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ローテーション今昔物語

クラシックの第一弾・桜花賞はステレンボッシュが勝利。昨年のPOG取材の際にみせていただいた馬だったのですが、同じ厩舎で出てきたもう一頭がボンドガールで、とにかくこの馬のインパクトが強かった分、少しマークが薄れてしまいました。それにしても、2頭オススメしていただいて、そのうちの1頭が桜花賞を勝ち、もう1頭もNHKマイルCの有力候補になっているわけですから、ノーザンファーム空港・橋口厩舎長の慧眼は恐るべし。

一方、皐月賞の方はというと、取材時に全くノーマークだったジャスティンミラノが勝利。POG取材の時期はセーブ気味の調整でだったようで、取材では名前が挙がってきませんでした。無敗の三冠を達成したコントレイルもまた、2歳春の段階では調教をセーブしていたと聞きます。

前回のコラムで、『POG直球勝負2024-2025』という電子書籍の企画で、矢作調教師と対談させていただいたと書きましたが、その際、矢作調教師は「POG取材の時期は、まだ競走レベルで走っているわけじゃないので見極めも難しい」と、POG取材を受ける難しさについて言及されていました。
ボンドガールやステレンボッシュのように、2歳春の評判通りに活躍する馬もいれば、その時期には乗り込めていなかった馬がクラシックの大輪を咲かせたりもする。競走馬の見極めというのは本当に難しいものですね。

さて今回は、野球と競馬の共通点について書いてみます。
前述の矢作調教師との対談でも、野球と競馬の共通点を会話の端々に感じました。考えてみたら、POGで使う“ドラフト”というフレーズなんて野球そのものですよね。前回のコラムで書いた「一流の心構え」もそう。オーナーがいて、現場を束ねる監督や調教師がいて、チームがあるという構図も同じです。

そして、野球と競馬の共通点のひとつとして“ローテーション”も挙げられると思います。
皆さんご存知の通り、矢作厩舎の年間の出走回数は半端ではありません。慎重型の厩舎に比べると倍以上の数字です。私は一口クラブに出資しているので、やっぱりなるべくならたくさんレースに使って欲しい気持ちがあります。レースで走っている姿をみたくて出資しているわけですからね。だから、その辺りの見極めについて聞いてみたのです。

なんでも、アメリカの馬もヨーロッパの馬もレース数は使うそうで、特にヨーロッパはシーズンオフがあり、実質7ヶ月ぐらいしかないため、シーズン中はレース間隔を詰めて使うとのこと。今の中央競馬だと中2週続きの連戦だと「厳しいローテーション」と思われがちですが、けっしてそうではないと。
その話を聞いて、私は先発ピッチャーの登板間隔について思い浮かべていました。
昨年、バウアー投手が中4日、中5日で先発していましたよね。それを日本人投手がすぐに真似できるかと言われたら難しい。なぜなら今は中6日が一般的になり、詰めて投げていないからです。
昔の競走馬はトップホースでも年間8走ぐらいしていましたが、今は下手すると年間3走とか4走。野球の先発投手も、かつては130試合で33、4戦ぐらい投げていたのが、今は143試合で26、7戦ぐらい。時代の変化とともに、ベースとなる数字が変わってきているのです。

「昔は出来ていたのだから…」と言うのは簡単ですが、こうした変化の一因には、競技のレベルアップが関係していると考えます。私が投げていた頃は、試合中に抜くところを作って、ここぞというところで全力を使えば、意外と勝てたのですが、今は、バッターのレベルが上がったことで8番バッターでも気を抜けません。選手の体も大きくなっているし、トレーニングも進化している。一つ勝つことにパワーを使うようになっているわけです。

矢作調教師も「競馬のレベル自体が上がっているから、一回の消耗度が激しくなっているのは事実だと思います」とおっしゃっていました。ただ、さらに、こう言葉を続けました。「とはいえ、一番大きいのは“考え方”だと思います」。
(次回に続く・次回更新は5月14日)

やまもとまさ
プロ通算219勝、3度の最多勝、沢村賞、史上最年長でのノーヒットノーラン、50歳での登板など、記録にも記憶にも残る活躍を果たした球界のレジェンド。現在は野球解説者・スポーツコメンテーターとして活動している。ラジコン、クワガタ飼育等、多趣味としても知られる。競馬への造詣も深く、一口馬主としてアルアイン、シャフリヤールに出資する相馬眼の持ち主。
X(ツイッター) @yamamoto34masa

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