出た場合は、【サツバツ!】が発生しなかったことになる)

「ここから先は…通さねぇ…!」ベランダの前に立ち塞がるのは、全身が血にまみれた1人のニンジャ、シルバーカラス。満身創痍の身なれど、その目は未だに輝きを失わない。最後に目覚めた、善性の輝きを。…ならば俺はなんなのか。俺が彼をなぜ殺さねばならないのか。空っぽな非人間が、あの光を消す権利など…持っているのだろうか?

23:非人間の罪悪感:あなたは、邪悪なニンジャであるということに罪悪感を抱いている。相手がクローンヤクザやモーターヤブであれば目をそらし続けることもできよう。しかし、強い光に当たれば、戦う意志など解けてしまうだろう。あなたは、【カルマ:善】のキャラに対して、一切敵対行動を行えない。この効果は、精神力を2消費することでそのラウンドの間無視できる。

3系列…「モータルとの絆」

31「守るべきもの」:あなたには、庇護するべきモータルが存在する。それは老いた両親かもしれない。幼い我が子かもしれない。愛しい伴侶かもしれない。…なんにせよ、君は日常と非日常を行き来してカネを稼ぎ、彼らを養わねばならない。この幸せを守るために。あなたがシナリオで得た【万札】は、余暇開始前に-5される。(足りない場合はローンを借りる事になる)

32「確かなユウジョウ」:あなたには、ニンジャになるという鮮烈な価値観の反転を経験してもなお崩れ得ぬユウジョウを結んだ友がいる。それはあなたをモータルの側に引き止めるだろう。彼に顔向けできない自分には、なりたくないのだ。あなたはモータルハントを行う事ができない。また、モータルに対する脅迫的な交渉の難易度が+1される。

33「歪められぬ誓い」:あなたは、ニンジャとなり…そして、大切なものを失った。それはあなたが引き起こした事かもしれない。そうではないのかもしれない。けれど、もう二度と、失わせはしない。それがあなたが力を振るう誓いとなる。あなたは効果のないレリック「形見の品」を初期装備する。これは外す事ができない。

『人間性の楔』の転化と昇華

『人間性の楔』を持つニンジャははっきり言って「弱い」ニンジャである。己のエゴを貫く事ができず、そのままではいずれ悲惨な結末を迎えるだろう。『人間性の楔』を解消する手段として、「転化」と「昇華」の2つが存在する。

しばし呆然とした後、マツモトが見せた反応は、ホンガンジのイマジネーションを超えていた。「アイエエエエ……お願い、行かないで……ニンジャでも何でもいいから……」彼女は涙を流し、ホンガンジを抱きしめたのだ。それが彼の胸を打ち、内なるミューズ……邪悪なるニンジャソウルを疼かせた。「駄目だ!正体を知られたからには、俺は行かねばならん!」ホンガンジは左腕で彼女を抱き、優しい肉の感触に苦悩した。そして己の意志に反してメンポの奥で歪む口角と、スリケンを握り彼女の首筋を後ろから狙う右手を呪った。彼は震える右手を睨みつけ、どうにか抗おうとした。だが無理だった。彼は超えてはならぬ一線を超え、ニンジャソウルの闇に呑まれた。血の涙を流しながら、彼はいまや己が何者になったかを悟った。右手の震えは止まった。【ミューズ・イン・アウト】より

「楔の転化」:『人間性の楔』を持つPCの【DKK】が5以上になった時、あるいは、『ニンジャソウルの闇』を得た時、所持していた『人間性の楔』は任意の『ニンジャソウルの闇』に上書きされる。心の弱さはソウルの力で埋めればいい。おめでとう、あなたは弱さを克服し、一人前のニンジャとなったのだ。

シャドウウィーヴは机の上の影を弄んだ。それはアンブラの知らぬ過去のニンジャたちの姿を編み上げていった。「それなのに……俺はいくつも間違いをおかしたし、反抗もできないくらい頭をイジられて、駒として使われた事さえある。だからだろうな、同じクランに属する奴らが、このジツを使う奴らが虐げられるのを見ると、無性に腹が立つ。……昔の俺を見てるみたいでな。何も解ってないニンジャになりたての奴らを捕まえて、その才能をむしり取って奴隷にする組織を、俺は憎悪する。心の底から憎悪している。……それはこの世界で何よりも醜いものだ」 ディスカバリー・オブ・ミスティック・ニンジャアーツ(8):ニンジャソウルの格と開祖ニンジャの呼び声より

