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iPhone 11

アップルが「iPhone 11」シリーズ3モデルを発売したました  このうち最も低価格で標準モデルという位置づけになるのが「iPhone 11」だが、その実力はいかなるものなのだろうか? 実際に使ってみたところ、過去最高のiPhoneとまではいかないが、コストパフォーマンスは非常に高いモデルに仕上がっていました

 スマートフォンの販売が世界的に落ち込むなか、アップルのモバイルデヴァイスは、いまだにごく普通の消費者を実存的危機に落とし入れるだけの力をもっています きちんとした仕事があって養うべき家族もいる大人が、信じられないような金額のスマートフォンを目の前にして、どのモデルを買うべきか真剣に悩んでしまうのです

今年は昨年と同じで選択肢は3つある 最先端のモバイルテクノロジーを追い求めるユーザーのためには、「Pro」の名を冠した2機種が用意された。999ドル(日本では10万6,800円)からの「iPhone 11 Pro」と、1,099ドル(同11万9,800円)からの「iPhone 11 Pro Max」です

そして、それ以外の人のためには「iPhone 11」が存在します Proという言葉が使われていないことからもわかるように、最高レヴェルとまではいかないが、かなりいいスマートフォンであることには変わりありません 価格は699ドル(同7万4,800円)からで、昨年の「iPhone XR」の749ドル(同8万4,800円)よりわずかに安くなっています

 11は上位モデル2機種と同じ「A13 Bionic」プロセッサーを搭載しています カメラはProよりは劣るが、競合メーカーの主力モデルと比べれば、まったく遜色のない性能と言っていいものです アップルのマーケティング用語を辛抱強く読み解いて、その位置づけをきちんと理解すれば、11が非常に優れたモデルであることがわかるだろう

 すでに説明したように、11の価格はストレージ容量が64GBの基本モデルで699ドルです iPhoneの基本モデルは一時期までストレージ容量が16GBだったが、これではアプリをいくつかインストールするだけでいっぱいになってしまっていました このため最低容量は64GBに変更されました この上には、128GB(749ドル、日本では7万9,800円)、256GB(849ドル、日本では9万800円)があります

アップルは今回、iPhoneの旧機種の下取りを強く勧めています 古いiPhoneが手元にあれば、11の購入価格は最大399ドル(日本では4万8,630円)まで下がるが、もちろん最近の機種で状態もかなりよいことが条件になります 例えば「iPhone 8 Plus」が手元にあっても、画面が割れている状態だと11の値引きの適用外になります なお、それでも下取りに出した場合はiPhoneは「無料で」リサイクルされます(アップルは一部部品を再利用している)

11の発売に伴い、XRは基本モデルが599ドル(同6万4,800円)に値下げされます 新品のiPhoneとしては悪くない値段です

参考までに、11 Proの価格は64GBが999ドル、最大容量の512GBが1,349ドル(同14万4,800円)に設定された。11 Pro Maxは64GBが1,099ドル(同11万9,800円)、512GBなら1,449ドル(同15万7,800円)です  Pro Maxの購入を考えているなら、サイズもストレージも巨大なスマートフォンのせいで、財布の中身はかなり軽くなることを覚悟しなければなりません

 競合メーカーのフラッグシップモデルは、サムスンの「Galaxy Note10+」が512GBで1,199.99ドル(約13万円)と、Pro Maxの同サイズのモデルより低価格だ なお、Galaxyの最新モデルで最も高いのは5G対応モデルで、512GBで1,399.99ドル(約15万円)という設定になっています

 LGの「G8 ThinQ」や「V50 ThinQ」、ファーウェイの「P30 Pro」、OnePlusの「7 Pro」といったモデルは、いずれもこれよりは安いです また、グーグルの「Pixel 3 XL」にいたっては599ドル(約6万5,000円)です ただし、Pixel 3は昨年のモデルで、10月に最新版が発表されます

11は前機種となるXRとよく似ています 11もXRと同様に、フレームに酸化皮膜処理を施したアルミニウムを採用し、表裏両面が強化ガラスで覆われている アップルはこのガラスについて、iPhoneとしては最も丈夫だと主張しているが、まだうっかり落とす失敗はしていないので真偽のほどはわからないです 11は6色展開(ホワイト、ブラック、グリーン、イエロー、パープル、レッド)で、色の選択肢が多くなっています

 画面は液晶です(アップルは「Liquid Retina HD」と呼んでいる)昨年のモデルを使ってみてわかったのだが、少なくともわたしの目では液晶と有機ELの違いは見分けられませんでした このため、ディスプレイのためだけに高い金額を払う気にはなれないというのが正直なところです

これまでの液晶ディスプレイのiPhoneから11にアップグレードしても、大半の人はそれほどの違いを感じないのではないかと思います ただ、有機ELディスプレイのモデルを何カ月か使ったあとに液晶に戻ると、確かに有機ELのほうが美しいことに気づきます 液晶はすべてが何となくきつく見えてしまうのです

