アートにおける 「わかる」と「わからない」

5月から始めた、「アートとビジネス」の研究会
UMUMアートラボbiz

一回目の様子はこちら。
UMUMアートラボbiz はじまりました!|UMUM 田中 令|note(ノート) https://note.mu/frogizm03/n/ne9515b0a31d8

6月に開催した2回目もまた、すごくおもしろい内容だったので
すこし振り返ってみようと思います。

1.アートに対する 「期待」と「難しさ」

研究会の冒頭、アートに関わる大きく分けて2つの問いを
参加者のみなさんに立てました。

1つ目は「期待」
具体的には、アートだからできること
アートによって深まること、その効果など。

-自己理解(が深まる)
-相互理解(が深まる)
-ストレス発散(精神衛生に良い)
-メッセージ発信(に有効)

これらは、これまで過去2回の研究会を通して出た意見でもあります。

そして、2つ目は「むずかしさ」
具体的には、アートがビジネスと交わりにくい理由など

-利益に還元しにくい
-目に見える成果がでにくい
-即効性がない
-効率がいいとは言えない
-説明がしにくい

これらを対話で深めていくと
・他者へのアプローチにおける難しさ
・表現(アート)への抵抗感 ≒ わからなさ 
というポイントが現れました。


2.2つの「わかる」「わからない」

ここで、「わかる」「わからない」ということについて
すこし考えてみたいと思います。

わか・る [2] 【分かる・解▽る・判▽る】

( 動ラ五[四] )
① 物事の意味・価値などが理解できる。 「意味が-・る」 「音楽が-・らない人」
② はっきりしなかった物事が明らかになる。知れる。 「真犯人が-・る」 「答えが-・る」
③ 相手の事情などに理解・同情を示す。 「 - ・った、なんとかしよう」 「話の-・った人」
④ 離れる。分かれる。 「八宗九宗に-・りてより/浮世草子・禁短気」

https://www.weblio.jp/content/%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8Bより

上記を具体的に考えてみると、「わかる」には
A:自分の中で納得すること
B:他者との間で同意したり、理解を共有すること
の2つがある
と仮定できます。

逆に、「わからない」とは
a:自分自身の中で納得がいかないことと
b:他者との間で同意が生まれなかったり、理解を共有できないこと。

Aaは自分の世界
Bbは他者との世界のイメージです。


3.アートの「わからなさ」

アートの世界に視点をうつします。

現代アートのテーマは本当に多種多様ですが
仮にアート作品を「作者の内面を表現するもの」とする場合
他人からみると、それは概ね「わからない」ものです。

パブロ・ピカソ「泣く女」

なんで顔に線がたくさんあるの?
なんで白いところ、青いところ、黄色いところがあるの?
なんで悲しそうな顔をしているの?

多くの人がピカソの絵を見て「わからない」と思う。
ピカソはどんな年齢で、何を学び、制作時どんな思いだったのか
どんな根拠からその色、その線を画面上のその位置に描いたのか
絵からの情報では、その多くは「わからない」からです。

日本人の多くはこの「わからない」に恥ずかしさを感じているように思いますが
それはある意味、当たり前なのだと思います。
(この部分については、東洋と西洋の感じ方の違いをリサーチ中ですので、また後日noteに書きたいと思います。)


欧米で盛んなアートマーケットの領域では
この「わからなさ」を解消し、鑑賞者や購入者により作品を深く理解してもらうために、アーティストはステイトメントを書きます。

ステイトメント(statement)とは、その名のとおり、State=述べること であり
作家の生い立ち、考え方や価値観、作品コンセプトなどを書いた声明文です。
これらが鑑賞者や購入者にとっては作品の付加価値になり
欧米では「ステイトメントのない作品は売れない」とも言われています。

作品を売りたいアーティストは必然的に、自分の作品について
他者に伝わりやすい言語化能力が必要になります。
たとえその作品が、明確なメッセージがない感覚的なものや
自分の心地よさの追求の結果だとしても。

このように、「わからない」を、少しでも「わかる」にする工夫
アートマーケットの世界では行われています。

そして、ここでいう「わからない」は
概ね先に挙げた
b:他者との間で同意が生まれなかったり、理解を共有できない
という文脈で語られているもの
だと思います。

なぜなら、アートマーケットは
他者(ア−ティスト)の作品と価値(お金)を
他者(購入者)と交換する世界だからです。


ではこのステイトメントをつくる作者の
A:自分の中で納得する/a:自分自身の中で納得がいかない
自分の世界は、どうなっているのでしょうか?


