見出し画像

アルアイン出資秘話

今週は豪華メンバーが揃った天皇賞・秋。イクイノックスはどんなレースをみせてくれるのか。
ドウデュースとの再戦も楽しみですし、本格化したプログノーシスも侮れません。
シャフリヤールはといいますと、11月4日にサンタアニタパークで行われるブリーダーズカップ・ターフに出走予定。応援、よろしくお願いいたします。

※ ※ ※ ※ ※ ※

アルアインの募集があった2015年、私は開幕前に右膝を痛めてしまい、開幕から2軍調整を続けていました。出資馬を決めるタイミングはちょうど大阪遠征中。練習後に宿舎のホテルで、何度も募集動画を繰り返し観ていました。

この年はシユーマの14(ヘリファルテ)、マジックストームの14(フローレスマジック)、グルヴェイグの14(ヴァナヘイム)などが評判になっていた記憶があります。
募集動画を観ていくうちに、出資候補に浮上した馬が2頭いました。1頭がドバイマジェスティの14、そしてもう1頭がマルペンサの14。前者がアルアインで後者がリナーテです。

マルペンサはアルゼンチンのG1を3勝した活躍馬で、当時のカタログを読み返してみると「現2歳の初仔がセレクトセールで2億円超で取引されて」という記述がありました。その初仔とは2016年の菊花賞と有馬記念を勝ったサトノダイヤモンドです(余談ですが、里見オーナーは初仔がお好きなんですよね)。
当時、まだサトノダイヤモンドはデビューしておらず、今にして思えば、募集価格の4000万円は随分とリーズナブルな印象。とにかく踏み込みの深い、美しい歩様をしていました。

一方のドバイマジェスティの方はというと、「サンデーレーシング」「ディープインパクト産駒」「池江厩舎」という三拍子揃ったプロフィール。当時、ネットでは「三種の神器」なんて呼ばれていたような…。
大人気になっても良さそうなものですが、そこまででもなかったのは、馬体が小さかったからでしょう。募集時の馬体重は380キロ台だったのです。
ただ、募集動画を観てみると、惚れ惚れするような脚の運びで、私は迷わずカタログに「A」という評価を書き込みました。

確かにサイズ感は気になります。
当時、ディープインパクト産駒は大型馬の方が走るというのが定説でもありました。
募集価格1億円という高い買い物です。リスクを感じたまま出資していいものか。

本格的に一口出資を始めるにあたり、募集前に気心の知れた競馬仲間と出資検討会を行なっており、実際に、その前年にも、その仲間たちの意見も参考にしてリライアブルエースの出資を決めたという経緯があります。
この年も、大阪に集まってもらい、練習後に出資検討会を開催。各々が意見をぶつけ合い、上記の2頭に出資候補が絞られたのです。

しかし2頭ともに甲乙つけがたい。
最終的には「挙手による多数決で決めよう」という流れに。
10分のシンキングタイムを挟み、メンバー全員が再度、集まったところで私は言いました。

やっぱり、ドバイマジェスティの14にしようと思う

その10分の間に、私も考えを巡らせました。
確かにサイズは心配だけど、脚長の体型で管囲も十分。そして何より、5月1日生まれと遅生まれにもかかわらず、これだけ運動神経の良さを感じる動きをみせている。伸び代に賭けてみてもいいのではないか

こうして、ドバイマジェスティの14への出資が決まったのです。

あとで聞いてみたところ、メンバーの一人は「牧場サイドで兄(サトノダイヤモンド)の評判を聞いていたし、価格差もあるのでマルペンサの14に手を挙げようと思っていました。山本さんが決断してくださって本当に良かったです」と笑っていました。

現2歳で、リナーテの初仔であるフォルラニーニに出資を決めた大きな理由の一つが、この時の記憶です。アルアインと悩んだリナーテの仔に出資する、これはロマンがあるなぁと。

ドバイマジェスティの14は、育成厩舎に移動した段階で470キロほどに成長し、518キロでデビュー戦を迎えました。競走馬としての晩年は、しがらきに放牧に出されると、すぐに550キロ近くまで増えていて、「あの小さかった子が…」と苦笑いが出てしまうほどに(笑)。

この馬での成功体験が、私の出資馬選びのセオリー「遅生まれの伸び代重視」の確立に繋がったことは間違いありません。

(次回更新は11月7日となります)

やまもとまさ
プロ通算219勝、3度の最多勝、沢村賞、史上最年長でのノーヒットノーラン、50歳での登板など、記録にも記憶にも残る活躍を果たした球界のレジェンド。現在は野球解説者・スポーツコメンテーターとして活動している。ラジコン、クワガタ飼育等、多趣味としても知られる。競馬への造詣も深く、一口馬主としてアルアイン、シャフリヤールに出資する相馬眼の持ち主。X(ツイッター) @yamamoto34masa

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?