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On(オン)は何がすごいのか?そして、今後はどうなる?

□飛ぶ鳥を落とすとはこの事か

飛ぶ鳥を落とす勢いとは、まさにOnの現在成長のことを言うのではないか

今から10年前の2010年にスイスで誕生、オリヴィエ・ベルンハルト、デビッド・アレマン、キャスパー・コペッティの3人がスタートさせたそのブランドは、2019年現在でスイスランニング市場では4割、最大市場であるアメリカでも6.6%のシェアを持つ、まさに時代の寵児、今、最も勢いのあるブランドになったと言えよう。

特にブランドの間のシェア争いが激しいアメリカ市場は、ドメスティックなブランドが強く、その中でもランニング専業のBrooksが王者だ。アディダスやプーマも苦戦している市場で、同じヨーロッパのブランドがこれだけ参入できていることはその勢いを象徴していると言って良いのだろう。

日本での人気も凄い。SNSでの広告も見ない日はないし、ランナーの足元にも確実に定着し始めている印象。第100回通称箱根駅伝でも着用する選手が出ることは間違いない状況だ。

□Cloud Tec(クラウドテック)誕生

創業者の3人のうちの1人、元プロトイアスリートであったオリヴィエ・ベルンハルトが、現役時代の経験を踏まえて、怪我のない、かつ爆発力のあるシューズを開発したいということから、ゴムホースから着想されたCloud Tec(クラウドテック)というこのOnを象徴する構造が生まれた。

On最初のランニングシューズであるCloudsurfer(クラウドサーファー)に搭載された、それは、いわゆるミッドソール地面の摩擦から守るアウトソールラバーにクッション機能を搭載するという斬新なアイディア、そしてそのデザイン性も際立ったていた。

この唯一無二のデザインは、その後、シューズミッドソール内に空間があるようなデザインに進化していく。

現在はアウトソールにCloud Tecを採用したモデルは消滅したが、AI 生成技術最適化技術で作られた新技術Cloud Tec Phase(クラウドテックフェーズ)が2023年に誕生。その機能性がはじめて採用されたのもCloud Surfer(クラウドサーファー)であった。

□Speed Board(スピードボード)もOn象徴の技術

OnがOnである構造は、もちろんCloud Tec(クラウドテック)もそうであるが、Speed Board(スピードボード)の存在こそ、ランニングシューズの構造的な有意性を支えている。

それは、ソールユニットとアッパーの間、履き心地を大きく左右するラスティングという部分にサンドイッチするカタチで存在する樹脂状のプレートだ。

Speed Board(スピードボード)は、樹脂ボードの硬度を変えて、時にはガイドを強く、時にはしなりが出るように調整されて、着地時の安定感、やガイド、接地感覚の要となる機能だ。

シューズをひっくり返して見ると、それが裏側からチラッと見えるそのデザイン性も素晴らしい。デザインは究極、機能美と一体化する、まさにそれを具現化した構造であると言えよう。

□Cloud Monster(クラウドモンスター)の登場

とは言え、この勢いはゲームチェンジャー、Cloud Monster(クラウドモンスター)の登場が大きかった。

このモデルから同社独自ミッドソールフォームであるHelon(ヘリオン)が劇的にアップデイトされ、ファーマーサイド(硬め寄り)印象のクッションは、Cloud Tec(クラウドテック)が持つ”もうひと押し”あるような推進力はそのまま、劇的にソフトサイドのクッションに変わった。

『Onは普段履きには最高』から『Onは普段履きにもいい』に変えたモデルだ。

シューズ業界のみでなく、ファッション業界の批評家たちも、デザイン性と機能性のバランスが保つ付加価値、そしてそのプライスレンジは、高級ブランドのブランド力を持ってしても叶わないスニーカーであると称賛されて、まさに大ヒット作となり、Onの知名度をグッと広げたモデルになったのがCloud Monster(クラウドモンスター)であった。

□そして、止まらない。挑戦を続ける2023年

まさに心配になるぐらいの急成長を成し遂げるブランドは、それでもOnは止まらない。フルスペックを天然素材キャスタービーン由来のPEBA樹脂で作成、ループ使用できるサブスクスタイルのシューズCloud neo cyclone(クラウドネオサイクロン)を発売。サステナブルなテーマも忘れない。

最近でも、AI最適化技術を利用した新技術Cloud Tec Phase(クラウドテックフェーズ)を発表、ドミノ倒しのようなスムーズな重心移動を目指したOnの新しいライド感の提案があったばかりだ。

また、アスリートへのアプローチも忘れてない。アメリカの元オリンピアンであったデイゼン・リッツエンハイン率いる『On Athletic Club(オンアスレチッククラブ)』は、いいコーチといい素質の選手、そして、良いシューズがバランス良く噛み合った印象で、昨今、多くのオリンピック代表を輩出ししていることも重要な要素だ。

トラックスパイクやCloudboom Echo3(クラウドブームエコー3)のような技術革新はブランドの技術を支える重要な部分だ。

□今後Onはどうなるのか?

さて、この勢いは続くのか?それとも、かつて数多あったトレンドに過ぎないのか?

ひとつだけ言えることは、このデザインは模倣することが困難であること、それは大きな強みだと言えるだろう。ミッドソールにホールがあるこの特徴のあるデザインは、模倣しても多くの消費者に安易に模倣と判断される、まさに唯一無二な独特なものであるからだ。

その前を突っ走っていたマキシマルスタイル、ロッカースタイルの先駆者HOKAは、その要素を多くブランドに吸収されて、消費者の目にははっきり分からない“HOKA包囲網“を引かれている、そんな状況とは対照的だ。

いわゆる”On潰し”のプロダクトは、とても困難であることは間違いない。このデザインが輝き続けるのか、いなかは、現状消費者次第なのかもしれない。

□Onはどこを目指すのか、どこに行くのか

ただスケールが大きくなっていく中で、シンプルだったラインナップに“ごった煮感“も出てきていることは否めない。ロジャーフェデラーのテニスシューズしかり、低価格帯の汎用モデルなどモデル数が激増しているのはマイナス面でもある。

結局、これだけ品番が増えると個性が強いクラウドテックデザインはお互いに“喧嘩“し合う。つまり、どれもこれも同じ品番に見えてしまうという面も出てきていると言っていい。少なくとも消費者の目からはそうだ。

そういった面もあって、Cloud Tec Phase(クラウドテックフェーズ)はそれを脱却させたい目的もあるだろう。

また、どこを目指すのか?それも気になることだ。
NIKEを目指すのか?Adidasになるのか?

結局、No.1を目指すのか、今のようにオンリーワンでいるのか、目指す舵取りで今後は見えてくる。オンリーワンで居続けることはとても難しいこと。

ただ、現時点で少なくとも言えることは、この勢いはしばらく続くこと、これは間違いない。

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