落内符丹

脳内ゆるふわな似非ほっこりが隙きあらば自分語り

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マガジン

  • 麗しの背中

    Twitterのbio欄で連載中

最近の記事

軽い世間話でも

三ヶ月も過ぎれば、先輩と他愛無い世間話はするようになるが地味で大人しい見た目とは違いかなり気の強い女性だった。すぐ辞めると思ったから挨拶とか必要ないと思ったとか、高校生なんてどうせキャピキャピうるさいだけだから話もしたくなかったとか。でもあなたは他の子とは違うみたいね。挨拶ぐらいはこれからしてあげるわと辛辣な言葉。

    • バイト先は通える距離

      一緒に働く友人たちと自分は、自転車で10分もあれば通勤できる距離に住んでいたが、先輩は団子屋のある市街地まで車で来ていた。とっくに大人で車と広い行動範囲を持ち、時々団子屋を訪れる先輩の友達と作る空気感が、自分たち高校生バイト組の子供っぽさと比較すると少しだけ輝いて見えた。その時だけ見られる笑顔も輝いていた。

      • 仕事が暇な時間

        先輩は他人と一定の距離を挟むけど、誰も嫌な思いはしていない。先輩の距離のとり方は明確な拒絶とは違った。仕事が暇な時は、有線から流れてくる音楽に意識を飛ばしたり今日のおやつはどの団子を買おうかと、のんびり掃除や下準備をしていたのに、最近はレジに向かいお釣りの準備をしている先輩の横顔と立ち姿を見る時間が徐々に増えてきた。

        • 一定を保つ先輩のスタイル

          職場で浮いたりもせず、暗くも明るくもない。怒ったり不機嫌にもならず、必要以上の笑顔で上機嫌にはしゃいだりもしない。自己開示を頑なにしないわけでもないが自分からベラベラと喋りはしない。常に安定しており一定のテンションを保つ。誰に対しても同じ。そのスタイルは接客でも崩れずお客様に対して媚びへつらうなど以ての外だった。

        軽い世間話でも

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        • 麗しの背中
          11本

        記事

          あなたについて

          そして特筆するような特徴が何もない人。髪は短くもなく長くもない。体型は太っても痩せてもおらず、背は小さくもなく大きくもない。顔だってそう。美醜など通り超えて単なるどこにでもいる人。今街ですれ違っても気付かないかも知れない。いい香りも嫌なニオイもしない。声や喋り方だって飾りっ気も鼻につくような自意識も媚も何もない人。

          あなたについて

          冷たい初対面

          バイト初日、オーナーに紹介され初めて先輩に挨拶をした日は目も合わしてくれず、軽く会釈をしてすぐ仕事に戻っていった。それから三ヶ月が過ぎたが特に会話もなくお互いに淡々と仕事をこなすだけ。自分にだけ塩対応してるわけではなく誰とも交流を持たず接客する際にもほとんど笑顔がない。だがクレーム等も一切ない。そんな人だった。

          冷たい初対面

          無表情の接客

          初バイトは友達の紹介で入ったお団子屋。いらっしゃいませの声掛けすら喉を絞っても出ない日が続いたが、ようやく慣れて団子を焼く仕事がこなせるようになってきた。焼き場はガラス張りで客側から見えるように設置されている。その向こう側で特に笑顔もなく接客をする先輩のいつもの姿が脳裏をよぎる。目の前には笑顔の先輩がいるのに。

          無表情の接客

          止まらない質問

          ただのバイトの先輩に何故彼氏がいるかどうか聞いたのか、つい口を衝いて出た。でももう止まらない。休憩室に灯っている真っ白な蛍光灯が照らし出した背中。もう服は下げられシャツの裾をもぞもぞと直している。普段は静かで物憂げな先輩が若干恥ずかしそうに微笑みを浮かべながら、質問に答えてくれる。えー?彼氏なんか居たことないよ!

          止まらない質問

          お客さんが来ないから

          見透かされたようで返事をしたくないと、聞こえなかった振りをして親とか兄弟にも見せたことないんですか、と誰かにはその背中を見せたことぐらいあるだろうと詰め寄る。何故こんなに執着して質問を続けるのか自分でも分からない。先輩は服を下ろしながら仕事中とは思えない表情で「見せないよ!」と意地悪っぽく笑った。…彼氏とかには?

