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一流は0.1%の上積みを求め続ける

前回の原稿で触れた矢作調教師、藤田晋オーナーと対談する機会があったと書きましたが、まさに矢作調教師&藤田オーナーのタッグだったシンエンペラーは皐月賞で5着。タイトル獲得とはなりませんでしたが、欧州血統のこの馬にとっては少し時計が速過ぎたのかもしれませんね。

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矢作調教師との縁は、募集時から真剣に検討して始めて出資した馬であるリライアブルエースがきっかけ。それ以来、親しくさせてもらっていて、矢作先生が主催したパーティーでは、私と番長(三浦大輔氏)でトークショー的なイベントを行ったことも。
そのパーティーの運営、そして和気藹々とした雰囲気からも、“チーム矢作”の強さが伝わってきます。私自身、長年、チームスポーツの世界に身を置いていたので、どうしてもそういう部分に目がいくんですよ(笑)。シャフリヤールを育成したノーザンファーム空港の佐々木厩舎長もそう。スタッフの皆さんの表情、集合写真を撮影する時の空気感に雰囲気の良さが滲み出ていて、次々と活躍馬が出てくるのを納得したのを覚えています。

矢作先生との会話の中でも、「さすが“チーム矢作”」「さすが矢作調教師」と思わされるエピソードが次々と出てきたので、詳細は4月19日頃に発売となる電子書籍『POG直球勝負』(オーパーツ・パブリッシング)をご覧いただきたいのですが、今回は一つだけ紹介したいと思います。

「POG取材で取り上げた馬が活躍しない」という話題になった時のことです。2歳馬の評価とプロ野球の世界でドラフトにかかる選手との共通点や相違点の話になりました。
プロ野球のドラフト会議にかかるような選手は、それこそ幼少期から野球に取り組み、中学、高校と選抜されてきていますが、POG取材の頃のサラブレッドというのは、本格的にトレーニングを開始してから数ヶ月程度。そこで素質を見抜くのは簡単なことではありません。ましては、馬の仕入れというのは当歳、1歳から始まっています。サラブレッドは年間8000頭近く生産されていますから、それこそ玉石混交。矢作先生も「明らかに足りていない馬は見抜けても、いいと思った馬が本当にS級に成長してくれる確率は低い」とおっしゃっていました。そして、その言葉の後に続けたセリフが、「その確率を1%でも上げるために努力するのが、調教師の責務だと思っています」。

私は、子供向けの野球教室で必ず伝えていることがあって、それが「上手くなりたかったら携わりなさい」なんです。何も行動を起こさずに、頭の中で上手くなりたいと願っても変わりません。毎日一回ボールを触る、グラブをはめる、バットを振ってみる。なんでもいい。今の自分より0.1%でもいいから上積みを求める。その積み重ねが大事だと考えているのです。

1日の練習で簡単に0.1%は上がりません。それこそ、0.01%とか0.001%かもしれません。でもそういう上積みを続けた先に、2割の打率が2割1分、2割2分に上がっていく。10回やったら3回しか勝てなかった相手に5回、7回と勝てるようになっていく。
上手になる人、一流になる人は、例外なく、こうした0.01%の上積みを貪欲に追い求めています。それは矢作調教師の言葉からも明らかです。

シンエンペラーに対しても、ダービーに向けて0.01%の上積みを求めて、いろいろと策を練ってくるでしょう。5月26日の日本ダービーが今から楽しみです。
(次回更新は4月30日)

やまもとまさ
プロ通算219勝、3度の最多勝、沢村賞、史上最年長でのノーヒットノーラン、50歳での登板など、記録にも記憶にも残る活躍を果たした球界のレジェンド。現在は野球解説者・スポーツコメンテーターとして活動している。ラジコン、クワガタ飼育等、多趣味としても知られる。競馬への造詣も深く、一口馬主としてアルアイン、シャフリヤールに出資する相馬眼の持ち主。
X(ツイッター) @yamamoto34masa

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