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【ニンジャスレイヤーDIY小説】グルメ・オブ・ロンリネス(ハカタ出張編)

※コレはウォーカラウンド・ネオサイタマ・ソウルフウードに着想を得た、ハカタが舞台のエーリアス=サンの食べ歩き二次創作です。

博多でゴボ天うどんを食べるエーリアス=サンが見たくて狂ったニュービーが発作的に書いた。
なぜエーリアス=さんがハカタに?そもそもどうやって?そんな細かいことは考えるな。ワタシの宇宙では音が出るんだよ。感じるんだ、ハカタと孤独のグルメのアトモスフィアを。

◆◆◆

ネオサイタマやキョートとはまた種類の違う寒さだ。海が近いせいか、ビョウビョウと冷たい風が突き刺さる。俺はマフラーをキツく巻きなおして歩みを進めた。実際、かなり長いことメシ屋を探してブラついていて身体は冷え切っている。なんせ見知らぬ土地だ。どこに入れば美味いメシにありつけるのか見当もつかない。

「あーーークソッ!腹が減った!」誰に言うでもなく、俺は悪態を吐く。ふと、地下へ延びる階段の方から温かい湯気にのって、ダシの香りが漂ってきた。匂いのする方を見れば、看板には「あたかい」「ウドン」「やわらぎ」の文字。中の様子が窺えないせいで一瞬不安が過ぎるが、空腹も、それから寒さも限界だった俺は、ダンジョンの様な先の知れない階段を降りていくことにした。

「エーラッシャイ!!」「ドーモ……」「こちらドウゾ!」イタマエが指差したのはカウンター席。意外と綺麗な店内でホッとする。俺は導かれるままに席へ着いた。どうしよう。何を食べるべきなのか。あの匂いはどのメニューからだ?キョロキョロと辺りを見回していると、それに気気付いたイタマエが「はじめて?」と声をかけてくる。

俺が素直に「ハイ」とこたえると、イタマエは嬉しそうに「オススメ、あるよ」といって「オーガニック・ゴボー」という文字の書かれた長細い袋に入った土付きの根っこを取り出した。

◆◆◆

「エイオマチッ!」

目の前に出されたドンブリの上にジェンガめいて積み上がるのは、名物オーガニック・ゴボーのテンプラだ。想像以上にデカい!圧倒的な高さから、いつぞやのドンブリ・ポンを思わせる存在感を放っている。勢いにおされて注文しちまったが、俺は本当に木の根っこを食べるのか……?しかもこの量。あの見た目からは、全く味を想像できない。

俺はおそるおそる上部を崩して頬張った。思った以上に薄くスライスされたゴボーが、衣を伴って小気味良い音ともに崩れる。さっくりとした衣の歯触りの後に、土臭いような風味。一瞬怯むが、けして悪い味ではない。いや、コレはむしろ……!

俺はツユに浸って自壊していくテンプラを、箸でかき集めて口に放り込む。やっぱりだ。このツユと抜群に合う!俺はさらに勢いをつけてウドンを啜った。ツユを吸ったテンプラの衣と同じぐらい柔らかなウドンは、キョートでもネオサイタマでも食べたことがない。

ゴボー、ツユ、そしてウドン。三者が渾然一体となったドンブリの中は旨味に満たされていた。俺は夢中になってかっこむ。途中でゴボーのテンプラの下から出てきたネギが、柔らかな食感の中にシャキッとした変化を生んで、それがまた美味い。

湯気で温まったせいで垂れてくる鼻を、ズビッとならして、俺はツユまで一滴残らず飲み干してしまった。さすが名物。本当に美味かった。他所から来た俺に、おすすめを教えてくれたイタマエに感謝だ。

「ごっそうさま!」

俺はカウンターにお代を置いて店を後にする。階段を登って再び地上に出たが、さっきの突き刺さるような寒さを感じることはなかった。腹の中からぽかぽか温まっていい気分だ。ゴボーのテンプラ。ハカタ・ウドン。いつか機会があったら教えてやろう。

「なぁ、ハカタでは木の根っこをテンプラにするんだぜ!」

驚いた顔をするのか、怪訝な顔をするのか。今から反応が楽しみで仕方ない。

これは多分なんらかの活力となるでしょう。