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【Amber】「人生の美しさ - それがどれほど不完全なものであるか。」240308 Women in Pop インタビュー 日本語訳

Words: Emma Driver
Interview: Jett Tattersall
Published: Friday March 8 2024

元記事はこちら☟内容にボリュームがあったため、目次はオリジナルでつけています。意訳含みますのでご了承ください。


アンバー・リウについて

K-popスター出身のアンバー・リウは、素晴らしいPopな血を引く、エキサイティングなソロアーティストだ。
15歳の時、LAのオーディションで韓国の巨大勢力、SMエンターテインメントに選ばれた後、f(x)のメンバーになり4年間ツアーやレコーディングを行い、その過程で真のメディアスターとなった。アンバーは、f(x)で学び得た全てを基に、素晴らしいソロ作品を制作してきた。

2015年に彼女はEP「Beautiful」をリリースし、韓国とビルボードのワールドアルバムチャートで2位を獲得。
その後のリリースでは、K-POPが知られているハイキーダンスジャンルとは異なり、より多くの音楽的探求がされた彼女の進化した音を披露した。「Three Million Years」(2020)のような基礎的かつシンプルな傑作、甘いシンセポップ「Other People」(2019)、「Paradise」(2022)、そして「complicated」(2021)のような繊細なバラードまで。
最新シングル「Dusk Till Dawn」は制作に4年間かかった。アンバーとプロデューサーは、聴く人がそばに求めるような「魔法をかけてくれる誰か」と一緒に、計画なしに夜を駆ける目まぐるしいエネルギーをこの曲で表現しようとした。

“Sneak out, I’ll make it good for you,” アンバーが歌う。そして歌は「夕暮れから夜明けまで 通りを歩く」足音のビートから作り上げられ、重畳したボーカルラインとギターのリズムを加え、夜遅くの街の声やこだまのように上がったり下がったりする。
Women In Popはオーストラリアでの最初のヘッドラインショーの前夜にアンバーに追いつき、インタビューを通して彼女の曲作りのプロセス、ファンへの愛、そして彼女が得た個人的な学びについて深く知ることができた。

曲を書くときの想い

今日は時間を割いてくれてありがとうございます、アンバー。 あなたの音楽は私を本当に幸せにしてくれます。 悲しい歌の中であっても、暖かさを持っています。 まるで、「ねえ、こっちへおいで、この話を聞いて」と言っているかのようです。曲を書いている時の気持ちはどのようなものですか?

Amber:ありがとうございます!私はいつもこんな考え方をしています。「人々は、私が言おうとしていることを理解してくれるだろうか?」 なぜなら、文章を書く過程でただ自分の考えを書くだけでなく、「この歌詞は、私の思い描く通りに伝わるだろうか?」ということを常に考えているからです 。’自分のため’に歌っていますが、それと同時に’誰かのため’に歌っているから。 私にとっての音楽の目標は、何かと葛藤している人の捌け口になることです。 その人達が、自分と同じ気持ちでいる人がどこかにいる、と感じられたら嬉しいと思っています。

実際、これが私が音楽と共に育った方法なんです。 私はいつも孤独を感じていました。自分がどこにも属していないような気がした。 でも、音楽は私に振り返るための安息所を与えてくれました。 同時に「私は何を感じ、何を言いたいのか?」ということも考えられた、 たとえ誰かに理解されなくても。 それは逆説___いや、逆説ではなく、私の中の皮肉な部分ですね。私は人々に理解してもらいたいけど、理解してほしくない。同時に私にも理解してもらいたい、でも実際は自分でも理解していないの!

K-POP業界の経験と得たこと

あなたは最大限に、音楽に対して驚くほど自然なアプローチを持っていますね、とてもアンバーらしいです。
KPOPという音楽的背景からよく見られるアプローチとも異なるようですが、その音楽領域内で獲得したツールは、どのようにその自然なアプローチを推進しましたか?

Amber:私は間違いなく、まだ自分自身の人間性を見つけようとしている最中です。 K-POP業界で育つと、自分が何をしているのか分からないような「愚かな子供」になります。しかし、本当に直面しなければならない職業的な環境に投げ込まれるのです。
それが誰にとってもマイナスなことという訳ではありませんが、幼い時にスポットライトを浴び、抱えているすべてのプレッシャーを受け大人になった時――その重さに気づくことができません。とてつもなく多くの人々に注目され、外見、何を身につけているか、マナーまで見られます。でも同時に、実際はまだ10代の子供、あるいはそれより若いこともある。
(芸能活動を)小学生の頃から始めるような私より年下の人もいました。 私にとっては、本当に子供でいられた時間は与えられていなかったと思います。
そのためか、大人になって、常に「完璧でいなければ」と感じるようになりました。私が音楽を書き始めたとき、正反対の私みたいな存在もいて、「でも、私は完璧ではないし、なれない」という思いもありました。私は自分の中に美しさを見つけようとしているんです。
表面的には「私はアンバー·リウです!」という(活力的な)感じですが、内面的には怖がっている、小さな子供なんです。 本当は不安に満ちていて、いつもパニックに陥っている人間だと自覚しています。
だからこそ、1年ほど前にセラピーに行ったのだと思います ― 時間をかけて再度自分を見直す必要があったのです。 人生の美しさ、それがいかに不完全なものであるかを理解してきました。 まだ多くのことに助けられながら、自分自身を集中させ、私が心に留めている目標 – 現在だけでなく、10年後、20年後「私はどんな人生を送りたいのか?」というゴールに特に集中するよう努めています。

