厩戸皇子とポーキー

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 山岸凉子『日出処の天子』の厩戸皇子は、自ら心を閉ざした人間だ。世界の誰からも理解されず、受け容れられないことに絶望して、最後には全てのコミュニケーションを諦めてしまった存在だ。その帰結として、最も加害性の少ない存在、自らを絶対に攻撃して来ない存在として、最終話においてあのお妃を選んだのだ。そうして権力政治の世界に生きることとしたのだ。
 あのお妃は、厩戸皇子にとっての防波堤であり、世界に対する壁なのだ。
 
 世界に対して完全に自己を閉ざしてしまうという点において、厩戸皇子は『MOTHER3』のポーキーに似ていると、自分は考えている。ポーキーは最後「絶対安全カプセル」の中に自ら閉じこもり、完全に外界との交渉を絶ってしまう。その本質は同じではないのか?
 厩戸皇子は少女漫画の主人公なので、そのビジネスモデルの都合上、複数の女性にもてるイケメンに設定されており、ポーキーはRPGにおける敵役、主人公の引き立て役なので、滑稽で無様で醜悪な人物として描写されている。両者の差異はただそれだけだ。


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