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ファン歓喜!ネイトー&ネイトーW主演映画『မုန္းစြဲ」』


ネイトーとネイトーによるW主演作品の公開が昨年のミャンマー映画界に大きな衝撃を与えた。僕自身、耳を疑ったし、自分でも何を言っているのかわからないのだが、とにかくミャンマー俳優界の巨星「ネイトー」と「ネイトー」がW主演したことはミャンマー中の話題をさらった。

その名もမုန္းစြဲ』である。

あらすじ
昔、ある村で散々悪事を働く二人の兄弟がいた。盗みや暴力は当たり前、村の人々はこの二人の悪行に困り果てていた。果ては、恋人のいた村の女性を襲い、事もあろうに妊娠させてしまう。ついには警察が動き出したことで二人は捕まり、生きたまま埋められて殺された。「生まれ変わって絶対に復讐してやる」という呪いの言葉を残して・・・。一方、死刑になった弟に乱暴された女性は、恋人の男性と結婚に至るも彼女の妊娠を止める術はなく出産してしまう。生まれた赤ん坊は双子だった。夫婦二人はあの時の呪いの言葉を思い出し、憎悪と憎しみと恐れは二人の赤子へと向かう。両親から「近づいたら殺してやる」という言葉を投げかけられながら双子は僧院に預けられることになった。過去の記憶を宿しながら成長する双子と二人の夫婦との間に深まる憎しみの行く末は・・・

ミャンマーで有名なおとぎ話の実写化
ミャンマーで語り継がれる有名な仏教のおとぎ話を実写映画化した今作は、敬虔な仏教徒であるミャンマーの人々にとっても大変に馴染み深いものであり大きな注目を集めていた。ミャンマーという国を知るには良い教材だと思い僕もタイトルがわからないまま、上映リストを指差して受付スタッフからチケットを購入して鑑賞した。*残念ながらアカデミー賞大賞は逃した

幼い双子は、時折過去の記憶がフラッシュバックし、実の母親とその夫に理由のわからない憎しみの感情を抱き攻撃的に振る舞う。一方の夫婦も小さな村で生活する以上顔を合わさずにはおれず、托鉢時には夫が刀を振り回しながら双子を襲うなど双方に折り合える余地はない。お互いの関係は膠着したままである。現実の世界でもどうしようもな状況というのはあるが、このどうしようもない状況を仏教的観点からどのような結末へ持っていくのか、興味を沸き立たせてくれるのである。

そんな状況に見かねた僧院のお坊さんは、二人を村から遠く離れた別々の僧院に預けることを決め、双子は長いお別れを告げることになり厳しい仏教の修行へと旅立つことになった。これが転機となる。双子は深い深い憎しみをその厳しい修行を通して少しずつ紐解いて氷解させ、どうすればこの憎しみの連鎖から解放され、両親による自分たちへの憎しみすら晴らすことができるのあろうかと考えるように至るのである。

ネイトーとネイトーによるW主演!


「そうきたか!!?」

僕は思わず声を発した。序盤で二人の兄弟を演じたのはネイトーともう一人の俳優であったのだが、生まれ変わって双子の青年へと成長するとなぜか配役は変わりネイトーとネイトーによるW主演になっているのである。しかし驚いたことに、僕も初見では二人がネイトーであることに気づけなかったのだ。



「似てるようで似てないような・・・」

一方はネイトーのそっくりさんでも使っているのかと訝ったが、やはり双子を演じる二人はどちらもネイトーだったのである。名演技この上ない。後半のストーリーは、僕にはこの二人共が本物のネイトーなのかどうかを見定めることに意識を集中してしまい既に本編どころではなかった。よもや双子説、三つ子説を裏付ける確かな証拠が眼前に繰り広げられているのである。

憎しみの連鎖を断ち切ろうとする双子に・・・

後半では双子演じる二人のネイトーが毎日母親の家へ托鉢のために訪れるのだが一向に相手にしてくれない母。しかし、毎日決まった時間に何日も、何週間も、何ヶ月と托鉢を通して訪問を続けていく内に母親は二人に心を開いていくのであるが、僕は二人のネイトーが坊主頭で迫真の演技をする姿が面白おかしくなって、上映中に不覚にも声を出して笑ってしまった。だが心配しないでほしい。ミャンマーでは上映中の私語は特別なことではない。赤ん坊が泣き出したって御構い無しだ。

ミャンマー映画は日進月歩
僕が初めてミャンマー映画を観たのは4年前だった。お世辞にも面白いとは言えなかったクオリティなのは今でも覚えている。カメラワークもアップとズームくらいしかできず、脚本は韓国ドラマのパクリのような泣き喚き作品ばかりが氾濫していた。2012年に民政化したばかりで、これまで表現の自由が許されなかったのだから仕方ないことなのだが、とにかく酷かった。それから4年が経ちこうしてミャンマー映画を追い続けていると確かな進化を感じる。自国の文化を背景としたボリウッドの様な独自の進化を遂げるポテンシャルを感じる大作であったと思う。

最後に・・・

序盤で登場したネイトーと兄弟役を演じた役者さんは映画公開直前で不慮の事故で亡くなってしまうという悲劇も起きた。素晴らしい作品を残してくれてありがとう。ご冥福をお祈りいたします。

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Philip D徳 Marlowe

中学・高校は通わず、旅三昧。地方活性に携わるべく、大学卒業後に大手人材系企業に6年勤務し(内、2年間長野県小布施町役場に出向)、その後佐賀県庁に転職。現在はミャンマーへ移住しアジアライフを満喫中。座右の銘は「自ら機会をつくりだし、その機会によって自らを変えよ。」

緬映画評論家Nay Htun Khaingの部屋

緬映画をこよなく愛するミャンマー映画評論家Nay Htun Khaingです。どうぞよろしく。
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