子どもの頃、そして業界で成長していく過程の中で、私は多くのツールを与えられたと思います。 ダンスは今自分自身を表現する方法の大きな部分を占めていますが、昔はこのようになるとは思ってもいませんでした! また、ファッションにおいても― K-POPでは、アイドルはカメレオンのようなもので、次から次へと繰り返しファッションも変わっていきました。 私は今でも黒いパーカーやスウェットを着ていますが、そこにちょっとした色を入れて、カットやスタイルの違うファッション作品を見出します。今でもそのような感性は本当に役に立っていると思います。 また、言語とファンとコミュニケーションをとる力、さらには単語を覚えるのに時間をかけることも難しくはありませんでした。
例えば東京では― 私は日本語があまり上手じゃなくて、赤ちゃんの言葉ぐらいしかわかりません。 でも、日本語が堪能な私のダンサーは、実際に座って時間をかけて(私がファンに伝えたいことを)全てを書き出してくれました。 このようにしていろんな手段をとってファンとつながり、彼らの文化を知ることができることがとても好きです。 そして、これらすべての場所をツアーすることで、「人生はとても美しい」という大きな視点を私に与えてくれました。 人それぞれ違う人生を歩んでいるけれど、私たちはみんな、音楽、そして一つのこと―私、を愛することで一緒になれるんです。
うん、これは冗談!(笑)

コンサートと、ファンの存在

いえ、皆さん絶対に「あなた」を愛していますよ!ステージでは、ファンの皆さんのために、 楽しい空間を作って迎え入れてあげていますよね。

Amber:本当に素晴らしいファンを持っています。大好きです。
私のことを、私のグループ(f(x))を通して知ったか、YouTubeをやっていた時か、独立したインディーズアーティストとして知ったか、時に関わらず、彼らは皆、気持ちよく過ごしたり、楽しんだりするためにショーに来ます。 私は公演やショーをするためにそこにいますが、ファンと話したり、いじったりするのが大好きで、ファンも私をいじり返したりします。 その時間はとても楽しく親密で、特にショーだからこそ一緒に過ごすことができます。 私もみんなと知り合いになれるんです。 いいですよね。

私たちのクルーは、これをプロフェッショナルに、仕事としてやり遂げます。 でも、なぜ人々はコンサートに行くのでしょうか? それは_長い1日の仕事の後、またはしばらく休み取っていないとき、外に出て楽しく遊び、仕事や学校のストレスをすべて解消するために踊るんです。 だから毎晩、人々がここにいるのは、「楽しみたいから」だと思います。 私のショーには唯一のルールがあって、毎回「ここは'Be Yourself'の場所です。 踊りたいなら踊っていいし、静かに座って拍手をするだけでもいい、ストイックになってもいいし野生の花のように自由でいていい。あなた次第です。 一番大切なのは、コンサートで本当の自分でいることです」と伝えています。 私はいつもファンにその「空間」を与えたいのです。私も彼らのおかげでその空間を与えられているし。 与えられ、受け取り、また与えられ、といったサイクルになっているんです。

アンバーの音楽が生まれるプロセス

では、音楽に慰めを見いだしたナーバスな子供だったと同時に、歌いたいという気持ちもあり、ポップミュージックが大好きだったんですね。矛盾していることのように見えますが、自分の中で自分自身を表現するために、歌う必要があったということでしょうか?

Amber:音楽は、ただ「自由」なものだったので愛していました。捌け口のようなもので、私が追及したい仕事とはまた違いました。

思い返すと…学校では本当にうまくやっていました。勉強が好きだったし、数学と理科が好きで。そして、学校はうまくやっていき、その後に音楽を追求する機会がやってきます。もし音楽関係でうまくいかなくなったとしても、いつでも学校に戻ることができる自信があるんです。
私が常に、断固としていた信念の一つは、何かに心を注ぎ、それに挑戦して、失敗した場合は方向転換し―そして解決することです。
音楽に関しては、いつも「とりあえずやって、何が起こるか見てみよう」というものでした 。今もその段階にいます。 例えば、アルバムを作るとき、セッションに入るとき―そのセッションから何が生まれるか分からない時もあります。「あの12時間のセッションは何の価値もなかったな、曲は結局プープープーとしかならなかったし」と思ったとしても、やめません。 そのまま進めます。私が(曲を)書くことが本当に好きなのは、多くの様々なファンや、私が一緒に仕事をしている人々を繋げることができるからです。

そのようなセッションを元に曲を書いているときはどのようなプロセスなのでしょうか?

