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古代の医療はめっちゃ意地悪! 君も死んだ目に絶対になる! 『ヒポクラテス』のご紹介。


みなさんキャッチーですか。ぬんです。



つってね! 突然ごめんなさいね! ちょっと前通りますよ!

私、ぬん(Twitter:@be_catchy)と申す者でして!
翻訳・編集・ルールライト・紹介記事作成等、ボードゲームに関するあれやこれやをお仕事にしています。

ある日、私が日課のTwitter徘徊をしていると、ポンと鳴り響くDM通知!
見てみれば、今をときめく国内メーカー・ふるりん本舗さんからじゃないですか!



ふるりんさん「ぬんさん初めまして! ボードゲームの紹介記事を書いていただけると聞いたのですが!」

ぬん「初めまして! こうこうこういう条件で承ります! どないでしょう!」

ふ「是非お願いします! で、書いて欲しいのが5タイトルあるんですが」

ぬ「ふーんなるほど5タイトル……って5タイトルもですか!?



というわけで、「ふるりん本舗さんの既発タイトル5作について紹介記事を書いていこうプロジェクト2022春」の幕開けだ!
極力あいだを空けずに、頑張って連載(?)していきたい心持ち!


本日はその第1弾!
2021年12月にリリースされた『ヒポクラテス 多言語版』について、

・ざっくりどんなゲームなのか
・ざっくりどんなところが面白いのか

について書いていきたいと思います。
よろしくお付き合いください。


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ヒポクラテス/Hippocrates
Alain Orban作
1~4人用/12歳以上/90~120分



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タイトルになっている「ヒポクラテス」は、古代ギリシアで活躍したお医者さんの名前です。
後の医学にちょっとあり得ないくらい多大な影響を与えたことから、「医学の父」という二つ名が付いています。

彼以前の医学って、言ってみれば宗教的行為だったんですね。
「お腹が痛いんですけど…」
「あー神罰ですね。いっちょ祈っときましょう」

的な。

しかしそこに、「いや違うんだよ」と。
「病気っつーのは神々の与え給うた罰でもなんでもなくて、かかっちゃうときはかかっちゃう、自然発生的なものなんだよ」と異論を唱えたのがヒポクラテスさんというわけ。偉大すぎる。

彼がいなければ、我々は未だに痛むお腹を抱えながら、神社・仏閣に駆け込んでいたかも知れません。危なかったですね(?)


そんなヒポクラテスさんも、いよいよ人生の終わりを迎えようとしています。
その想いを継ぐのが、他ならぬ皆さんというわけですよ!
医療チームを率いて、高い志で患者さんの病気を直すことで、ヒポクラテスの後継者を目指しましょう。



というわけで、何をやっていくかと言えば、

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患者さんを受け入れる!

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お医者さんを雇ったり薬を買ったりする!

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お医者さんと薬のちからで患者さんを治す!

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患者さんの治りっぷりや、お医者さんの活躍っぷりに応じて勝利点を得る!

以上だ! シンプル!
4ラウンドやって、最も多くの勝利点を獲得したプレイヤーの勝利です。



早速、ラウンドごとの流れを見ていきましょう~~ということで、まずは「患者さんの受け入れ」から。

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メインボードの下部には、患者さんタイルが18枚!
各タイルには、その患者さんを治すために必要な薬や、入院時に持参してくれる入院金、退院時にもたらしてくれる勝利点などが示されています。

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患者さんのチェックが終わったところで、この特殊なダイス6個をじゃらっと振ってみましょう。

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すると、ボード下部の18人の患者さんのうち、6人の患者さんにスポットライトが当たる。
今回はこの6人を皆で取り合っていくことになるんだね!


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じゃあどんな風に取り合っていくのかと言えば、自分の受入マーカーを使います。

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受入マーカーが最も左にあるプレイヤーは、任意の縦列の上へとマーカーを動かし…

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そこにある患者さんをゲット! 自分の個人ボードの診察室へと移します。


このときの注意点は2つ!

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1つは、その縦列のスポットライトが当たっている患者さんしか選ぶことができないこと!

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そしてもう1つは、その患者さんのすぐ下に示されたボーナスやコスト! これを得たり支払ったりしなければならないこと!

