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累計調達額12億円のSecual、セキュリティーデバイスベンダーからスマートシティー構築事業へ業務拡大!

皆さんこんにちは。藤原です。今回のスタートアップ取材記事は、IoT x セキュリティーで有名なSecualです。

彼らは窓に貼り付けることで既存の建物に後付でセキュリティーサービスを導入できるIoTデバイスの製造・販売で事業を開始し、後に、Secualカメラによる不審者検知サービスや、大手企業と組んだスマートシティーの構築まで業務を拡大、IPOを目指して頑張っている気鋭のスタートアップです。僕がキャピタリストだったときの出資先第1号案件でもあります。今回は創業者の青柳さんの他、現社長の菊池さんからお話を伺いました。ぜひご一読ください。Secualはいいぞ。

この記事の登場人物

藤原弘之 (質問内容を太字で記載)
青柳和洋氏 Secual創業者でイグニション・ポイント代表取締役社長兼CEO(写真右)
菊池正和氏 Secual代表取締役(写真左)

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資金調達時の思い出

今日はよろしくお願いします。えっと、どの話からいきましょうか。
青柳・菊池「今日はよろしくお願いします。」
菊池「いや〜、御社からの調達がキツかったですよ〜という話とかどうですか?(笑)」

いきなりその話からいきます?(笑)初めてお会いしたのは2017年の夏頃でしたか?ここに移られる前のビルに僕らがうかがって、僕以外にも、CVCの経営陣とグループのCFOの人間も合わせて4人でぞろぞろ行ったんですよね。もう投資する気満々で。
青柳「僕としてはNHNさんがCVCやるという情報は得ていたので、その1号案件でぜひやって欲しいなと思っていました。元々5億円をお願いしていて。」

そうでした。当初の計画としては2.5億円がSecualの新規発行で、残りの2.5億円が親会社のイグニション・ポイントさんからの譲受でしたね。それが、まぁ今思えばCVCあるあるなんですが、某方面から茶々が入りまして、、、僕もビックリしたというか。
青柳「当然ですけど検討が進んでいくと金額って減ることが多いんですよ。『初めはこれくらいって言ってたけど取締役会を通すときにどうしても・・・』て感じで、だいたい7割くらいに着地することが多いというのが経験としてあります。だから初めの金額はちゃんと多めに言わないとな、というのがあったんですが、ゼロが1個消えたのは初めてでしたね(笑)」

そうでした(笑)。いったん5,000万円になりながら、最終的には1億円で何とか落ち着きましたけど、当時はお互い大変でしたね。
青柳「そうですね。でも事業会社さんが投資事業を始めるときの1号案件に選ばれる事ってSecualは多いんですよ。Secualのいちばん最初の調達ってウィルグループさんのCVCなんですけど、投資委員会のタイミングでSeualが2番目になっちゃったんですが、彼らの検討時は1号のつもりで進んでいましたね。あとはアンビションさんとかもそんなに投資していない中で1号か、かなり初期の案件だったと思います。LIXILさんもベンチャー投資をそれまでやっていなかったですけど、それも1号案件として検討が進んでいて、最後に別会社に抜かれたんですけど、シナジーありきの事業部出資としてはSecualが初だったりとか。最近だとSEKISUIさんも1号投資ですしね。(注1)」

注1:資金調達などSecualの来歴は下記年表をご覧ください。

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いや、すごいですね。何で1号案件に強いんでしょう?当時、目立ってました?確かLIXILアクセラレータープログラムにいたのは覚えてるんですが。
青柳「確かに、LIXILアクセラレーターについては、Akerunさんとかと一緒に基調講演に出て、かつ僕らはエントリーもして、という感じで頑張ってましたね。」

創業時のブースト

話を創業時に遡るんですが、その時はイグニション・ポイントの100%子会社としてスタートですか?
青柳「いえ、70%くらいです。残りは経営陣ですね。僕らイグニション・ポイントの新会社立ち上げの1つのパターンとしてそうしていますね。当時は僕とCOOの西田の2人だけが役員で、残りを持っていた感じです。」

