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派閥解体で「無敵の首相」になった岸田政権が「自民党補選3連敗」に沈んだ「本当の理由」

2024年04月29日(月) 髙橋 洋一
https://gendai.media/articles/-/128936?page=2#goog_rewarded

自公で候補者を立てなかった長崎3区、東京15区は
投票率が前回に比べて10%ポイント程度低下した。
GWも影響したのか自公票は伸びず、
一方で他候補は自公票を取り込めなかった。
なお島根1区は投票率はほぼ前回並だったので自公が力負けしたのだろう。

長崎3区、東京15区は野党の間の争いだったが、
結局立民が野党第一党の意地と組織力を見せた。

今回の補選は、
少なくとも島根1区では岸田文雄政権に有権者が審判を下す機会になった。「政治とカネ」に加え、震災対策、経済政策など課題は山積している。

政治とカネをめぐる問題おいて「お公家集団」といわれた宏池会であるが、岸田首相は
安倍派、二階派、茂木派を解散させたうえで麻生派を「温存」し、
「大宏池会」の結成に成功した。

これで党内闘争に勝利を納めたわけだが、
岸田首相は他人に厳しく自分には甘いことを世間にさらしてしまった

震災復興はなぜ遅れたか

元日に発生した能登半島地震では、
ボランティアとして被災地入りを重ねているアルピニストの野口健氏は
「復興の遅れ」や「東京と現地の温度差」を指摘する。

筆者は、復興の遅れについて、
昨年度に復興補正予算を出さなかったからと見ている。

気象庁の震度データベースで1919年以降、
震度7を記録したものを調べると、
1923年9月1日関東大震災、
1995年1月17日阪神淡路大震災、
2004年10月23日新潟県中越地震、
2011年3月11日東日本大震災、
2016年4月14、16日熊本地震、
2018年9月6日北海道胆振東部地震が起こっている。

その後の財政対応を見ると、
1995年阪神淡路大震災のとき
1兆223億円の補正予算が2月24日閣議決定、28日国会で成立。

2004年新潟県中越地震では、
1兆3618億円の災害対策費などの補正予算が12月20日閣議決定、
2005年2月1日に国会成立となっている。

また、2011年の東日本大震災では、
4兆153億円の補正予算が4月22日閣議決定、5月2日国会成立した。

2016年熊本地震では、7780億円の補正予算が5月13日閣議決定、
17日国会成立。

2018年北海道胆振東部地震では、
他の豪雨災害などとともに9356億円(地震への対応は1188億円)の補正予算が10月15日閣議決定、11月7日国会成立という前例がある。

こうした過去の前例をみると、
例外なく震災発生後1ヵ月少しで
災害対策費などの名目で補正予算が作られた。
しかし、今回は予備費対応だった。
予備費対応は、
各省で詳細な帳簿管理が必要になるなど
手続きが煩瑣でまとまった政府支出に不向きだ。

財務省はどうみているのか。
4月9日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会を開き、
能登半島地震の被災地の復旧・復興について、
将来の需要減少や維持管理コストも念頭に置き、
住民の意向を踏まえ、十分な検討が必要だとしている。

震災復興について、
よりによってコスト論を持ち出したのかと、
元財務官僚の筆者は呆れてしまった。
被災地の多くが人口減少局面にあることも議論されたらしい。
あえて極論を言えば、能登半島のような過疎地では、
復興のための財政支出を無駄と
財政当局は認識しているのではないかと邪推してしまいそうだ。

さすがに、財務省のこの意見は酷い。
石川県の馳浩知事は、11日の記者会見で
「最初から『上から目線』でものを言われているようで、大変気分が悪い」などと述べ、不快感を示した
ちなみに、馳知事は、1月10日の年頭記者会見で、
能登半島地震からの復興のため政府に
「数兆円規模の補正予算の編成を1カ月以内にお願いしたい」
述べていた

日銀が「動いてはいけない」ワケ

こうした政府の「渋ちん」な姿勢は、
日銀の金融政策にも間接的に影響を与えているだろう。

3月19日の金融政策決定会合で日銀はマイナス金利の解除を決めた。
これは金融引き締めであり、
政府の財政緊縮と表裏一体である。

インフレ目標は2%であるが、
3月の利上げ直前、2月27日公表の1月のインフレ率は、
いずれも前年同月比で消費者物価総合指数2.2%、
生鮮食品を除く総合指数2.0%、
生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数3.5%だ。
この程度で、本格的なインフレとは言いがたい。

まず、インフレ目標の2%はプラスマイナス1くらいの幅がある。
それに加えて、金融引締めは遅れて行う、
いわゆるビハインド・ザ・カーブの運営なので、
少なくとも4%くらいまでは動くべきでない。

特に、コストプッシュの場合には
インフレ率の上昇が継続的などうかを見極めるために、
すぐには動かないのだ。

今の日銀は、今年1月の日銀展望レポートで
消費者物価指数(生鮮食品を除く)の前年比は2.4%と
昨年10月の2.8%から下方修正されているので、
こうした見通しからも、筋論としては動いてはいけない。

なお、アメリカのインフレ目標は、
コア個人消費支出価格指数(対前年同月比)でみていが、
金融引締めを開始した2022年3月のコアは5.4%。
金融引締めにより、その後一時上がったが
すぐにピークアウトし低下に転じて11月コアは3.2%になっている。
この動きは、まさに金融引締めは遅れて行う、
ビハインド・ザ・カーブだ。

