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野球とは違う種類の“感動”

先週の東京スポーツ杯2歳Sに、期待の出資馬フォルラニーニが出走しましたが、1番人気の支持に応えることができず9着。後方からのレースになると、全く反応できないままレースが終わってしまいました。
調教の動きは抜群だったものの、新馬戦の後から陣営は気性面について言及しており、その不安が出てしまった印象です。デビュー前に牧場で取材した際には「とても素直」という評価だったのですが、レースを使って、母の父ステイゴールドの特徴が出てきたのかもしれませんね。
これが力負けということではないと思うので、次走以降、改めて期待したいと思います。

そして今週はジャパンカップ。イクイノックスとリバティアイランドの初対決となります。異次元の強さを誇る2頭だけに、本当に楽しみな一戦です。

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毎日杯を制して、クラシック戦線に名乗りをあげたアルアイン。
一口生活3世代目で、毎日杯が初の重賞制覇でした。デビュー前から、もっといえば出資の段階からクラシック出走は夢見ていたのですが、いざ、現実のものになると、それはそれは気分が高まるもの。
毎日杯の後は、「ライバルはこの辺になりそうだね」「人気はどれぐらいかな」などと、しゅっちゅう競馬仲間と電話で話していた記憶があります。

そして迎えた第77回の皐月賞。
1番人気は紅一点、デビューから3戦3勝のファンディーナでした。共同通信杯の覇者スワーヴリチャード、重賞連勝中のカデナと続き、アルイアンは9番人気。
毎日杯のレース内容から、十分に通用する手応えは掴んでいたので、正直、ずいぶん人気がないなぁとは思いましたが、2走前のシンザン記念で掲示板を外していたのが大きかったのでしょう。
前回のコラムで書いた通り、シンザン記念は直線の不利が響いてのもの。ただ、そこで賞金を積み上げられなかったことが毎日杯出走につながり、皐月賞への道がひらけました。また、仮にシンザン記念を勝っていたら、場合によっては無敗でここに出走となっていたかもしれません。そうすると上位人気に推され、周りからのマークも全く違うものになっていたはず。私も、とても平常心でレースを迎えられなかったことでしょう(笑)。
牝馬が一番人気になるような混戦模様で、のちのダービー馬レイデオロは出遅れ。強い先行馬が外枠をひくなど、後から振り返ってみると、あらゆることがアルアインに味方していました

週中に口取りの申し込みを済ませ、レースはニッポン放送のブースで見守りました。
口取りに参加するためには、レース後速やかに、所定の集合場所に行かなければなりません。
クラブの方とは、事前に綿密な動線確認を行い、その日、競馬場で仕事をしていた競馬仲間とも共有。アルアインが1着入線した際は、その競馬仲間の誘導で、すぐにここを出て、このエレベーターで下まで降りて…という段取りでした。
当時は、勝つ気満々でシミュレーションしていたわけですが、考えてみたら9番人気の馬の勝率は2%程度。クラブの方も「そこまでしなくても杞憂に終わるよ」と思っていたかもしれません(笑)。

6枠11番から好位をキープしたアルアイン。3〜4コーナーで手応えが悪くなり後方に下がりかけた時はヒヤッとしましたが、そこから盛り返すと、直線は馬と馬の間を割って先頭へ。
直線でゴーサインが出た頃には、もう大騒ぎ。私の『競馬場の達人』をご覧になったことがある方はお分かりいただけると思いますが、ピョンピョン跳ねての大応援です。内から抜け出したペルシアンナイトをクビ差で競り落としたところがゴールでした。

長くプロ野球選手を続けさせていただき、マウンドから色々な景色を眺めてきましたが、クラシックの表彰式でみる景色は、また格別なものがありました。出資者の皆様と喜びを分かち合う瞬間は、ありきたりな表現になってしまいますが、“感動”そのもの。こんなに感動することがあるんだなと思ったのを覚えています。

名古屋に戻るため、夕方には新幹線に乗っていましたが、何度も何度も繰り返してレースVTRを観て、余韻に浸りながら帰路につきました。

(次回更新は12月5日となります)

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