創業当時から窓に貼るIoTのセキュリティデバイス、言うなれば『後付けセコム』みたいなイメージで売ってたんですか?
青柳「いちばん初めは、一人暮らしの女性をターゲットにしていましたね。大学生の女性とかですかね。一人でアパートに住むことも多いじゃないですか。」

ターゲットのリテラシーが合わないというのはなかったですか?部屋にwifiを導入してゲートウェイを設置して、IoTデバイスと通信設定できるとなると。
青柳「設定はほとんど必要ないように注意して設計しましたね。あとデバイスのデザインにもこだわって、オシャレ家電みたいな打ち出し方をしました。なので、その頃のプロモーションとかも全部その世代の女の子にやってもらってました。」

その時は結構売れたんですか?
青柳「まずはMakuakeでしたね。企画をしただけで、あとコンセプトを作って動画を作ってドンっと出しました。2015年当時としてはかなり上位の金額になると思いますが、600万円を調達したんです。そこからマーケティングが一気に伸びた感じですね。」

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そこでうまくいったんで量産もしていこうと。
青柳「量産は初めからしようと思っていました。初めの資金調達は全部マーケティングにつぎ込んで、次から試作機を作って、という流れを想定していました。Makuakeに出る前後で、色んなビジコンにも出て、ほとんど優勝して、一気に知名度が上がりましたね。当時はピッチがイケイケでしたね。世間的にIoTという言葉がバズってたというのもありますが、ビジネスモデルが非常に分かりやすいですし、資金調達もさせていただいて。」

Secualの調達って特殊で、全部事業会社からで、かつ、普通株というのでこれまで全部調達してきてますよね。確かに絶対うまくいくんだったら別に普通株で良い訳で、何らかのリスクをヘッジするために優先株って使うので、もう100%の自信の表れって感じなんですか?
青柳「それもありますが、事業会社さんに対して、優先株ABCとかCBとか、複雑な話を入れれば入れるほど、判断のプロセスが長くなっちゃうというのが感覚値としてありましたから。先ほど言ったみたいに、初めての案件で投資してくれる会社さんも結構ありましたし、よりシンプルなスキームしたいなと思いまして。」

確かにファンドだと普通株はキツいですけど、Secualはほぼ事業会社なのでそれができたってことですね。
青柳「事業会社さんと組む安心感というのも大きいですね。僕らは創業から1年で量産まで行ってるんですが、そこから更に半年くらいで量産品質も安定してきたので、あとはスタートアップというより、精密機器をちゃんと作れる会社として脱皮していく必要がありましたし。」

確かに年表を見ると、販売チャネルもそうですし、技術的な提携もできそうなところがどんどん入ってきてますね。
青柳「そうなんですよ。そういう意味で言えば、例えば、SEKISUIさんが入っていただいてからは、スマートシティーの方面にも事業を拡大できました。これによって、これまでの単なるIoTデバイスベンダーにとどまらず、スマートシティー構想の中で重要な役割も担えるようになって、事業のポーションとしてもかなり大きく成長していますね。朝霞の街に僕らのデバイスがどんどん建ってますよ。」

積み重ねがもたらす安心感

色々とユニークな取り組みをされていますが、他に同じようなことをやられているIoTセキュリティーベンダーっていないんですか?
青柳「確かに競合がどこかについては僕らもよく聞かれるんですが、IoTデバイスだけじゃなくて、カメラで映像解析もできて、スマートシティーのサービスもできてってなると、あまり聞かないですね。この安全安心の分野は積み重ねなので、昨日今日出てきたところとかだと厳しいんだと思いますね。」
菊池「そういう意味では僕らも上場目指して頑張ってますけど、安全安心の文脈ではやっぱり上場ってすごく意味を持つんですね。半年後になくなりそうな会社の製品やサービスって、この分野だどなかなか買いづらいですしね。」

やっぱ積み重ねが重要なんですね。それにしてもすごいですね。初めは海の家にセキュリティデバイス貼り付けてたのが、今やって感じで。
青柳「海の家は今は同じくスタートアップのDANXが運営しています(笑)」
菊池「海の家が後付けセキュリティーとして分かりやすいですが、実は、大英自然史博物館展(注:上野・国立科学博物館で開催)でも使ってもらえたんです。」
青柳「始祖鳥の化石を守ってたんです(笑)。向こうから、セコムさんもALSOKさんもできないんでってウチに依頼が来たんです。」

