クロアチアという小国でモドリッチが生まれた理由


クロアチアのGNK Dinamo Zagrebのアカデミーに行ってきました。




去年のワールドカップで準優勝したクロアチア代表の24人中14人がDinamo Zagrebアカデミー出身で、その中の11人は5年以上このアカデミーに所属していたそうです。


昨年のチャンピオンズリーグ決勝戦では3人、2年前は4人がアカデミー出身の選手が決勝戦に進んだ2チームのどちらかに所属していました。


アカデミー出身の1人モドリッチ選手は、言わずもがなですが2018年のバロンドールを受賞していて、育成の名門中の名門だと思っています。



目次
・5つの育成理論
・アカデミー共通の練習メソッド
・年代別で意識すること
・まとめ




Dinamo Zagrebの育成理論とは?



アカデミーでは5つの育成理論からなります。


1. 健康的な生活習慣を促進する。
選手としての生活の仕方、自分で自分のコンディションを整えることができるようにすること。


2. 選手を人として育てる。
選手全員がプロになれるわけではないから、選手たちに他の場所でも活躍できるための育成をする。


3. スポーツで選手を幸せにする。
U8から11までは週に一回は全く違うスポーツの練習をします。他からその分野の専門家を呼んでコーチングしているそうです。例、柔道、ダンス、レスリング、体操など。U15までは専門化させずに育成していきます。

これはサッカーだけでは養えない運動能力やメンタル面での効果を期待しているとのこと。


4. 日常生活での義務を守るよう促す。
選手たちには家族が第一で学校、サッカーの順の優先順位だと伝える。サッカーが全てにならないようにすることの重要性を仕切りに強調していました。


5. 選手をサッカー選手として育成する。
サッカー選手としての育成は一番最後に来るそうです。この上の4つがしっかりできている選手はサッカー選手としても、もしくは違う分野だったとしても必ず成功するとのこと。


この5つを中心にして選手たちと関わっています。


前にサウサンプトンのアカデミーコーチも言っていたことなのですが、選手をまずは人として成長させられる環境作りの重要性を改めて感じました。




アカデミーの練習メソッドとは?



一年ごとにコーチも担当する年代が変わるのでアカデミーのコーチはコーチングメソッドを共有しています。(U7を担当していたコーチが次のシーズンはU16に行くみたいなこともよくあるらしいです)


毎日のトレーニングは年間を通してのピリオダイゼーションに基づいて作成しているので、コーチが自分で勝手にテーマを決めてコーチングをするということは絶対にないとのこと。自分が見学した時の週は2つのメインゴールを設定していて、そこからPrinciple – Sub Principle – Sub Sub Principleまでを落とし込むようにコーチングしていました。


U6-12まではスクールがあり、お金を払えば誰でもDinamo Zagrebでサッカーができるのですが、U8からアカデミーが始まるのでうまい選手はアカデミーで活動します。ただ12歳まではスクールもあるのでアカデミーに行くチャンスはあるそうです。


全カテゴリーに共通しているのは心理面でのワークショップが二ヶ月に一回ごとにあり個人面談家族面談もあることです。両親のみに対してのワークショプもプレシーズン時に設けるそうで、子供に対しての関わり方などを両親にも理解をしてもらうためだそうです。



システムは攻撃時には4-3-3で後ろから繋いで前進するモデル(ゾーン1、2、3の局面ごとに原則がある)、守備時には4-1-4-1の基本的にはゾーン2からのプレッシングでアカデミーは統一しています。(もちろんここにはもっと細かなものがあります)


U8からU11



週4回(1回は違うスポーツ)練習時間75分+試合


個人技術に一番焦点を当ててコーチングをしていました。攻撃の個人技術だけでも70個以上のコーチング項目があるそうで、それをこの4つのカテゴリーでスモールサイドゲームの中(1対1、2対2、3対3など)などからなるべく習得させます。


戦術的なことではどうやって得点を決めるか、ポジショニングなどのことしか教えず、あまり多くはここでは求めません


心理的な面ではとにかくサッカーを楽しんでもらうことや過度なプレッシャーを与えないことを重要視しているそうです。


ポジションの固定化はしないで1試合の間にもポジション変更をさせていました。



11人制への移行


U12から11人制のサッカーになります。


基本的には週5-6回(ピリオダイゼーションによる)練習時間最低90分+試合


そして週に2回45分間のコーチとのマンツーマン練習があります。


マンツーマン練習のコーチには元Dinamo Zagrebでプレーしていて、ユーゴスラビア代表やクロアチア代表経験もあるMarko Mlinaricさんなど。とても気さくな方でした。お互いほぼほぼジェスチャーでの会話だったけども。


U12からU13



U12からはスモールサイドゲームでも何か特定の要求を混ぜながらトレーニングしていました。


技術面ではU8から学んだものの正確性を要求。


戦術面では2、3、4人間での戦術をコーチングしていき、


心理面では集中力のところを選手に求め始めるとのこと。



U14からU15



U13までに学んだものの安定化自動化を目指していきます。


戦術では個人戦術と、ここからグループ戦術をコーチングしていきます。例、フラット4でのビルドアップなど。


ですが、まだこの年代では個人戦術の方に重点を置いているそう。


ここからポジションは選手ごとに3つに絞っていきます。



U16からU19



ここでポジションの固定化を始めます。(選手ごとに第一、第二ポジションを決める)


戦術はグループチーム戦術ポジションごとの戦術をコーチングしていき、


心理面ではプロフェッショナリズムを求めていくそうです。


これが各年代の大雑把ですが概要でした。


まとめ


アカデミーのコーチたちに技術、戦術、身体能力、心理面どれか1つ取るとしたら一番重要なものは何?


と聞いたところ全員が「技術」と即答したのが印象的です。


もちろん試合ベースで選手を育成するのも大事になってくるのですが、その基盤となる技術の向上のために個人練習を設けていたり、練習の中でも必ず15分は相手のいない技術練習をしていたことは個人的には新鮮でした。


トレーニングでのコーチングもあまり全体を止めるものはしていなく、選手個人個人にアプローチしていたり、練習と練習の合間で簡潔にポイント伝える/振り返っていました。



練習試合ではベンチからのコーチングはあまり聞こえず、鼓舞するような声かけやいいプレーをした際にはその選手の名前良かったプレーをしっかりと伝えていた気がします。(クロアチア語わからないので微妙なところですが)




最後にU14のコーチにその人が選手と関わる時に一番大事にしていることを聞いたら、


「質問を投げかけるタイミングとそれに対する答え方」「待つ忍耐力」

の2つだと答えてくれました。



どれだけ質問をしても嫌な顔を1つもせず、時には戦術ボードを使って説明してくれて、街で偶然会った時にはクロアチア楽しんでくれてる?など声をかけてくれたり、本当にコーチたちが選手たちの理想のロールモデルになっていることを感じました。



クロアチアという小国で何故こんなにもたくさんの素晴らしい選手がこのアカデミーから生まれてきたのかが、ほんの少しだけですがわかった気がします。



自分も頑張ろう。

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Shuta Tsukamoto

ソレント大学サッカー学専攻/ Non Leagueトップチームアシスタントコーチ兼分析担当/ スカウト/ FA 心理学 level4/ noteでは心理学を応用した記事などを書きます。

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