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インドの冷蔵庫

 ぼくは、インドのチェンナイに住んでいる。家はバラックで、メイドをやっていた母さんは身体を壊し、一日中ぼおっと古びた椅子に座っている。

  だからぼくは赤信号のある交差点で、止まっている車の窓をこん、こん、とたたき、お金をもらうまで粘る、という仕事をしている。追い払われることも多いし、40度以上になる道路に立っていると暑くて頭がくらくらする。母さんが勤めていた家には四角くて白い冷蔵庫という家具があり、開けると涼しい風が流れ出た。あんな家具が欲しいと思う。


 同じころ同国のバンガロールでは、IT企業内で極秘の開発がされていたが、今まさにその商品が実用化された。北極と南極の氷を使い、一年中だれもが空気のよい快適な温度下で暮らせる、というコンセプトで開発されたもののようだ。


 一方、火星では不思議な天体が観測された。地球が見えなくなり、そのかわり大きな白い立方体の天体が浮かんでいるのだ。

 

 それこそが開発されたばかりの温暖化対策の切り札、地球全体を入れることができる冷蔵庫なのだった。

             

              おわり



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