そうか。博物館って設備がもうかっちり決まってるから、後付けセキュリティーという意味でSecualが持ってこいだったんですね。
青柳「日本で大英自然史博物館の展示をする条件として、現地の施設がちゃんとセキュリティーを導入していることが指定されていたんです。でも日本でこれができる会社がウチしかなくて、依頼があった感じです。これがその時の写真です。」

始祖鳥

始祖鳥の前にSecual(笑)カッコいい〜
青柳「ただ、『ロゴとか一切出すな』って言われましたね(笑)、スポンサーでも何でもないのでって。なので、いつものSecualのデザインも、白く隠して窓に貼り付けて運用してましたね。これはPR用に撮った写真なんですよ。」

それはちょっと残念でしたね。何なら『おカネいらないからロゴ出させて』って感じですね(笑)
青柳「確かに(笑)」
菊池「でも結果的に良い実績になりましたね。」

スタートアップ創業時のネタ探し

そもそも何でこの分野でスタートアップを起業しようと思ったんですか?何か青柳さんの想いがあったとか?
青柳「想いと言うより、イグニション・ポイントの一事業なんですよ。イグニション・ポイントって大きく分けてコンサルティング系のビジネスと、こういう新規事業創造系のビジネスと2つあるんです。これまでは割と作りっぱなしだったんですが、これからは組織として作って伸ばして、というのをちゃんとやりたいなと。」

そうだったんですね。新規事業も色んなネタが考えられたと思うんですが、どうして当時このネタで行こうと?
青柳「それこそものすごい膨大な資料を作っていて、技術トレンドを全部調べて、数年後にピークが来るものは何なのか?とか、それを使って応用した世界で何ができるのか?という話とかですね。あとは、資金調達の目処がどれくらい立てられそうか?これから作ろうとしているビジネスに対して興味を持ってもらえそうか?センサー系の企業とコミュニケーションを取って、これを作るのに自分たちが今持っているネットワークでできるのか?とか色々ですね。ビジネスのネタとしては候補がいくつかあったんですけど、市場のタイミング的にもいちばん良くて、Secualのビジネスが最初に世に出たって感じですね。」

新社長としての参画

菊池さんもイグニション・ポイントの人として当初からいたんですか?
菊池「いえ、違います。僕がSecualに入ったのは2016年の後半だったと思いますが、それまでは、今マザーズに上場している会社が作ったジョイントベンチャーを経営していました。」

それはどういう業態だったんですか?
菊池「監視カメラを使ったセキュリティーサービスの会社です。自宅の中で見守りに使ったりとか。」

じゃぁ割と今のSecualと近い感じですね。青柳さんがそれを知って菊池さんを誘われたんですか?
青柳「いや、僕は知らなかったんですけど、人材紹介の会社が引き合わせてくれて、3人でヒカリエのシアターテーブルでランチしたのが初めですね。『IoTやってるんですね〜』って感じで、初めは何か連携しましょうって話でしたね。こっちはセンサーで菊池さんはカメラだったので、色々できそうだねって。」
菊池「その後は飲み仲間として、定期的に飲み続けていましたね。」

それで、2016年に最終的にSecualに移られたのは、なんでなんですか?
菊池「上場企業の子会社だったので、なかなか数値目標や資本政策の部分で、僕がやっていきたい方向性と、上場企業としての立ち居振る舞いが、ちょっとずつ合わなくなってきたんですね。もっと思い切って資金調達してドカンとやっていきたいなと思ってたところに、飲み続けていた流れで、そういう話になったというか。」

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青柳「Secualはスタートアップなので、増資ができるじゃないですか、外部からも。でも、上場企業の子会社として存在していると、簡単に増資できないですよね。その上場企業が巨大だったら良いですけど、それほどキャッシュリッチでもないとなると、Secualも累計で十数億円使ってますけど、このビジネスは結構おカネがかかりますので、なかなか厳しいんですね。」

