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「うまいね!」を封印した、アートの時間〜実践編 umumアトリエ開催レポート〜

前回、今のアートに対する価値観は
なぜ「うまい」かどうかに縛られているのか考察し
これはまじでもったいない!!
という記事を書いた。

「うまいね!」を封印した、アートの時間|Ray Tanaka|note(ノート) https://note.mu/frogizm03/n/nb1bdf29409b8

そして、数々の現場でこのもったいない現象に出会い
おとなの感性にもアプローチすることが大切だ!
と気づき、はじめたのが
感性をストレッチするおとなのためのアトリエ
その名も「umumアトリエ」

先日早速その初回を開催したので
レポートを書きます。

<当日の様子>

6/22、フライデーナイト。
立川駅そばの工芸カフェReaLenceにて
umumアトリエvol.1[自分の感性を知ろう!]
を開催した。

1回目となる今回のテーマは
自分の感性を知ること。
とにかく参加者のみなさんが
心の赴くまま表現できる120分間を目指し準備してきた。

10名の枠で募集をかけたところ
ありがたいことに9名のお申し込みをいただき
集まってくださったのは
会社員、介護職、キャリアカウンセラー
アーティスト、育児中のママなど
アートとの関わり方は様々。

「umumアトリエは
うまい絵や写実性の高い作品制作を目的とした講座ではありません。
作り方のルールも、完成の見本やゴールも決められてない
ご自身の感性を表現することを目的とした講座です。」

というなんとも抽象的な説明でスタート。

まずはアイスブレイク。
お気に入りのクロッキー帳を選び
1ページ目から好きな画材で「直線」をひいてみる。

もちろん線の引き方は自由。
縦でも横でも斜めでも
何色でも何本かいてもどんな太さでもいい。

最初は緊張気味で「うまくかかなきゃ!」から
なかなか解放されず
ちょっと苦しそうな方もいたけれど
気軽にページをめくれるクロッキー帳と
様々な描画材を選択できることから
じょじょに緊張が楽しみに変化し
それがきっかけでたくさんの線が生まれていく。

直線から曲線へ
曲線から点へ
と進めていくと
自分のお気に入りの画材や
独自の描き方が見つかり始め
「アクティブですね!」
「この画材かきやすい〜〜」などなど
参加者の方々の間で交わされるコミュニケーションも活発に。
和やかな空間の中で、表現にスピード感が生まれ
「うまい」バイアスからみるみる自由になっていった。

体に画材がなじみ
心が解放されてきたところでメインテーマ。
「土、生花、石、ガラス、貝、枝、木の実、水など
会場にあるさまざまな自然物から感じ取った印象を
形容詞や擬音語に変え、絵で表現してください」


このフェーズに入ると
みなさんの意識が内側に向き始め
自分が何を、どう感じるのかというインプットと
それをどう表現するのかというアウトプット
つまり感性との対話が始まり
言葉のコミュニケーションがなくなって
和やかな空気が凛とした緊張感のある空気に変わった。

目をとじて
感じて
ひらめいて
表現する。

画材の特徴を生かす方もいれば
描き方に工夫をする方
表現を重ねながら模索する方
などなど
自分なりの表現をしていく。
手の動きが前半に比べ、とても丁寧に。

みなさん、めちゃくちゃ真剣。

あっというまに時間がすぎ
約100分間の制作時間が終了。
みなさんの顔には心地よい疲れと
やりきった感のある表情が浮かんでいた。


最後の20分間は、
一人一人のクロッキー帳を1ページ目からめくり
どのように表現が変化していったか
どのモチーフからどんな感覚を得て
どんな表現をしたのかを共有する鑑賞タイム。

奥行きのある表現や
指のなめらかな軌跡
絶妙なバランスで繰り返される表現や
遊び心溢れるタッチ
色や素材の組み合わせ

緊張感漂う1ページ目から
徐々に自分を解放して
それぞれの感性に画材が出会い
多彩な表現が爆発していた。

また、用意されたモチーフだけでなく
その時かかっていた音楽
カフェに展示された美術作品
人が集まったその空間そのものなど
五感をひろげて偶発的なものや現象からも
インプットをしていた。

こうして120分のワークショップは終了。
抽象的な説明がここまで参加者のみなさんにしっかり届き
自由な表現に到達できたことに感動した。
さらにその表現を、みなさんが楽しんでいたことが嬉しかった。


<参加者の方にいただいた感想、抜粋>

美術が苦手と思っている自分ですが
思いっきりやることができました!
美術楽しい!
(30代 会社員)
決まった作り方、完成のない
こんな自由に表現できる
アート教室は初めて!
(50代 介護職)
入りやすい進行、多彩な画材とお土産から
心からアートで豊かに幸せになってほしい
というumumの気持ちを受け取りました。
(30代 キャリアカウンセラー)