4.わかった"つもり"の、 「こじつけ」ステイトメント

この日の研究会のアートワークショップと鑑賞会では
各自自由に表現した作品を作り
よくわからない他人の作品について
わかったようにそのステイトメントを語る

という実験を行うことにしました。

アートワークショップの作品制作は
説明的にならずそれぞれの感覚が重視されるよう
いつもより短時間で行いました。

かっこよさ
ここちよさ
自分の中に生まれたテーマにしたがい
びっくりするほど、みなさんどんどん手が進みます。


作品完成後、表現者から鑑賞者へswitch!

鑑賞会の前にくじ引きを行います。
くじには自分以外の参加者の名前が書かれており
その人の作品について、自分が設定した立場(作者、ギャラリスト、鑑賞者、購入者など)から語ります。

作品にはキャプションやステイトメントはありません。
作者に質問したりすることもなし。
語り手は自分が語る他人の作品をよーくよーく観察し
わからない作品から、自分の感覚で「わかる」を探します。



そして鑑賞会でステイトメントの語り合いがスタート!

作者の視点で作品コンセプトを語るひと
ギャラリストの視点でその作品の価値や作家の人生を語るひと
鑑賞者の視点でその作品の魅力を語るひと

作者本人もびっくりするような深い洞察もあり
表現者の作ったコンセプトと異なるものが語られても
意外にも作者の方々は、とても嬉しそうでした。


5.「わからないもの」から、「わかる」を探す

この研究会の終わりに、改めてみなさんの意見を聞いてみるととても興味深い言葉が出てきました。

-「よくわからないもの」ってネガティブなイメージをもちがちだけど、それをよしとするポジティブな感覚があってもいいのではないか。
むしろそれがアートの世界の魅力なのではないか。

-「よくわからないもの」をネガティブに捉える根拠は、おそらく「再現性」がないから。でもそもそも、その「再現性」はこれからの時代いらないのでは?(大量生産、効率化という文脈で)

-「よくわからないもの」がネガティブなのって「答えが一つである」という概念がベースになっているのでは。


この研究会で参加者のみなさんが体験した
自分の作品をつくり
他人の作品のステイトメントを語るプロセスを
「わかる」「わからない」になぞって振り返ってみると...


自分の制作では、大なり小なりみなさん
A:自分の中で納得するというプロセスを体験します。
自分で納得していないものは、形にできないからです。

そしてよくわからない他者の作品に出会います。
この「わからない」はおそらく
作者本人(他者)が考えるステイトメントはわからないという
b:他者との間で同意が生まれなかったり、理解を共有できない
です。

そして参加者の方々は作品の観察や言語化を通して
A:自分の中で納得する「わかる」を、他者の表現から探し出したのではないかと感じました。

そして、それを言語化することで「そんな解釈もあるんだ」と
B:他者との間で同意したり、理解を共有する場面もありました。
(それは、まさにアートに正解はないから!)


わたしたちは時代の変遷や教育など、様々な背景から
B:他者との間で同意したり、理解を共有すること
をあらゆる基準に求め、「正解」だと思いがちです。
でもこれからの時代
A:自分の中で納得する
ということがとても大事になってくるのでは
そしてそれはアートの世界で実現しやすいのでは
と感じた回でした。


さらにこの体験は
冒頭にあげたアートへの期待ポイントの体験のほか
・自分自身の価値観(オリジナリティ)の創出
・付加価値を伝えるプレゼン力
・他者の作品に興味をもつ心と観察力
などなど
ビジネス現場にも通じる具体的なトレーニングにもなります!

わかったつもりの「こじつけステイトメント」鑑賞会
おすすめです。

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UMUM 田中 令

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