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ああ、美容室

 久しぶりに「予約できる美容室」に行った。今まで通っていたところは近所でもあり、朝開店前に行って順番をとり、順番が来そうな時間を見計らってまた行く、というやり方をしていた。順番票をとったまま待っていることもできたが、長い時間家を空けられなかったからそれは無理。さっと行って終わったらさっと帰る、安いからいつも混んでいて、開店前に行っても順番票は20番ということもあった。

 少し時間がとれるようになったため、駅のそばのちょっと高級ふうな美容室にネット予約をして行ってみた。予約時間5分前にいくと、助手らしい黒いワンピースのお嬢さんが、さっとバッグとコートを預かり、椅子に案内してくれた。指名してなかったのでどんな美容師さんが来るかと思っていたら「○○さぁん」の呼び声で担当らしい美容師さん(男性35歳くらい)が登場。腰の周りに七つ道具の入ったベルトをじゃらじゃらまきつけて、短いヒゲがなかなかおしゃれ。仮に小ヒゲさんと命名した。カットとカラーリング予約のため、髪の長さやスタイルの打ち合わせ、カラー見本を見て色の決定、この辺も丁寧だ。

 まずは少しずつ髪をひねって止め、裾からカット。こんなとき黙っていると気まずいのでちょっと世間話。
 「今年は地震やら事故やら大変でしたね」
 「そう、実は僕、新潟の実家にいたんですが、家から飛び出したんですよ」
 さすがに小ヒゲさん、こんなときプライベイトな話題を出すと、親しみがわくもの、と心得ている。すっかり話がはずみ、そんななかでカットが終わり、軽くシャンプー。カラーリングが始まると、さっきの黒ワンピさんも来て横で補助してくれる。そうそう、高い美容室は二人でやってくれるものだ、と思い出した。髪がカラー液で固まると、ラップで頭がピッタリ包まれる。これでチンされたら、頭の蒸し焼きが出来あがるが、そんなことはなくその上からタオル。
 「20分お待ちください」
 今までなら、ここで週刊誌など運ばれてくるのだが、コロナの影響か、なにも来ないので、しかたなく許可を得てバッグから文庫本を出してきて読む。

 20分たつと黒ワンピさんが染まっているか確かめて、今度は本格的にシャンプー、リンスがいい匂いだ。で、小ヒゲさんがブロー。
完成すると二つ折りの鏡で後ろを見せてくれる。が、びっくりした。こんなに短くするつもりなかったのに!髪の量だってすかれて半分くらいになって、なんだか寂し気・・・カットしているときおしゃべりなんかしないで
よく監視していればよかった・・・そういえば、ずい分丁寧にカットしていたもんなぁ・・・

 予定の2時間きっかりで終わり、今までの美容室の5倍もの代金を払うと、小ヒゲさんが階段のところまで出てきて、にこやかに送ってくれる。
 「またお待ちしています」
 「はい・・・」
 頭も財布も軽くなったわたしに冬の風が冷たかった。

          おわり

 美容室期待後悔髪一重
びようしつきたいこうかいかみひとえ (川柳のつもり)😂


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