 大きさについても少しだけ不満はあります 11は小さめの手では扱いにくいのです 今年の3モデルでは11 Proが対角5.8インチで最小で、11は6.1インチ、11 Pro Maxは6.5インチとなっています

厚みはどれも昨年のモデルよりわずかに厚いです 多くの消費者は、バッテリー寿命のためならデヴァイスが多少分厚くなっても我慢する傾向にあるようだが、これには不満があります 

11はずっと持っていると手が疲れるし、特にランニング中は使いづらか感じました それに新機種の発売に合わせて、現行モデルでは小型の「iPhone XS」は販売終了になってしまいます 手が小さいと必然的に11 Proの購入を検討せざるを得なくなります

 もうひとつ、8より前のモデルから買い替える予定の人のために書いておくが、今年の3機種も昨年と同様にホームボタンとイヤフォンジャックがありません また、ロック解除は指紋ではなく顔認証だが、充電はワイヤレスだけでなく、従来のように電源アダプターやコンピューターと接続することでも可能です OSは最新の「iOS 13」になります

 今年の3モデルは、いずれもA13 Bionicプロセッサーを搭載しています アップルによると、史上最強のモバイルSoC(System-on-a-chip、ひとつの半導体にシステムを動かすために必要な機能を多く載せたチップ)で、CPUもGPUも過去最速です また、機械学習専用の8コアのニューラルエンジンを搭載するが、処理能力はこちらも最高レヴェルだといわれています

A13 Bionicが素晴らしいチップであることに疑問の余地はないが、正直に言ってプロセッサーのスペックにまで関心のある人がそれほどいるとは思えません 大半の消費者は、スマートフォンがもたつきなく動けばそれで満足するでしょう そして、あなたが知りたいことがそれなら、11は優れた処理能力をもつスマートフォンだ

アプリのダウンロードや切り替え、写真の編集処理はもちろん、「Apple Pay」も速く、顔認証は速度的にはそれほど変わったようには思えないが、これまでは認識できなかったような角度でも機能するようになりました 例えば、机の上に置いたままで上から覗き込んでロックを解除することもできます

一方、「AirDrop」は現段階でも信じられないほど便利で、iOS 13によって空間認識専用チップ「U1」が使えるようになれば、さらに進化するはずです 11はギガビット級LTEとWi-Fi 6にも対応します また、最新プロセッサーのおかげでバッテリー持続時間が大幅に改善するほか、画像処理の効率化によって写真や動画も画質が向上しました

 数年前からは、新型のスマートフォンで最も注目を浴びるのはカメラ機能になっています 特に大手メーカーは、どこもフラッグシップモデルの世代が2桁になりつつあるいま、消費者が買い替えを検討するときにまず思い浮かべるのは「カメラはどれくらい進化したのか」という疑問だろう

XRと比較するなら、11のカメラはかなり進化している リアカメラは広角レンズに視野角120度の超広角レンズが付いてデュアルレンズになりました 昨年の最安モデルであるXRがシングルレンズだったことを考えれば、アップルの戦略が見えてくるでしょう 11はポートレートを中心に写真を重視したスマートフォンなのだ

 XRではポートレートモードは人物の撮影だけで、ペットや物には対応していなかった。11はポートレートモードで動物や物の撮影が可能になっている また、暗い場所で写真を撮るときのためにナイトモードが搭載されたが、ナイトモードで撮影するときには指定された秒数だけカメラを固定しておく必要がある

 一方、トリプルレンズになった今年の上位モデル2機種や、競合メーカーのフラッグシップモデルとも比べておく必要があるだろう まず言っておきたいのだが、11のカメラは非常に優秀で、たいていの状況で昨年の最上級モデルより優れた性能を発揮する ただ、今年の上位モデルはさらに素晴らしい写真が撮れるということも付け加えておかなければならないです

競合メーカーの最新型も含めて、同僚のポートレートを撮らせてもらって比べたのだが、色味が最も本物に近く、また彼女の顔のそばかすや笑い皺といった細かい部分まで正確に捉えられていたのは、やはりProシリーズでした

 11に話を戻そう 暗い場所ではPixel 3のほうがいい写真になった バーのテーブルの上の花や、照明が抑えめのレストラン店内での人物撮影では、Pixel 3のナイトモードのほうがきれいに撮れる 屋外で自然光で撮影した写真では、11の控え目で自然な仕上がりより、「Galaxy Note10+」や「OnePlus 7 Pro」のコントラストを強調した人工的な色味の写真が、わたしにはよく見えた ただ、これらの機種ではオレンジ系統の色が不自然になる傾向はあります