ありがたいです、
はじめてお会いした方なのに
コンセプトがしっかりと伝わっていて感無量です。


<自己分析/よかったポイント>

今回トライしてみて、よかったポイントは5つ。

1.画材の選択肢は大切
今回用意した画材はこんな感じ。

アクリル絵の具、透明水彩絵の具
パステル、クレヨン、クーピー
油性ペン、コピック
色鉛筆(マーブリング、太いもの、細いもの、ネオンカラー)
鉛筆(6H~4B)
こっぱ、スポンジ(えのぐ用)
筆、はけ各種
(特殊塗装用のおおきなものから面相筆まで、ステンシル用など
大きさや形、毛質が様々なもの)

どれも肌になじみやすく
画材の個性がある質の良いものをセレクト。
またドイツやチェコなど海外で買ってきた
日本にはない描画材も用意。
これがとても気に入ってもらえた。
選択肢がたくさんあることによって
選ぶ楽しみとバリエーションが増え
「うまい」バイアスを壊しやすい環境を作ることができた。


2.クロッキー帳

どんな画材をのせても大丈夫な
しっかりした質のものを画材店で購入。
こちらも表紙の色や、中の紙の色を選べるように
数種類を用意。
スケッチブックはクロッキー帳の紙質に飽きた時用。

クロッキー帳は「本番!」という緊張感なく
表現をすることができる上
気軽にページをめくり、リセットできる。
またリングタイプのノートになっているので
ページを紙芝居みたいにめくりながら鑑賞でき
自分の表現の経過を時系列に見ることができる。


3.道具や技法の知識
今回用意した道具の中には
専門色が強いものも多く
その使い方や特徴を説明できたことで
道具が引き出す画材のもつ新たな表情を
楽しんでもらうことができた。
また、クレパスとクレヨンの違い
アクリル絵の具や水彩絵の具の違いなどの特徴や
美術の授業では習わなかった筆の使い方や絵の具の載せ方
(木で描く、スパッターをとばすなど)
を伝えることで表現の幅をひろげ
理想的なアウトプットのフォローができた。


4.シンプルで、ひろがりのあるキーワードとモチーフ

直線、曲線、点、形容詞と
シンプルなキーワードを段階を踏んで用意したことで
予想以上に早い段階で参加者のみなさんがバイアスを壊し
自分の表現ができるようになっていた。
また花やガラス、貝殻など視覚に訴えるモチーフだけじゃなく
匂いのある土、体感を伴う冷たい水
触感を刺激する尖った石や丸い石など
五感に働きかける自然物を用意したことで
参加者の方々の五感が冴え
後半は音楽や空間などにも意識がいくようになった。


5.うまいねの封印
今回の最重要ポイント!
表現のプロセスや鑑賞会時
「うまい」を封印し、それ以外の言葉で
プロセスや表現の素晴らしいところ
作品からうける印象などを積極的に伝えた。
「小さい頃はよく言われていた」
「普段は言われたことない」
など
私の反応を参加者の方々は嬉しそうに受け止めてくれた。
自分の表現が、何らかの印象を他人に与え
それがポジティブな形でレスポンスされると
人は深い自己肯定感を感じる。
まさに「アートを介したコミュニケーション」が成立する。
また、感性を形にし
それを客観視することで見えてくる
今まで知らなかった自分にも出会うことができる。


<自己分析/課題となるポイント>

1.告知段階での伝え方
この抽象的な内容やその楽しさは
やってみないとわからない。
つくるものも決まっていないので
イメージ画像などもない。
よって、告知段階でこの魅力を
どのように伝えるかが今後の課題。
特にアートに強い苦手意識をもっている方に
どう伝えていくかをもう少し考える必要がある。


2.鑑賞時の意見交換を深める

抽象的な表現にコメントをすることも
参加者にとってはなかなか難しい。
しかし正解はないので、より多くの印象を
言葉にして交換したい。
それが感性をストレッチすることにもつながる。
もう少し鑑賞会の時間を多めにとり
丁寧にファシリテートする必要がある。


<まとめ>

・アートに精通しているか否かは関係なく
誰でも独自の感性をもっていて
画材や空間、コーチングに工夫すれば
おとなになっても「うまい」以外の表現を楽しめる!

・感性を刺激するアート鑑賞は最近増えているけど
表現する体験はまだまだ少ないので
もっと多くの方々に参加してほしい

・「うまい」を封印すると
アートを介したコミュニケーションがはじまる



ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!!


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東京を中心に、いろいろなところで
アートワークショップやアトリエを開催しています。

<近日開催>
◆7/6(FRI) 19:00~21:00
おとなの感性をやわらかくするアトリエ
「umumアトリエvol.2 イメージを伝えよう」
工芸カフェReaLence(立川駅徒歩3分)
※単発でのご参加も可能です!
facebookページ
工芸カフェReaLence 参加お申し込みページ

◆7/20(FRI) 19:00~21:00
おとなの感性をやわらかくするアトリエ
「umumアトリエvol.3 自分の色をさがそう」
工芸カフェReaLence(立川駅徒歩3分)
※単発でのご参加も可能です!
facebookページ
工芸カフェReaLence 参加お申し込みページ

◇アートワークショップユニット コネルテ
障害の有無、年齢差、個性、感性もみんな「違う」ことを
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