なぜ、日銀とFRBに違いがあるのか。
そのため、まずそれぞの経済見通しを見てみよう。

4月26日に日銀より公表された経済・物価情勢の展望では、
消費者物価指数(除く生鮮食品)の対前年度比について、
政策委員の見通しは、
2023年度2.8%、
2024年度2.8%、
2025年度1.9%と、
インフレ目標の範囲内といってもよく、
物価高騰の問題は見えない。

また、実質GDP成長率は、
それぞれ1.3%、0.8%、1.0%と
1月段階より下方修正されている。

6月解散で「補選の再来」が起こるか

また、3月20日のFRBより公表されたFOMCによる経済見通しでは、
インフレ率(個人消費支出デフレータ)について、
2024年2.4%、
2025年2.2%。
実質GDP成長率では、それぞれ2.1%、2.0%。

さらに、日銀にはない失業率見通しもあり、
それぞれ4.0%、4.1%となっている。
失業率が下がらないのは
失業率がほぼ下限近くになっているからだろう。

日銀もFRBもともにインフレ目標は2%である。
インフレ率の見通しでは、
両国に大きな差があるとは言えない。

しかし、日銀は3月に利上げをしたが、
さらに植田総裁は追加利上げの意向を隠さない。
一方、FRBは、年内に3回利下げするとの見通しを明らかにしている。

日銀とFRBの一番大きな相違点は、
経済見通しにも表れているが、
雇用つまり失業率を考慮するかしないかだ。

2023年2月13日付けの現代ビジネス
岸田政権のサプライズ「植田総裁」人事で、
これから起こることを予言しよう《高橋洋一の視点》
〉で
指摘してきたが、
植田総裁は雇用より金融機関経営を優先する。
そのため、ビハインド・ザ・カーブを無視して利上げに前のめりになる。

日銀の主たる目的は、
日銀法においては「物価の安定」である。
これは日銀法2条に規定されている。
物価の安定が
二重の責務(物価・雇用の安定)から雇用の確保につながるのは
FRBを含む世界の中央銀行では常識だ。
つまりFRBなどの先進国中央銀行固有の目的といえば二重の責務となる。

しかし、日銀は
雇用について、明示的に言及しない。
それが経済見通しにもでている。
FRBは法的根拠なしでも歴史的に二重の責務を負っている。
日銀も二重の責務のために経済見通しで失業率を加えるべきだ。

冒頭に述べた通り、岸田政権は補選3連敗だ。
なおも有力派閥解散した自民党内で「岸田降ろし」の兆候はまだない。
それどころか、6月解散のために、
自民党で夏の活動費の支給を前倒しするという観測も出ている。

そうなった場合、島根1区の再来が起きるかもしれない。
保守王国で、財務省候補で島根1区が負けたのは、
政策論的には、震災対策と経済が無関係ではないだろう。

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岸田派:宏池会

宏池会  宏池政策研究会
1957年6月に池田勇人を中心に結成
前身 自由党(吉田派)
吉田茂の直系の弟子である池田勇人によって創立されて以来[11]、
大平正芳・鈴木善幸・宮澤喜一・岸田文雄と5人の内閣総理大臣・自民党総裁を輩出
宏池会 歴代会長

大宏池会構想

池田勇人が旗揚げた宏池会から分かれた各派閥の再合流構想を指す。
2022年現在の宏池会(岸田派)、志公会(麻生派)、有隣会(谷垣グループ)を対象とする。

宏池会系派閥

2008年5月の古賀派・谷垣派合流前

2008年5月の古賀派・谷垣派合流後

  • 古賀派宏池会) 62人(衆議院51人、参議院11人)

  • 麻生派為公会) 20人(衆議院16人、参議院4人)

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麻生派:志公会

麻生太郎 麻生太郎政策集団
ルーツは、当時の宏池会会長宮澤喜一による
加藤紘一への派閥会長(後継者)指名に反発し、
脱退した15名の反加藤の宏池会所属議員らで結成された「大勇会」である。
大勇会時代は、理念・政策よりも
反加藤という人間関係で集まって成立した派閥である。
そのため、領袖は親中派でハト派の河野洋平であるものの、
派のメンバーは麻生を筆頭に親台湾派のタカ派議員がほとんどで、
理念・政策的な明確な接点はなかった
志公会 歴代会長

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安倍派:清和政策研究会

清和政策研究会
1979年1月24日に福田赳夫を中心に「清和会」として結成された[1]。
安倍晋三会長の死から13日後の2022年7月21日に開かれた総会で、
「安倍派」の名称を継続
保守本流と呼ばれる平成研究会や宏池会系3派閥に対する、
日本民主党の「反吉田茂」路線を起源に持ち、
保守傍流と呼ばれる派閥の一つである。
親米を基調としながらも自主憲法論・憲法改正論を唱え、
再軍備に積極的であるなど比較的タカ派色が強く、
冷戦期にはその反共主義志向の反映として、
大韓民国や中華民国(台湾)に独自の人脈を持った。
清和政策研究会 歴代会長

二階派:志帥会

二階俊博 
志帥会 歴代会長

茂木派:平成研究会

茂木敏充
自由党吉田茂派を起源に持ち、
周山会(佐藤派)・木曜クラブ(田中派)の流れを汲む。
吉田茂が率いた自由党の流れを汲むため、
宏池会系派閥(宏池会(岸田派)、志公会(麻生派)、有隣会(谷垣グループ))と共に
保守本流とされる派閥の1つ
経世会 - 平成研究会 歴代会長


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