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頭の痛みも吹き飛ばす歓喜の瞬間

2月の半ばを過ぎました。プロ野球のキャンプが終わる頃になると、早い組の2歳馬はもう移動になります。かつては、プロ野球開幕の少し前ぐらいに2歳馬の取材を行なっていましたが、それでは移動の早い馬たちは見られません。それに伴い、取材の時期もどんどん前倒しになっています。今年も取材する予定なので、楽しみにしていてください。

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毎日杯は単勝1.9倍の1番人気がグレートマジシャン、単勝2.9倍の2番人気がシャフリヤール。
6番枠と7番枠に並んで入った2頭の位置取りは、道中で仕掛け気味に位置を上げたシャフリヤールが4番手、出たなりでその2、3馬身後ろの外にグレートマジシャンがつけます。
レースの1000m通過タイムは、思わず「速っ!」と声が漏れてしまう57秒6。いくら時計の出る馬場とはいえ、さすがにオーパーペース気味なのは否めません。
直線に向くと、前を行く2頭の間を割って抜け出したシャフリヤールに、大外を回ったグレートマジシャンが追う展開になります。残り200m地点で一気に差を詰められて、これは差されたと観念しかけましたが、そこからもう一度シャフリヤールが脚を使い、クビ差凌いでゴール。見事、兄弟制覇達成です。
勝ち時計の1.43.9秒はコースレコードでJRAレコードタイという素晴らしい記録。この馬の心肺能力の高さと素晴らしい勝負根性を証明してくれました。

レース後は、競馬仲間と「お兄さんをなぞって皐月賞に行くのでは?」「いやいや、藤原先生ならダービー一本じゃないの?」「でも、あの内容なら皐月賞でも好勝負になるよね」など妄想を膨らませましたが、やはりというか、レコードの反動も気遣って、ダービーを目指すことに。

アルアインの時とはまた違った緊張感。レースに向けてスポーツ新聞の取材を受けたりしていくうちに気持ちは盛り上がっていきますが、エフフォーリアという断然の存在がいたため、あくまで挑戦者の立場。それが気を楽にしてくれたのを覚えています。
当時、まだ新型コロナウィルスによる入場制限がありましたが、幸いなことに、『みんなのKEIBA』への出演が決まっていたため、現地で観戦することができました。番組には「みんなの夢馬券」というコーナーがありますが、そこで私が指名した馬券は

10(シャフリヤール)の単勝 5万円
1→10→13の3連複 1万円
10からの3連単マルチ 100円×390点

の合計9万9000円。
ちなみに1がエフフォーリアで13がグレートマジシャンでした。

レースは、同じく番組のゲストだった大魔神・佐々木主浩氏と一緒に観戦。
この時の模様は、YouTubeなどで結構拡散されていたので、ご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そう、ゴールの瞬間に飛び跳ね過ぎて、天井に頭をブツけたやつです(笑)。

【みんなのKEIBA】球界のレジェンド山本昌 日本ダービーで大興奮!!密着カメラ
https://www.youtube.com/watch?v=U53fAsr-rIM

ご覧の通り、直線入口の段階で、シャフリヤールを見失っていました。7-7-11-9という通過順位が示しているように、スタート直後はエフフォーリアの斜め後ろという絶好のポジションを取っていたシャフリヤールでしたが、道中で位置取りを下げて、4コーナーでは外に進路を取っていたため、どこにいるかわからなくなっていたのです。大魔神の「来てる来てる来てる!」でようやく発見した次第。そこからは全力応援で、あの天井ジャンプへと至ったわけです。

ダービー制覇。
テレビのカメラが回っていなければ、きっと泣いていたことでしょう。本当に、野球で味わったことのないような、特別な感情でした。
ひとつだけ残念だったのは、POG取材時に「ダービー当日に東京競馬場で勝利の握手しましょう」という約束を交わした佐々木厩舎長が東京競馬場に不在だったこと(佐々木厩舎長とは翌年のPOG取材時に歓喜のグータッチを交わしました)。

レース後は、お好み焼きでひっそりと喜びを噛み締めました。

やまもとまさ
プロ通算219勝、3度の最多勝、沢村賞、史上最年長でのノーヒットノーラン、50歳での登板など、記録にも記憶にも残る活躍を果たした球界のレジェンド。現在は野球解説者・スポーツコメンテーターとして活動している。ラジコン、クワガタ飼育等、多趣味としても知られる。競馬への造詣も深く、一口馬主としてアルアイン、シャフリヤールに出資する相馬眼の持ち主。
X(ツイッター) @yamamoto34masa

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