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夢を買う

ほっと心なごむ記事を見つけた。インドネシアのゴミ拾いで生計をたてている69歳の男性が、コツコツとお金を貯めてついに車を買った、という記事。題して「夢を買ったワルジ爺さん」だ。


昨年8月11日、「ダイハツ工業」の車を売るショールームに1人の男性が現れた。白くなった髪とひげは伸び放題。右肩が破れたシャツを着て、カバン代わりの黒色のポリ袋を肩にかついでいた。
中略
「きっとおお金持ちの男性が貧しい人に変装したドッキリ番組に違いない」。ショールームで働くデシ―・アイスさん(35)の頭には人気のテレビ番組が浮かんでいた。

朝日新聞・そよかぜ

こんなワルジさんにとって愛車を持つことは長年の夢だった。が、実際は見た目から判断され、バスからも乗車拒否される有様。インドネシアで車を持つことは「成功者」のあかし、「自分で車を買って、世間を見返したい」そして自分の生き方を認めてもらいたかった。
傑作なのは、米袋に隠しておいた「貯金」が白アリに齧られ、少しずつ減り始めたことも、購入に踏み切るきっかけになった、という事実だ。
買うなら日本車、「性能がいいのに欧米の車よりも安く、デザインがいいから」とは、日本人として嬉しい。

20年前、フランスにいたころ、テレビでクイズ番組を見ていたら、優勝者の商品はニッサンの車だった。アナウンサーが声張り上げてスタジオに止まっている車を紹介すると、ジャーンと京劇のようなドラが鳴り、アシスタントの女性が両手を重ね拝むポーズをしながらお辞儀をした。がっかり・・・日本人はこんなふうにお辞儀なんかしないのに。

近所のクリーニング屋の奥さんは、わたしが日本人だと知ると
「日本は冬は寒いの?」
「魚を生で食べるって本当?」
と興味深々だった。
フランス語を教えてくれていたロシア人のシュレビ先生は、
「日本ではホテルで結婚式を挙げる」と話すと
「え?ホテルで?ホテルは泊まるところでしょう?」
と仰天した。

まだまだ 日本は、フランス人から見ると far east「遠い東の国」
らしかった。今では少しは理解が広まっているのだろうか。

さて、インドネシアのワルジじいさんは、ついに購入を決めた。
小型ミニバン「シグラ」(約150万円)を。自宅からショールームまで徒歩2時間かかるから、途中で強盗に会うのを心配して1800円払い乗り合いバスをチャーターして。持ち込まれた現金(小銭ばかり)は従業員5人が3時間かけて数えたそうだ。

ワルジさんの自宅前には、白色の新車が止まっている。赤道直下の日差しにやられないよう、断熱シートと段ボール、絨毯にくるまれている。
車は買ったものの、実は免許を持っていない。ワルジさんの目標は自分でハンドルを握り、約220キロ離れた故郷に帰省すること。あるじを乗せたぴかぴかのミニバンが、インドネシアの地を駆けまわる日はもう少し先だ。

朝日新聞・そよかぜ

69歳のワルジさん、頑張れ!実家から相続したお金を差し出してくれた奥さんを助手席に、さっそうと運転する日を、遠い日本から楽しみにしていますよ!

           おわり


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