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ざっと見ていただければ分かるのですが、何かをたくさん得ようと思うと、何かを失わなければならないようなボーナス&コスト設定になっています。辛そう。


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続けて、左から2番目に受入マーカーを置いていたプレイヤーが患者さんをセレクト。
この際、すでに他の人が選んだ縦列には入ることができません。

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全員が同じ要領で1回ずつマーカーを動かしたら…

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マーカーの並び順が変わってるじゃんね???
次はこの新たな順番で患者さんを選んでいくってわけよ!


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同じ要領で2周目行きましょう。
患者さんを補充することなく、ダイスをすべて振り直します。

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すると、患者さんがいないところにスポットライトが当たっちゃってる列みたいなのができるわけさ。

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この列を選んだ場合は、その空きスペースに示された報酬のみをゲットします。
患者さんは付いてきませんし、スペース下のボーナス&コストも参照しません。

この感じを、全員が3回ずつマーカーの移動を行うまで繰り返します。
これで患者さんの受け入れがおしまい。

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すると、自分の個人ボードの診察室には、受け入れた患者さんが1~3人いるはずです。
患者さんたちは、示されている入院金をこの時点でプレイヤーにもたらしてくれます。嬉しいね。


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いただいた入院金を使って何をするかと言えば、まずは現在雇っているお医者さん全員にお給料を払います。
ゲーム開始時に雇っているのはヒポクラテスさん1人だけなので、1ラウンド目は彼のぶんの給料を払えばOK。

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「じゃあ給料いくら払えばいいのよ」というときに参照するのが、評判というパラメータ。
評判が高ければ、給料はお医者さん1人につき1金でOK!
低ければ2金、3金、4金、5金とどんどん高くなっていくよ!
お医者さんたちも、評判の病院でなら喜んで働きたいんだね。


給料支払ってもまだお金残ってる? 残ってるよね?
新しいお医者さん雇ったり、お薬買ったりするぞ!

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今度はメインボードの上部を使います。

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お医者さんタイル1枚と、お薬が描かれたタイル1枚が縦に並んでセットになってるんですね。これが全部で6セット。

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ここでの手番順は、評判が高い順です。評判超大事じゃん!
好きなセットを1組選び…

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お医者さんだけを買うか、お薬だけを買うか、両方買うかを選びます。

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お医者さんを買うと、自分の医療チームに加わってくれます。
タイルに示されているお金を払うわけですが、これはあくまで契約金のようなもので、お給料は毎ラウンド支払わなければならない点に注意です。

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お薬を買うと、ストックから対応するお薬トークンをゲット。

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で、お医者さんとお薬の両方を買うと、そのセットの下部にあるボーナスタイルがおまけとして付いてきます。
これがまた強いんだな!

てことで極力セットで買いたいわけですが、両方共を買うとなるとお金がめちゃくちゃ要るので、すんなりとは行かないねという感じです。


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これを評判の高い順に1回ずつ行っていくわけですが、誰かが選んだセットはもう選ぶことができません。選択肢バンバン減っていくな!



全員が手番を終えたら、いよいよ本丸、患者さんの治療です。

治療の要件としては、

・必要なお薬が揃っていること
・そのお薬を処方できるお医者さんがいること

の2つです。

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実際にやってみましょうかね。

青のお薬1個、緑のお薬1個、紫のお薬2個を必要としている患者さん。
お薬トークン自体は、種類も数も問題なく揃っています。

これを処方できるお医者さんがいるかをチェックしてみましょう。

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このお医者さんは、青と紫のお薬の処方を得意としています。

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一方のヒポクラテスさん、何色のお薬でもいけちゃうよ、ということになっています。いよっ! さすが医学の父!

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なんとなく予想がつくんじゃないでしょうか。
患者さんタイルの横にある2つのくぼみ。
ここにお医者さんタイルの出っ張りを…

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こう!

これで、左のお医者さんからは青と紫のお薬が、右のお医者さんからは緑のお薬が、いくらでも処方できる状態になりました。
紫のお薬は2個必要なわけですが、処方できるお医者さんは1人いればいいんだね。

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手元のお薬トークンを患者さんの上に乗せて、これで治療がおしまい。

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治療できた患者さんは退院します。
示された勝利点をゲットできる他、1人退院させるごとに評判が1上がるぞ。

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退院させた患者さんは裏返しておきましょう。
あ、お薬トークンはもちろん使い回し不可ですよ! ストックに戻っちゃいます。

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一方、雇ったお医者さんも、自分の持てる力を存分に振るった…と満足すると、引退していきます。
具体的には、お薬が描かれたすべての出っ張りに、治療済み(裏向き)の患者さんが刺さっていることが条件です。
示されている勝利点をゲットして、引退ですよと。

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んで、問題は今回治療できなかった患者さん
個人ボードの1つ下の段に移ります。

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一番下の段まで来ちゃうと、治療が間に合いませんでしたということで、1人につきマイナス3勝利点になってしまいます。厳しい!


