見出し画像

ぼくらの秘密基地

2020年。この年はきっとどこの誰にとっても特別な一年になっただろう。見えない敵によって生活が一変した。それによってその人の生き方、働き方、遊び方、さまざまな生活様式がその敵と共存するように”最適化”された。

人と会わなくなると自然と1人で過ごす時間が増える。それにも慣れてきて最近は苦ではないのだが、どうしてもたまに何もすることがない時間がある。そんな時間にはきまって僕は過去の思い出を脳の奥底から取り出してみる。

小学校四年生の時の話だ。僕は大阪の田舎で生まれ育った。学校が終わると1時間かけて歩いてうちに帰る。学校の門の前で見つけた石を足で蹴って家まで持ち帰る。またある日は、友だちとどっちが崖を高くから飛べるかを競った。その競争は日を増すごとに激しくなり、建物の2階くらいの高さの崖から飛ぶこともあった。日が暮れるまえに飛ばないとその日の夜は眠れない。もし飛ばなければ、勇気のないやつというレッテルが自他共に自身にまとわりつくからだ。仮面ライダーの生まれ変わりだと思っている当時の僕からすれば、勇気こそがアイデンティティだっただけに、崖を飛ぶという行為は、存在価値の証明そのものだったのだ。


と、何もない中で楽しむための英才教育をその環境によって叩き込まれたひろせ少年は、仲間うちでとあるプロジェクトを計画していた。(→続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?