「楔の昇華」:あなたはモータルの弱さを、己の一部として受け入れる長く険しい道を辿る事もできる。弱さからエゴを形作るのは至難の業だ。それでも…捨てたくないものがあるのならば、この道を選ぶべきだろう。

昇華・第一段階:【成長の壁(1)】を1つでも突破したニンジャは、余暇が終了するごとに、1d6を振る。4以上の出目を出した場合、第一段階の昇華が成功する。(失敗した場合、1ずつトレーニングのように蓄積する。)

「昇華・第一段階」に至ったニンジャは、『人間性の楔』による能力値へのペナルティを消去することができる。また、「ニンジャソウルの闇」を取得しそうになった時、1d6を振って3以上の出目が出たならばそれを拒否することができるようになる。

昇華・第ニ段階:「昇華・第一段階」に至ったニンジャで、10以上の能力値が1つでもあるばあい、余暇が終了するごとに1d6を振る。6が出た場合、第二段階の昇華が成功する。(失敗した場合、1ずつトレーニングのように蓄積する。)

「昇華・第二段階」に至ったニンジャは、『心の弱点』を克服する。それと同時に、任意の能力値の【成長の壁(2)】を1つ突破する。かくてエゴは成った。楔は血に溶け、新たなるカラテを生み出すだろう。また、このニンジャはもはや「ニンジャソウルの闇」を獲得することはない。

「楔の昇華」はそのニンジャにとって、大きな試練、そして物語である。もし昇華が完了するならば、そこにちょっとしたものでも、物語を挟むべきだろう。

オプションルール:アーチ級憑依者の「人間性の楔」

「アバーッ!」アナイアレイターは苦痛に吠え、身を起こした。「オオオオ畜生ッ! 畜……ア?」そしてスーサイドを指さした。「お前?」そしてルイナーを。「お前?」そしてガラスに寄りかかるフィルギアを。「お前まで」ワッと叫びをあげ、子供達はアナイアレイターにしがみついた。「魔法使いのおじさん!」「おじさん!」「よせ! ガキども! よせ!」アナイアレイターは拒もうとしたが、身体はまだ満足に動かせていないようだった。「ハハハハハ!」「ハッハハハハハ!」今度はスーサイドとルイナーも大笑いした。 「笑うんじゃねえ」アナイアレイターは顔をしかめた。「違う、そうじゃねえ! そもそもお前ら、どうしてここに居やがる。何がどうなってやがる!」エリミネイト・アナイアレイター(前編)より

アーチ級ソウルの憑依者は、初期状態で「ニンジャソウルの闇」を持っているため、基本的には「人間性の楔」を取得することはできない。しかし、NMが許可するならば、アーチ級憑依者でも「人間性の楔」を取得する事ができる。そして、それはかなり特殊なものとなる。

アーチ級憑依者が「人間性の楔」を持つ場合、「ニンジャソウルの闇」と「人間性の楔」が一時的に共存した状態になる。この状態では、「人間性の楔」によって下がる能力値は【ジツ】になる(アーチ級特典のジツ+1と相殺する)。楔が転化した場合、当然そのニンジャは闇を2つ持つ通常のニンジャになる。

ソウルの相克:「ニンジャソウルの闇」と「人間性の楔」を持つ以上、当然「暗黒カラテ衝動」も「心の弱点」も持つことになる。もし、強制効果が矛盾するような事態になった場合(ex…破壊衝動と、非人間の罪悪感など)、そのニンジャは即座に【精神力】を2失い、難易度UHの【ニューロン】判定を行う。これに成功した場合、「心の弱点」が優先される。失敗した場合、「暗黒カラテ衝動」が優先される。

特殊な昇華:アーチ級ソウル憑依者が人間性の楔を昇華する時、必要なのは【ジツ】の修行である。素の【ジツ】値が4以上ならば、余暇の終了時に1d6を振る。4以上の出目を出した場合、第一段階の昇華が完了する。

「昇華・第一段階」になったニンジャは、いつでも「ニンジャソウルの闇の克服」を試みられるようになる。

そして、素の【ジツ】値が6以上、かつ闇が克服されているならば、余暇の終了時に1d6を振り、6を出す事によって第二段階の昇華が完了、即座に【ジツ】が7になる。通常のニンジャと同じように、もはやこのニンジャがニンジャソウルの闇に侵される事はない。

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