 アップルは今年の発表会で「Deep Fusion」というカメラ関連の新機能を披露していた これは複数枚の写真を撮影後に処理して最適化し、1枚の写真を完成させるという機能だが、リリースはほかの機能より遅れる見通しです

ちなみに、機械学習を利用したこの種の新機能は、提供開始が予定より先延ばしされることがよくあります 「iPhone 7 Plus」にポートレートモードが追加されたときは、アップデートまで1カ月かかりました グーグルもPixel 3の夜間モードでは同じような状況でした

ここまでは写真の話だったが、次は動画です 11の動画撮影機能は確実に昨年のモデルを大きく凌駕しています まず、3モデルとも4Kとフレームレート60fpsでの撮影に対応します ダイナミックHDRと同じで、実際には120fpsで撮影した動画を処理しているため、できあがった動画は明るさなどが最適化されている(なお、アップルはこの機能を「Extended Dynamic Range」と呼ぶ)

写真のモデルになってもらった猫を相手に動画も撮影してみたのだが、旧機種と比べて色合いや鮮明さが明らかに優れていたし、手振れ補正機能も強化されたようです 一方、フロントカメラはフラッシュが前より明るくなり、スローモーション動画が撮れるようになった スローモーションセルフィーを略して「スロフィー」と呼ぶらしいが、これはなかなか楽しくてハマってしまいそうです

11のカメラのすごさはそれだけでも十分に驚きで、自分のなかでスマートフォンのカメラに求める新しい基準ができた もちろん、上位2機種のトリプルレンズのカメラモジュールはさらに素晴らしい ただ、アップルのデヴァイスで特筆すべきは、ハードとしてのカメラのスペックだけでなく、編集機能などのソフトウェアやアプリのインターフェースも含めた画像関連のパッケージ全体が優れている点です

最近のスマートフォンは機能が細かすぎて、うまく使いこなせないことが多くあります 例えばAndroidスマートフォンでは、広角撮影モードは木が3本並んでいるようなアイコンが使われていることが多い だが、これが何を意味しているのか直感的に理解できる人は少ないだろう Galaxy Note10+には実に17種類の撮影モードがあるのだが、アイコンがたくさんありすぎて画面上で写真の一部が隠れてしまうことすらあります

 これに対して、11ではシンプルに通常撮影か0.5倍の超広角を選ぶだけです 11 Proでは0.5倍、通常、2倍ズームの3種類になります 暗い場所では自動的にナイトモードに切り替わる(もちろん手動で切り替えることもできる) アスペクト比を変えたり、タイマーやフィルターを使ったりする場合でもメインメニューから上にスワイプすればいいだけなので、とてもわかりやすい アップル製品はハード的な性能もすごいのだが、こうしたソフト面での使いやすさにその美学が現れています

 バッテリー寿命はかなり長い 11の場合、画面が消費電力の少ない液晶であることに加え、心臓部であるA13 Bionicプロセッサーの電力効率がよくなったこと、XRやXSと比べて電池そのものの容量が増えたことも大きい(ただ、XS Maxのバッテリー容量には達していない)

参考までに、正午の時点でフル充電された11を持ち出し、午後から夜まで普通に使ってみた スマートフォンをかなり使うので通知はオンにしているし、メディアのストリーミングもする そして、画面はどちらかといえば明るい設定になっている。

すると、その日の就寝前にはバッテリー残量が56パーセントになっており、翌日10時にランニングのために家を出るときには46パーセントだった。その後、夕方に友人と夕食を食べに出かける支度をしていたときに20パーセントになって、「バッテリー残量低下」の警告が表示されました

もちろん、これだけでは判断材料にはならないだろうし、新型3機種すべてを同じ状況でテストしたわけではないただ、少なくとも個人的にはバッテリ持続時間に問題は感じませんでした

 ここまで基本的なところを見てきてわかるように、11は驚異的な最新テクノロジーが搭載されたモデルではない ディスプレイは液晶だし、リフレッシュレートも旧機種と変わらない 一部のスマートフォンなどで採用されている画面一体型の指紋認証センサーはないし、5Gにも非対応です

ワイヤレス充電はできるが、この分野では充電パッドの上に置かなくてもパッドのそばにあるだけで充電されるところまで技術が進化しているのに、11ではこの最新規格は使えない カメラに関しては、特にグーグルのPixelと比較したときに、追いつこうと必死になっているがまだ遅れている感じはします

ただ、それでも11は優れたスマートフォンだと思います 未来を感じさせるデヴァイスではないが、チップ、カメラ、バッテリーなど、すべての点において成熟の域に達しており、買い替えを迷ってきた人たちが決断を下すには十分です また価格面での強みもあります

最終的に買うかどうか検討するときのポイントは、以下の3点に集約されるはずです まずはカメラ性能、次に、アップルのエコシステムに満足しているか そして最後に、アップルのマーケティングと実際のiPhoneとの間に存在する”ずれ”を許容できるかです



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