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【Q7.日本の懸垂式モノレールに1日で全て乗る】2.湘南モノレール完全乗車

 7時06分千城台駅発。朝陽の中の住宅地を走り、都賀駅まで向かう。


 7時13分、モノレール都賀駅着。千葉みなと方面へ去っていくモノレールを見送る。地上を走る総武本線を眼下に見下ろす。改札窓口の駅員からスタンプを借りて押す。



 JRの都賀駅の窓口でも、同様にスタンプの有無を尋ねると「旅の記念になるようなものではございませんが……」と謙遜しつつ小さな長方形のハンコを貸してくれた。特に何のイラストも無く、素っ気なく「都賀駅訪問記念」と文字で書かれているだけのものだ。気に入る。使われることが少ないハンコに出番があったためか、駅員も何だか嬉しそうに見えた。


 7時23分、都賀駅発。総武本線各駅停車、千葉行き。特に何も考えずに、先頭車両に乗る。通勤時間帯のためか、車内はそこそこ混んでおり、座ることは出来ない。


 7時29分、千葉駅着。JR千葉駅は、成田や銚子方面へ向かう総武本線と、内房・外房線との合流・分岐駅だ。そのため、駅の南半分が二股に分かれた、複雑な構造をしている。自分はこの駅の構造に全く無知であったが、奇跡的に乗り換えが上手くいく。駅到着時に最も北側に位置する先頭車両に乗っていたため、ホーム間の移動が極めてスムーズにいき、二分後に発車する総武横須賀線快速の、上り列車に乗ることが出来たのだ。これは外房線からやってきた車輛だ。

 7時31分千葉発。総武横須賀線快速、大船行き。私自身の次の下車駅も大船なので、実に丁度良い。
 他人と身体が接触するほどでは無いが、混んでいる。座ることが出来ない。私の前のロングシートの座席には、白髪の中年女性が座っている。どの駅で下車してくれるだろうか?
 快速は稲毛を経て花見川を超える。津田沼手前の車両基地を眺め、千葉市を出る。市川を過ぎて、川を渡って都内に入り、車窓にはスカイツリーの姿が見られるようになる。女性はイヤホンをかけて眼を閉じて眠っている。時に腕を組んで俯いて眠り、また時には天井をむいて無防備に大きく口を開く。不意に覚醒しては周囲を見回し、再び眠りに着く。


 錦糸町辺りから、少しずつ降車客が増え始める。それに伴い、立ち客の中で幸運な者、ポジション取りが上手い者は着席していく。馬喰町、女性はまだ降りない。新日本橋、まだ降りない。何と、東京駅に着いても、変わらず座り続ける。結局自分が座れたのは、新橋駅でのことだった。四〇分ほど立ち続けていただろうか。足が痛い。
 女性は結局、品川で降りて行った。品川駅の降車客は非常に多く、恐らく東京駅を上回る。新幹線に乗り換えるにも、羽田に向かうにも、東京駅より品川駅の方が好都合であるからだろうか? 総武横須賀線の東京駅ホームは地下深くにあり、品川駅ホームは地上にある。
 
 9時08分大船着。第二の目標、湘南モノレールの大船駅に向かう。この駅のスタンプは、駅構内に予め設置してある。押す。


 湘南江の島行きの三両編成が、駅ホームにて待機している。車内は千葉都市モノレールのようなロングシートではなく。2×2列の縦列席となっている。高級感がある。車窓も眺めやすい。車両間の移動が禁止されているのは、千葉都市モノレールと同様だ。

 9時21分、大船駅発。大船駅前の市街地と車道を見下ろしつつ、右に大きくカーブしつつ進む。急カーブが多いのは千葉都市モノレールと同様で、だからこそモノレールという規格の特性が生きるのだが、このモノレールはそれに加えて高低差が激しい区間が存在する。通常は普通の高架を走っているのだが、場所によっては地上ギリギリにまで高度を下げる。この路線が走る三浦半島が、いかに急峻な地勢であるのかが、体感できる。加えて、モノレールが曲線と勾配に強い乗り物であることを実感する。 


 そしてトンネル! 湘南モノレールは、三浦半島の丘陵を貫くトンネルの中を幾度か走る。東京モノレールの終点付近は、羽田空港の地下を通る地下鉄のようになっているが、山岳トンネルを走るモノレールは、非常に珍しいように思う。山岳鉄道の趣きが少し感じられ、テーマパークのアトラクションのような面白さがある。  
 実際に、車内の子供達は、この公共交通をそのように楽しんでいる様子だ。運転席のすぐ後ろには、小学校高学年ぐらいの、男女混合のグループが貼りついている。社会人の正月休みは終わっているが、学生の冬休みはもう少し続く。おそらく、残り少なくなった冬休みに、遊びに出かけたのだろう。クラスの中のリア充グループかもしれない。彼ら彼女らは、思春期の入口に、少しだけ差し掛かっているのかもしれない。

 駅間隔は短く、小刻みに加速と停車を繰り返す。どの駅でも、少しずつ乗り降りする客がいたように思う。西鎌倉駅から、外国人の家族連れが乗車してくる。片瀬山駅で、テニスラケットを携えた中年女性が降りる。
 明確に通勤通学路線である千葉都市モノレールと、江の島エリアの観光路線としての役割も併せ持つ湘南モノレールとの差が、車内の客層にも表れているのかもしれない。ただ、今朝私が乗った千葉モノレールは、始発から通勤時間帯開始時の列車であり、現在乗っている湘南モノレールは、午前九時を過ぎた下り列車である。比較としては正確ではない。同じ通勤時間帯の両者を比較する必要があるだろう。
 車窓の殆どの部分は、丘陵地帯に造成された住宅地、もしくは丘陵そのものが占める。海も、見えないことは無いが「湘南」の語感からイメージされるほど多くは無い。青よりもむしろ緑が多い。

 最後のトンネルを抜けると、すぐに終着駅、湘南江の島だ。9時36分着。この時をもって、湘南モノレール完全乗車を達成した。


 駅員にスタンプの在り処を尋ねると、改札外とのことだった。いずれにしても、不正乗車を避けるために、一旦改札の外に出るつもりだった。出てスタンプを押す。
 湘南江の島駅は、頭端式ホームとなっている。よって千葉都市モノレールのような、空中でブった切られた殺風景な構造物は見られない。


 江の島エリアに来るのは初めてなのだが、周囲をゆっくりと散策する時間は、残念ながら今日は無い。少し歩いた所に、江ノ電の駅があることは事前情報で知っているが、今回は完全にスルーだ。周囲の写真を数葉撮影し、すぐに駅に再入場する。来た道をそのまま速やかに引き返し、次の目的地を目指さなければならない。

湘南モノレール完全乗車までの行程表。黄色部分は、前回乗った千葉都市モノレールからの移動行程です。

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