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実家が零ハウスの夢_200619

街で母とすれ違う
綺麗好きで何かと身だしなみに煩い母の身なりに違和感を感じる
髪の毛に灰のようなホコリがついていたからだ
取ってあげようと指先で払うように触れると、サラサラと思っていたよりたくさんの灰がこぼれた
驚いて持っていた櫛ですくと、おびただしい量の灰やホコリが出る
私は慄いて後ずさり、背後の看板にぶち当たる
この看板が月締メ・フォルマントの看板でした(師匠成分終了)

「これどうしたの?!なにかあったの?!」
問い質しても母は恥ずかしそうにはしているが別段特別にも思っていない様子
実家で何かが起きている
そう思った私は姉に電話をして、姉と義理の兄と共に実家に行く

実家に行くと違和感しかない状態であった
まずデカい
前後左右の土地を買い集めたようで、10倍ほどの大きさに膨れている
玄関の見た目は今までと同じだけれど、中に入るとそこにあるはずの廊下がなく直接居間に繋がっていた
居間はどんよりと暗く薄汚れており、壁や畳に焼け焦げた跡や見慣れない謎の壺や箪笥などが置いてある
「(なんかどっかで見た事ある感じがする)」
どこを照らすでも無いピントの来ないぼんやりとした照明器具や、
意味もなく散乱している座布団などにイライラしながら、母と姉に説明を求めた
聞けば、兄が結婚して家を出たタイミングで父が知り合いを募り家の建て増しを始めたと言うのだ
「お父さんの事だから、気が済むようにやらせないと」
母と姉はため息をつく
いつもは正論のみを言う正義側の義兄もどこか諦めた様子で「しょうがない」とか言う

それにしたって家は広くはなっているものの、このどんよりとした廃墟感はどうしたものか
なぜ建て増しをしてダウングレードされていくのか
とにかく母を風呂に入れたいと思い、以前はここにあったはず、と思って浴室の戸を開けた

シャワーヘッドが3つ
浴槽が4つ
部室のシャワー室のような仕切りと、なぜか石炭が燃えるかまどがひとつ
左手奥の塗りたてのペンキの香る壁の前で父がしゃがんで背中を向け作業をしていた
髪が伸びている
横髪がちょっとでも耳にかかると狂ったように床屋に行っていた父の髪が、肩につくほど伸びている
「ちょっとお父さん、これどういうつもり?」
怒って声をかけると父はゆっくり振り向いた
「家が狭くなったから建て増しをしている、もうすぐ出来上がるはずなので、その時にまた帰ってきなさい」
どこを見ているかわからない目でそう言う
父は狂ったのか
だとしたら父をどうにかしないといけないということか

私は踵を返し浴室を出て自分も暮らしていたはずの子供部屋に行ってみることにした
子供部屋は私と姉が家を出た後は両親の寝室になっていたはずだ
と思ったのだが、そこにあったはずの部屋が無い
前は全ての部屋は廊下で繋がっていたのだが、廊下が無くなっている
部屋と部屋が直接隣合っており、手当り次第襖やガラス戸を開ける度に知らない部屋が出てくる
そのどれも四角形ではない変な形をしており、薄汚れており、またあちこちに意味深な焼け焦げや液体の滴った跡やぼんやりとしてどこも照らしていない照明があり…

この辺りで私の脳内には「零シリーズ」のゲームマップが思い浮かんでいた
もしかして実家は零ハウスになってしまったのか
しかももしかしてボス戦は父とか

そんなことを思いながら次々と部屋から部屋へ移動していると、熱帯魚の水槽が立ち並ぶ中庭のような部屋に出た
部屋だけど屋外、地面が土なのだ
そこに水槽から飛び出した熱帯魚がぽつぽつと死んでいる
魚たちはフィルターも水流装置も全て取り外され緑色に苔た汚い水に放置されているだけで、とても世話をされているようには見えない
これはいよいよまずい事になっていると思い、なんとか外か他の家族のいる居間へ通じる戸を探す

と、外に出れたは良いが、そこから居間に戻るにはどうやら父のいる部屋の前を通るらしい
いやまてよ、後ろのドアの鍵を内側から開けてショートカットを作れば父の部屋にいる猫も鳴かずに済むのでは?
明らかにボス戦攻略に向けての負けイベを避ける行動を自分がしている事に気付く
負けイベだが死ぬことは無い、多分
でも父と戦いたくないし、零シリーズのように怨霊化した父も見たくないし

父の部屋の前から1度引き返し、逆側のルートでめでたくショートカットのドアの鍵を開けて居間に戻れた
居間にいる母と姉と義兄に見てきたことを話し、
「もし自分達が解決できなかったら甥っ子(姉の子供たち)が解決しなくちゃいけなくなる、彼らは子供だし攻略方法なんてわからないでしょう」
と力説すると、義兄が
「でもこういうの、最初に解決しようとした人たちみんな死ぬじゃん」
と言い出し、
「倒された父母(姉と義兄)を追って子供たちが謎に飛び込む方がゲームの文法としての様式美は守られるのでは?」
などと言うので、私は
「そんなだから日本は全国各地で禁忌の儀式が行われていて怨霊と呪いで溢れかえって…そんなシチュエーションが珍しくもなんともなくなってしまうのだ、プレイヤーは読めている」
などと言い返したりしてしまう

大体こんな違法建築請負う業者などいないのだ
父の手作りにしたって建築家でもあるまいしもって数年、
最終的に「住みにくい」とか言い出して居間のみで暮らす羽目になるのだ
などと思いながら目が覚めた

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