きっと忘れてしまう、三人のこどもたちと過ごす何気ない日常(息つく間もない朝編)

夜明け頃、ふにゃあという声で目を覚まし慌てて次女を抱き上げる。
夜泣きが激しい長女がようやく深い眠りについたので、まだ起こしたくない。

まだ薄暗い部屋の中で次女におっぱいをあげる。
暖房をつけていない寝室はひんやりとして、外気に触れる肌がきゅっと引き締まる。
ふうふう言いながら必死にしがみつき、母乳を吸っていく次女をぼんやりとした頭で眺める。

数ヶ月前と比べてずいぶん重たくなったなぁ。

ゴロン

壁にもたれて授乳している私のすぐ横まで長男が転がってきた。
起きたのかな、なんて思うけれどすうすう寝息を立てている。
5歳になった長男はもうすっかり大きくなって、赤ちゃんではないけれど妹2人に私たちを取られている寂しさは感じているのだろう。毎日この授乳の時間に寝ながらくっついてくる。

そんなこともいつしか、なくなるのかな。

授乳が終わると、縦抱きにしてしばらくトントンと背中をさする。しばらくは顔を私の胸に擦りつけてくるけれど、そのうちに力が抜けてくたっとする。寝たことを確認して、そっと次女を布団へ戻す。

もうひと眠りしようかなと布団に潜り込んだ頃、夫の布団のあたりに青白い光が灯る。

夫は昔から朝型だ。
今は育休中だが、変わらず早く起きる。
これなら子供たちが起きても大丈夫と思ったと同時に意識が遠のく。

ままー、あっちいこ、いっしょに。
気がつくと目の前にちょこんと座る長女。への字まゆでこちらを見つめている。時計を見ると先ほどから30分くらい経っていた。
もうちょっと寝たかったなぁと思いながら、もそもそと布団から出て長女を抱っこする。

抱っこしたままリビングの扉を開くと夫と息子が朝ごはんを食べている。ここ数週間息子が食べ続けているのはカリカリチーズトースト。チーズとバターの香りが部屋中に広がっている。
この香りをどう感じるかで自分の体調が分かる。

今日は美味しそう。
よし、大丈夫だ。


ママ、もう僕は食べ終わるよー。
椅子から飛び降りて洗面台へと向かう息子。
食事が終わるとすぐさま歯磨きをするのが彼のルーティーン。きっちりしている。

そうしている内にぐずぐずしていた長女も目が覚めたようで、私の腕からすり抜けていく。
ごはんたべるー、たべたぁい。
椅子へよじ登り催促しだした。
好き嫌いが多くてイヤイヤ期真っ盛りの長女の食事はストレスのひとつ。

朝は少しでも機嫌よくいてほしくて、彼女の好物を用意しているがそれでも日によって当たり外れがある。
ドーナツ、バナナ、ジャムパン、ふりかけごはん。さあ、今日はどうだ?

ばなな、くーだーさぁいっ!

あぁ、良かった。
ほっとひと息ついてバナナを出した。色が茶色くなった部分と先端は嫌がるので切り取ってお皿に乗せる。
甘やかしすぎかなぁとも思うが、ほんの少しのことで機嫌が天と地ほど変わるイヤイヤ期。
グズグズに火をつけたくなくて結局ご機嫌を取ってしまう。

長女が落ち着くとようやく自分のことができるようになる。
白湯を一口飲んで洗面所へ行き、コンタクトをつけ洗顔をすませる。化粧水をつけてキッチンへ行き、食パンをトースターに入れてまた洗面所へ。

ガリガリガリガリ

シュー

コポコポ、コポコポ、コポッ

夫がコーヒーを淹れる音を聞きながらクリーム、美容液をぱぱっと塗り、さっと着替える。

チン

パンが焼けた。
バターを乗せてしばらくトースターの予熱で溶かす。
今日はタイミングがバッチリだ。
淹れたてのコーヒーとバタートーストを頬張り噛み締めていると

ふぅんぎぃぃいいいいいぃ

ああ、今日はちょっと早い。
次女が起きてしまったようだ。
パンとコーヒーをもう一口ずつ口に入れ、寝室へと向かう。

うあーーん
ぎひぃーーーっ


手足をバタバタさせながら、布団に絡みつく次女。まだ寝返りしかできない彼女は脱出しようとして逆に埋もれてしまっている。
その姿がたまらなく可笑しくて可愛い。

次女を抱き上げてテーブルへ戻るとコーヒーを飲み終えた夫が代わるよと次女を抱っこしてくれた。
育休が終わったらこれができなくなるんだなぁ。

残りの朝食をかき込み、時計を見る。
のんびりはしていられなさそう。
歯磨きと簡単な化粧をして、テレビを見ている子供たちに声をかける。
そろそろ保育園へ行く時間だ。

えー、ぼくちょっとしか見てないよ。
ぴんくのばっぐでいくー。

まだまだテレビを見たい兄と行く気マンマンの妹。この2人は性格が真反対で面白い。
何とか息子を説得し、子どもたちが準備している間に車を玄関の前に移動させる。

夫と次女を残して上の2人を保育園へと連れて行く。
ペーパードライバーだった私が毎日運転するようになったのは長女が生まれた頃から。
歩いて行くには遠い家に引っ越して仕方なくだったが今では車のない生活なんて考えられない。

子供のおかげでできるようになったことが数えきれないほどある。

10分もかからずに保育園へ到着。
マスクをつけて車を出ると荷物を両肩にかけ、2人の手を引いて入り口まで向かうが長女はすぐに手を離しダッシュで先生の元へ。
行ってきますも言わずにズンズン中へと入って行く。逞しい
一方息子はママ、ぎゅーっと私にしがみつき名残惜しそうにこちらを振り返りながら入って行く。困る時もあるけれど、これもまた可愛い。こんな風にしてくれるのもあと何年か。

2人を送り届け自宅へ戻り、玄関を開けると次女の泣く声が聞こえる。
そろそろお腹がすいた頃かもしれない。
ふぅ、と一息ついてリビングの扉に手をかける。

まだまだ今日ははじまったばかりだ。

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