Amber:音楽を作曲するときは、「よし、4つのコードを並べてみよう。ここにブリッジをもってこよう…で、ここの歌詞はあなたが書いて」というようなものではありません。 「どんな気分? これをやった時、何を考えていたの?あ、 'hoooo'の音だせる?」といった、もっと会話以上のものなのです。そして、プロデューサーは最善を尽くすだけです。 非常に協力的な形なんですよね。 クリエイティブな人がたくさんいることが、私に大きなエネルギーを与えてくれます。 おかげていつもアドレナリンが強いです。

自信がないことについてよく話されていますが、音楽にのめり込むのはとんでもなくすごいことです! 多くの人は、何かを試すことに対して恐れますよね。

Amber:そうですね。ここ数年、私は「失敗することに恐れる」ことを克服してきました。今は失敗を恐れることはありません。 人間であることの全ての所以は、学び、試み、失敗し、別人として元の自分から脱却することです。 祖母はいつも私に、もっといろいろなことに挑戦して、外に出ることを恐れないようにしてほしい、それが唯一の願いだと言っていました。 すべてを体験し、様々なことをし、人生で与えられることにのめり込むこと、それが祖母が私に求めていたことでした。 そして、私たち人間を引き止めているのは、常に「恐怖」だと思います。 ステージで、もし私がお尻を振ることに決めたら、やるつもりです。 しかしたとえ失敗しても、もはやショーの一部になるんです。 だから私はそれを「happy mistakes」と呼んでいるんだと思います。人生の中で本格的に挑戦しなければならない時もあります。 そんな時に常に困難な時期を乗り越えられられたのは、「この瞬間は私に何を伝えようとしているのか?」「自分はこの瞬間をどう感じているのか」という「考え」のおかげです。 その瞬間に起こっていることに対して、心から同調すればいいんです。恐怖を感じるのであれば、 「今、怖い」と言ってもいいんです。

'Dusk Till Dawn' 制作秘話

あなたのコメントを見ると、 ファンの皆さんも同じことを感じていると思います。 あなたがファンに与えるものは信じられない程大きなものです。次のテーマでは、あなたの最新シングル「Dusk Till Dawn」についてお話ししましょう。
サウンドとしても美しく、MVも素晴らしいですね。 このトラックの制作について少しお話いただけますか – とても滑らかな曲で、簡単にも思われますが、おそらく制作は全く簡単ではなかったでしょう…

Amber:'Dusk Till Dawn'は楽しかったです。 3、4年ほど前、私は事務所のオフィスにいたのですが、裏にはランダムなプロデューサーやライターがいるスタジオがいくつかありました。 そして素晴らしいビートが聞こえてきたんです。 マネージャーのところに駆けつけ、「ちょっと、部屋に誰がいるんの?一緒に働いてもいい? いい?あの曲にのっかてもいい?」 と尋ねて「わかった、確認させて」と言われました。
そして、プロデューサーのDirk Pateと作家のSean Carsonに会ったんです。 彼らはすでにこの曲を書き上げていました。 それに飛びついたとき、私は自分の声のとても男性的な部分、低いトーン、そして女性的な裏声を利用したいと思いました。そして、それらすべてを本当に一緒に合わせる方法があるかどうかを探りました。これが「Dusk Till Dawn」で聞くことができるグルーヴです。 私たちは新しいパートをいくつか書いて、「よし、誰かとこっそり一緒に出たい(Sneak out)とき、どうしたらいい?」というようなことを考えようとしました。 曲を作るのではなく、ライティングセッションや会話の方をたくさんしました。 とても楽しかったです。 その後、私のエグゼクティブプロデューサーであるトム·ルッソがトラックに乗り、さらに壮大なものにしました。あるいくつかの曲では、曲を書いて、完了、というパターンもありますが、制作に時間がかかることもあります。「Dusk Till Dawn」は制作に4年かかりました。 ミックスは6回やったと思います。 一人のミックスではなく 、2人のミックスエンジニアを 組み合わせることも考えました。 それはあまりセクシーではありませんが、何度も言うように、非常に協同的なものでした - 全員がアイデアを出しあうだけで成り立ったのです。

公演で一番楽しみにしていること

それは素晴らしいですね。また、 オーストラリアで演奏をしますが、観客は喜び と、騒々しいエネルギーと たくさんの愛を感じるかと思われます。コンサートにおいて 何か特に楽しみにしていることはありますか?

Amber:一番はファンに会うことですね。InstagramやTwitterで、「オーストラリアに来て」と聞かれるのを見ますが、私のことを知っている人をオーストラリアで実際に見たことがありません。 なので、本当に愛おしいのが毎公演あるミートアンドグリートの、1対1の個人的な時間です。ファンはいつも、例えば「小学生の頃から応援してます、今日初めて会えました!」と言ってくれたり。みんなにとってどれだけ非現実的なことなのか想像できません。 長い間私を応援し、この瞬間まで私に会ったことのないその誰かからエネルギーを実際に感じることは、私にとって言葉にできないものです。 昔の懐かしい友達やペンパル、文通仲間に会うようなものだと思います。

素敵なお話です。お時間ありがとうございました、アンバー。そしてすべての公演の成功を祈っています。私もあなたのペンパルの一人になったような気分です。

Amber:ありがとうございました!楽しかったです。

アンバーの新曲、‘Dusk Till Dawn’ はこちらから。
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