          お客さんが来ないから

          背中を見る

          え?そうなの?とあまりにも素っ頓狂な返事。雪のように白く輝き完璧な美しさを誇っている背中。自信満々に返してくると予想して構えたが肩透かしを食らった。先輩に自分の背中を見たことがないのかと聞いた。そんなのあるわけないよと軽い笑みを浮かべ答える。あなたはあるの?と逆に返されて考えたが自分も自分の背中を見た記憶はなかった。

          背中を見る

          先輩の背中

          団子屋でバイト中、地味で大人しい先輩から背中にニキビがないか見てくれと頼まれたので、遠慮なくブラの上まで捲り上げた。顕になったその背中は発光しているのではと錯覚する程白く透き通っており、もちろんニキビなど一つもない。それでも痛い痛いと辛そうなその横顔がさっきまでの先輩とは違って見えた。私は思わず背中綺麗ですねと呟いた。

          先輩の背中

          全然違うけどその名前で何度でも呼んで

          夏の盛りを過ぎた頃、どうしても私の声が聞きたいと親戚のお婆ちゃんから毎年電話がかかってくる。 声が聞きたいだけらしく、内容は他愛ない世間話。 ある年は「免許を取ったよ」と報告するだけで良かったねと泣きじゃくる。 「バイトを始めて立ち仕事が辛い」と言うだけで大変だねと泣きじゃくる。 祖母方面の親戚で、関係性を何回も聞いたけどさっぱり覚えられない。 それくらい遠い親戚のお婆ちゃん。 子供の頃にお会いした記憶はあるものの姿形もぼんやりとして記憶も曖昧。優しそうな目とシワシワの痩せ

          全然違うけどその名前で何度でも呼んで

          椅子に聞いたら

          二人の未来をあの人と。夢に見た憧れの家庭をあの人と。 「ハヌカマニーじゃないよ、マヌカハニー!」 「アボカド!カ!」 やたらと正式名称にこだわり訂正せねば気がすまないあの人。 言い間違いを意に介さないどころか、むしろ言葉を入れ替えて覚える方が しっくりくる倒語主義な自分。 伝わればいいじゃんと笑って見せても、間違ってるのは気持ち悪いと言って 必ず言い直される。 人と暮らす、他人と生活する、二人で未来を作る。 この人となら、といくら夢見てもしょせん他人同士。 些末な一つも

          椅子に聞いたら

          21世紀にもなって風呂にカビの侵入を許してる時点で人類の負け

          常々、カビ退治の根本的な解決法を夢想している。 庭の土や外出時に付着した菌が入り込むことも家の中にカビが発生する原因らしいので二重玄関は必須。 その二重玄関の外玄関に、除菌エアシャワーと紫外線殺菌装置を設置。 全網戸に抗菌対策を施し、全室24時間自動換気及び空気清浄機能で有害なウィルスやカビ菌をホコリもろとも室外に排出する掃除機いらずの家。 排出する空気も取り入れる空気も、壁に取り付けてある強力フィルターで 細かいチリも菌もウィルスも強力にシャットアウト。 ついでに台所も

          21世紀にもなって風呂にカビの侵入を許してる時点で人類の負け

          この世に生きとし生けるものすべての命が生まれ落ちた瞬間から等しく一秒一秒着実に死に向かってるのに誕生日を迎えたくらいでいちいち死を出してきて殊更大袈裟にすんな

          かっこつけやがって、ナルシストか。 ド中産階級の悲しさか。

          この世に生きとし生けるものすべての命が生まれ落ちた瞬間から等しく一秒一秒着実に死に向かってるのに誕生日を迎えたくらいでいちいち死を出してきて殊更大袈裟にすんな

          非日常の中で生きていたらそれはもう日常になっちゃうのか… そっか、当たり前になってしまうんだ

          あなたの世界観に包まれて生きる それこそが生きる意味であり幸せになれる唯一の方法だと ゴールと達成感を同時に手に入れれば夢にまで見た人生の終わり 笑顔で棺桶に入れるはずもなく 非日常を手に入れて 新たな日常の歩みが始まりまた死んでゆく

          非日常の中で生きていたらそれはもう日常になっちゃうのか… そっか、当たり前になってしまうんだ