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ここまでやったら1ラウンドが終了!
場の患者さんやお医者さん、お薬トークン、ボーナストークン等を補充して次のラウンドへ。
4ラウンド目の終了時にゲーム終了だ。

細かい部分はちょいちょい省きましたが、大まかにはこんな感じです。



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さて、ここまで読んでくださった方の中には、「はいはい、場から色んなものを取り合った後、個人でパズルやってく感じね! よくあるよねそういうゲーム!」という感想をお持ちの方も多いと思います。

ところがどっこい、そんなありがちで終わらせないのがAlain Orbanさん(作者。代表作に、Sébastien Dujardin & Xavier Georgesと共作の「トロワ」「トゥルネー」「ブラックエンジェル」など。同じメンバーで作られた「トロワダイス」が面白くてジワジワ好きなのと、彼のデビュー作「サンティ・アンノ」も脳みそ絞り系パーティゲームでワイワイ楽しいです)よ!

「ヒポクラテス」は4ラウンドやっていくゲームなわけですが、大体後ろ2ラウンドぐらいはみんな目が死んでます。

「ここ2、3年で一番つらかった」との言葉まで飛び出すこのゲームの真のヤバさ、3つのポイントに絞ってご紹介しましょう。



ヤバさポイントその①!
パズルが直感的じゃない!


前述のとおり、患者さんとお医者さん、お薬が揃ったら各々でパズルをやるわけですが、これ結構な罠なんですよ。

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例を1つ見てみましょう。
自分の病院には、青のお薬の処方ができるお医者さんが1人と、緑&紫のお薬の処方ができるお医者さんが1人。
何色にも対応できていい感じっぽいですね。

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一方の患者さんは、「青と緑の薬が欲しいよ~」ってのが1人と、「青と紫の薬が欲しいよ~」ってのが1人。

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はいはいなるほどねと!
持ってるお医者さん2人が手を組めば、青&緑の患者さんも青&紫の患者さんも治せるはず!
お薬トークンさえ十分にあれば、全員晴れて退院や!

って思うじゃないですか。
じゃあ実際にやってみますね。

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まずは1人目の患者さん。
左のお医者さんが青の、右のお医者さんが紫のお薬を処方して、無事に退院できそうです。

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同じ雰囲気で2人目もサクッと…

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ってあれ?????

そう!
左のお医者さんから青のお薬をもらうと、右のお医者さんから物理的に紫のお薬もらえないんですよ!

使ったスロットはずっと埋まりっぱなしになり、お医者さんの再配置ができない仕様のため、なんかいけると思っても全然いけないんですよね。

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数人のお医者さんで数人の患者さんを治療する終盤ともなると、脳みそどっか飛んでいっちゃいそうです。最高。



ヤバさポイントその②!
リソース管理の意地が悪い!

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先程の、いけると思ったらいけなかった例に戻ってみましょう。
2人目の患者さんを治療したければ、緑のお薬を処方できるお医者さんがもう1人必要、ということになります。

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しかし、先述のとおり、お医者さんを手元に持ってくるためには契約金がかかり、雇い続けるとなるとお給料もかかります。

こうやって書いているうちに、心のなかでお金の重要性が段々増してきました。


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ところが、お医者さんに賃金をかからなくする方法がある。
お医者さんは、すべての出っ張りに患者さんが刺さると引退するんですよね。
たっぷりの勝利点を残して。

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ということで、出っ張りを埋めるために患者さんをどんどん受け入れていくわけなのですが…
患者さんを治すためには何が必要か。お薬が必要なんですよ。

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いくらパズルが上手かろうが! お薬が足りないと何もできない!
というわけで、お薬の重要性も増してきます。



ところが、そもそも論としてもっと大切なことがあります。
適切な種類のお医者さんやお薬が手に入らなければ、本当にいよいよ何もできないのでは…?

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では、お医者さんやお薬を獲得する順番はどのように決めるのか。
そう、評判です。
評判が低ければ選択肢がゴリゴリと削られていき、結果的に非効率な運営を強いられます。

さらに、忘れちゃいけないお医者さんに支払うお給料
これも評判に依存するという話がありました。

というわけで、評判の重要性が満ちに満ちてきます。



お金とお薬と評判
ずっとキッツキツで、喉から手が出るほど欲しい3大ファクター。
なんと、この3種類共を少しまとまった量手に入れることができる、究極のパワースポットがあるのですよ。

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そう、患者さんを受け入れるときのボーナス! これです!

