コーヒーと蚕の記憶

記憶を書き換えて覚えていることがありました。
コーヒーを飲み始めたきっかけです。
コーヒーを飲み始めたのは、就職し、社員ほぼ全員が飲んでいたので、私も飲むようになったと思っていました。
しかし、短大生の時に行ったヨーロッパの研修旅行中に書いていた旅日記を読み返した時に、この記憶が違うことを知りました。

2週間の研修旅行で、ウィーン、フィレンツェ、ミラノ、ローマへ行き、ドォーモや教会、宮殿、絵画鑑賞などをしました。自由時間もありましたが、ほぼ団体行動で、食事も決められたレストランや宿泊するホテルで食べました。
その食事の最後に、決まってコーヒーが出されるのです。
旅日記に「毎食コーヒーを飲んで、コーヒーが好きになった」と書いていました。
社会人になってからではなく、短大生からだったことに軽くショックを受けました。確かに、飲み続けているのは社会人になってからなので、それでもいいのかもしれませんが、「研修旅行でコーヒーを好きになった」という事実が、記憶からすっかり消えていたことがショックでした。


数日前、テレビ番組で「蚕を飼っていた」と発言しているのを聞きました。
「蚕だなんて、珍しい!」と言うと、「うちでも飼っていたしょ」と旦那に言われました。
「え?うちで蚕飼っていたの?!」旦那の勘違いだと思いました。
「蘭、可愛いって言ってたよ」と旦那。
「私可愛いって言ってたの?!」私は蚕を愛でていたようでした。
全く記憶から消去されています。

後日、息子に聞いてみました。
虫好きの息子なので、飼っていたなら飼い主はこの子になります。
「あーそう言われたら飼ってたね」と言う息子。
やっぱり飼っていたようです。
「お母さん全然覚えていないんだよね」と言うと、「小学校の理科の勉強でクラスで飼っていた蚕を、勉強が終わったら貰ってきたよ。うち、何でも飼ってたしょ」と息子が言いました。
小学校の授業で蚕を飼って観察していました。
参観日に少し早めに学校へ行った時、息子のクラスで、まだひょろひょろの小さい蚕を飼い始めていたのですが、その蚕を鼻に載せて「お母さん見てみてー」と笑顔で息子がやってきたのは覚えています。
周りの友達も大爆笑でした。私はそれを写真で撮ったのに、どこに保管したやら、見つかりません。残念です。

息子は小さい頃から虫好きでした。私も触らなければ平気なので、自分でお世話をするなら、飼いたいものはなんでもオッケーをしていました。
卵をお腹に抱えたカナヘビを飼って、孵化させたこともありましたし、キアゲハを孵化させたこともありました。
キアゲハが孵化した日は、ちょうど息子が早起きをしていて、孵化の最中に遭遇したのです。これこそ、虫の知らせ。虫に愛されている息子です。

ペットを飼うということは、エサが必要です。
そこで、やっと蚕を飼っていたことを思い出せました。
蚕のエサはクワの葉っぱです。
クワの葉っぱが近所にある子から、分けてもらっていました。
飼ってもいいけれど、エサはどうするのか心配していた自分の記憶が蘇ったのです。
でも記憶はこそまでで、家で飼っていた様子は思い出せません。
思い出せなくても、飼うと愛着が沸くのは毎度のことだったので、「可愛い」と言っている自分を想像できてしまいます。

日常でも日記を書いていれば、コーヒーの時のように、忘れた記憶を思い出すこともできたでしょう。
今回は家族の記憶が日記の代わりになりましたが、私の記憶は蘇らないままです。
自分の言葉で書いたもので思い出す楽しさがあるので、ここでは、日記のようなプライベートとはいかないまでも、日常の些細な事も書いていきたいと思いました。



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