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ちょこタピに捧ぐ

パールレディのちょこタピが終売した。

Pearl Lady(パールレディ)は日本生まれのタピオカとクレープの専門店で、その歴史は2003年からになる。
2003年といえば昨今のタピオカブーム*以前も以前なので、街にいるタピオカ屋の中でもそこそこ古参になる。本場の台湾からやってきたお店の方が歴史がある可能性は高いが、少なくとも日本でタピオカ屋として街に溶け込んでの歴史は、おそらく屈指のレベルで長い。
*2018年周辺の"第3次タピオカブーム"のこと

姉妹店の茶BARも含めると都内近郊に店舗が多く、とりわけ新宿エリアを行動範囲とする自分にとっては最も身近なタピオカ店であり、初タピオカの地であり飲む実家、それがパールレディだ。

そのパールレディ、タピオカを好きになるきっかけ、は言い過ぎかもしれないが少なくともトリガーだったちょこタピが終売した。

お知らせは突然だった。

声が出た。
SNSを見ていて割と声を出すタイプだが、タピオカの情報を見て周囲に配慮した悲鳴をあげたのははじめてだった。

ご存知ない方に簡単にご紹介すると、タピオカの中が空洞になっており、そこにチョコレートソースが充填されたタピオカが「ちょこタピ」だ。

今や各所でタピオカドリンクが売られており、中にはフレーバー付きのタピオカやチョコソースの入ったドリンクは存在しているが、このちょこタピは唯一無二である。

パールレディのミルクティーは甘めなので(台湾出身の方に聞いたけど、現地に近いのはこの甘さらしい)、甘さをハーフにしてちょこタピ。これが本当にいいバランスで、ベストチョイスだったのに。

トッピングで使用しております「チョコたぴ」の使用材料の入荷終了に伴い、11月末をもちまして店舗での販売を終了させていただくことになりました。
販売から約10年、多くのお客様にご支持いただき誠にありがとうございました。
今後も皆様に喜んでいただける商品を開発して参ります。
トッピング「チョコたぴ」の販売終了のお知らせ 

不幸中の幸いに感じたのは「使用材料の入荷終了に伴い」の一文だ。販売終了となると「価格が見合わなくなる」「原料または入荷ルートが絶える」「人気が少ない」が主な原因だ。

この場合は「原料または入荷ルートが絶える」で、期間限定品としての復活などにおいては絶望的だが、自分はそれよりもあのちょこタピが販売不振というシチュエーションが最もつらかったので「ああ、愛されながら、致し方なく販売終了を迎えたんだな…」と言う気持ちになれた。

お前はちょこタピのなんなんだ。

自分が初めてパールレディのタピオカを飲んだのは中学生の頃で、タピオカはそこまでメジャーなものではなかった。
もう経緯を覚えていないのだけど、タピオカというものを飲んでみたいと調べた時に見つけたのが、パールレディだった。初タピオカのパールミルクティーから少しして新宿ルミネエストに春水堂(チュンスイタン)ができたと記憶している。

ちょこタピはパールレディ来店数が片手で数えられるころに出逢った。元よりタピオカは飲み物とおやつと、軽食を兼ねている感覚があったけれど、ちょこタピはまさにその満足感と多幸感があった。

タピオカの食感の好みの都合、コートの時期もアイス派


他のレギュラーメニューも美味しいし、パールレディはコンスタントに期間限定メニューが出るから、毎回ちょこタピだったとは言い切れない。ただ間違いなく最も飲んだタピオカは「パールミルクティー、ちょこタピ、甘さハーフ、氷少なめ」だった。

スタンプカードは牛歩ながら6枚目の途中。

中のチョコレートがちょっとチープな味で(これは自分にとって最高に賛辞の言葉である)、とっても好みだった。

茹でるのが難しいのか、結構コンディションにムラがあって好きだった。ちょっと固めのときは中のチョコがザリっというのも、好きだった。

ちょこタピをタピオカ2倍にすると背徳感がすごかった。
背徳感を上回る満腹感で普通に夕ごはんが食べれなくなるので結局2回くらいしか飲まなかった。

某店で頼んだ時になぜかちょこタピが「ベーコン」と書かれたバットから抄われていてめちゃくちゃ緊張した。味はいつも通りだった。

サイズアップしたちょこタピを手に歩くオフィス街はなかなかに、特別兵器を持っているようでよかった。

スタンプカードが埋まった記念にチョコナッツショコラミルクティーをちょこタピに変更した時は、あまりに豪華で笑ってしまった。色んな意味で重みがあった。

これもまた近しいデラックスなちょこタピ。
五臓六腑に甘さと深い罪悪感を感じた。


わりと、ちょこタピを飲めればその日1日をいい日だったことにできた。

使用材料の入荷ができなくなるというのはどの製品どこの世界だってある。こればかりは仕方ないし、むしろよくも10年売っていたという話だ。10年なんてひとつのお店の歴史を内包することさえある長さだし、あの時の中学生は社会人になった。

なにもこれから悲しい話しかないわけではない。
パールレディは変わらずにそこにいる。

一時期「タピオカはカロリーが高い」などと囁かれた時もあったけど、水晶ゼリーというゼリーでカロリーを抑えることもできる。
なんならパールレディではタピオカくらいのちっちゃい白玉も選べるようになった。逆行の精神。タピオカは心と脳の為のものなので。

先の文書を見返す。最後の一文。

今後も皆様に喜んでいただける商品を開発して参ります。

だから大丈夫!

しかしやっぱり、またちょこタピに会えたらいいな、いずれ第二世に会えたりしないだろうか。
メニューを見て、時折何かに紐づいてあの味を思い返して、あぁもう無いのかとなるのは目に見えている。
それでもやっぱりパールレディは飲む実家。

11月、最後のちょこタピはややかためで、
やっぱりチョコレートのわずかにざりっとした感触がよかった。

ありがとう、ちょこタピ!


PS
期間限定は2021年のコラボ品の《杏仁いちごみるく》が美味しかったので、権力者の方々、どうか杏仁ミルクの限定メニューまたは恒常化を検討してください……。

ちょこタピが終売した世界の深夜に.

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