患者さんの受け入れ、もちろんどの患者さんが欲しいかも超大切なのですが、どのリソースを確保したいかも考えながらやっていかなければなりません。

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まあ確保できるだけならいいのですが、スペースによっては、お金や評判をコストとして払わなければならないことも。

患者さんの受け入れ争いの熾烈さ、彩度が上がってきたのではないでしょうか。
1つの選択に乗せる想いが大きすぎて、みんな段々目が死んでいくとそういう寸法です。最高。




ヤバさポイントその③!
運命がいたずらに心を殺しに来る!

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そんな熾烈な患者さんの受け入れ、忘れちゃいけないダイスが絡んでるんですよね。絶対許せねえ。

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既に患者さんがいないスペースにばかりスポットライトが当たってしまったときの阿鼻叫喚っぷりは、「ヒポクラテス」あるあるだと思います。


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その運命をねじまげるために、受け入れ時のボーナスとしてゲットできる「助手」という要素があります。
端的に言えば、スポットライトの位置を動かしたり入れ替えたりするやつ。

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が、誰かが自分のためにやったスポットライトの入れ替えが、他の誰かに致命的に刺さることなんて日常茶飯事なわけで。
これもまた「ヒポクラテス」阿鼻叫喚あるある。


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で、さらにヤバいのがお医者さんを雇う時よ!

長くなるので詳細は割愛しますが、「今回場に望ましいお医者さんが並ぶかどうかはガチャだよ! それはそれとして、こっちに表向きのお医者さんを4枚用意したよ! ガチャに外れるかもしれないし、とりあえず2金払って表向きのやつどれか予約しとかない? 予約しといて雇わないのは自由だけど、そん時も2金は返さないよ!」みたいな制度があるのよ。

か、完全におちょくられている…!


というわけで、ガチャの結果が公開されたときの阿鼻叫喚も「ヒポクラテス」あるあるです。最高。



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いや~~どうですか『ヒポクラテス』

直感的じゃない意地悪パズル!
その達成を困難にする意地悪リソース管理!
さらにプレイヤーをおちょくってくる意地悪運命要素!
そら目も死ぬわって感じです。

少なくともガードレールがないのは事実で、序盤にプレイングを間違うと、とても辛い2時間弱を過ごすことになってしまいます。


でもですね~~楽しいんですよ『ヒポクラテス』。
ここまでとがってて意地悪で辛いゲームって、令和のこの世の中ではもうなかなかお目にかかれませんもん。

じっとりといやらしいインタラクション!
頭を抱えながらもなんとか掴み取る希望の光!
ルール量もそこまで多くなくて(BGGの「ルールの複雑さ」を表すWeight値は5点中2.87点。近年のヒット作で言えば、『エバーデール』や『マウンテンキング』辺りとそう相違ない数字です)、シンプルな土俵の上で、思う存分泥臭いゲーム体験が味わえます。

最近のお行儀の良いゲームにちょっと疲れてきちゃったなって方や、ある程度ボードゲームを色々遊んでみて、そろそろ変わり種にも手を出してみたいなって方に、強くおすすめしたいです。


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1つ注意すべき点を挙げるとすれば、メインボードが親の敵みたいに大きいことでしょうか。
さらに人数分の個人ボード+パズルをやるスペースも必要となるため、場所によってはプレイに工夫が必要となるかと思います。
こんなとこでまで意地悪せんでも。



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そんな『ヒポクラテス』、ふるりん本舗さんより、日本語ルールブックを含む多言語版が好評発売中だ!

https://fruhling.stores.jp/items/61b9dcc2d26fa562b5c95ad8

税込7,590円、得られるプレイ体験と豪華な内容物を考えれば、お手頃プライスだと思いますよ!
なんせあんなに大きなメインボードが入っt(やめなさい)


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というわけで、めちゃつらドン尖り医療パズル『ヒポクラテス』、ご紹介させていただきました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

「ふるりん本舗さんの既発タイトル5作について紹介記事を書いていこうプロジェクト2022春」はまだまだ続きます~~次回もご期待ください!

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*当ポストはふるりん本舗からの依頼により有償で作成されたPR記事です。

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