なるほど。それじゃぁウチに、って感じで誘われたんですか。
青柳「当時Secualはまだエンジニアのパワーが足りてなかったんです。ビジコンのメンバーを中心に立ち上げているので、マーケティングとかビジネスモデルとか交渉とかは強いんですが、物作り系に弱いんですよ。菊池さんのところはエンジニア集団で、逆にマーケとか見せ方の人がいないんですね。全部菊池さんがやってたんで。組み合わせたらうまく補完できるんじゃないかと思いましたね。」

採用としてはいちばん良い形ですね。それで2016年に入られて、菊池さんが代表になられたのが去年でしたっけ?
菊池「新年度からなので、2018年の6月1日からですね。」
青柳「5月にかなり大きな調達や提携をした(注2)ので、そこでいったんファーストステージは終了で、そこからはセカンドステージとしてIPO目指していく体制に変更するということで菊池さんに代わってもらいました。」

注2:記事冒頭に掲載したSecualの年表を以下に再掲

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それで菊池さんは2回目の社長業ですが、何か違いってありますか?
菊池「前職はさっき言ったとおり上場企業の子会社でしたので、会計運営も含めてかなりキッチリやっていました。上場のプロセスとかもよく見ていたんですが、管理部門が死にそうになってたくらいなんで(笑)、そういう意味ではガバナンスにかける労力がSecualとは全然違いますよね。」

それでも2度目の上場に向かってまた死にそうになる訳ですよね(笑)
菊池「物好きなんじゃないか?ってよく言われますね。でも前回は僕が直接やった訳ではないので、一応今回が人生初の上場経験だからって言ってます(笑)」

そんな菊池さんをサポートするCFOって今はいらっしゃらない?
青柳「今は外部でやってもらっています。実は2016年頃だったかと思いますが、3ヶ月間だけ某大手会計事務所を辞めた方に入っていただいたことがあるんですが、残念ながらステージ的に合わなくて。」
菊池「やっぱりCFOって合うステージと合わないステージがあって、2016年はもうガンガン調達していた頃なので、ガバナンス云々というより、そういう動きが必要だったんです。巨大なM&Aの経験がメインの方だったので。」
青柳「『3年後に20億円調達できる会社になりましょう』って感じだったんですが、『いや、来月1億円調達してください』みたいな。そう考えると、まさに今必要な方で、当時はちょっと早すぎましたね。今は守りのCFOが欲しいです。」

その話すごく面白いですね。実は今夜(注3)CFOナイトというのを開催するので、ぜひ事例として社名は伏せた上で話させて欲しいです。

注3:取材日が2019年10月17日だったため。CFOナイトについては、オフレコトークが目白押しでしたが、公開可能部分は後日、ログミーに掲載される予定。

乗り越えた製造委託先の倒産

他に何か、かなり困難な出来事ってこれまでありました?
青柳「いっぱいありますけど、ネタ的に面白いのが、菊池さんが来た翌月に、量産化するための発注先の会社が経営破綻した、というのがありますね。」
菊池「ありましたね。2016年の11月に僕がジョインしたんですが、その翌月の12月でしたね。」

それ結構なレベルの事件ですね。
青柳「量産化を一緒にやっていこうと、基本設計からずっとやってきていて、ようやく量産のフェーズに入って、『お願いします』てなったら経営破綻して。ちょくちょく『これ前倒しでなんとか支払ってくれませんか?』みたいなのはあったんですが、まさかそんなことになるとは思ってませんでしたから驚きましたね。」

商品とかは大丈夫だったんですか?
青柳「ある日、いきなり管財人を名乗る人から電話がかかってきて『これからは私が窓口です』って言われました(笑)。向こうの倉庫に預けていた支払も済んでいる量産品が結構あったんですが、それも差し押さえられたりして。」
菊池「債権者集会で交渉したりして、最終的には戻ってきましたけどね。」

でも、そこからまた新しい会社と量産化の話を進めるのは大変ですね。
青柳「幸い設計のデータとかはこちら側に納品されていたのと、経営破綻した会社のさらに先の工場は健在でしたので、そこと直接お話をしたりして、何とかリカバリーしましたね。かなり大変でしたけど。」

そんなことがあるんですね。
青柳「あとは特に量産化商品の発売前に役員がバタバタ倒れるみたいのもありましたね。大変すぎて。エンジニアリングが弱かったので外部からCTOとCIOを採用していたんですが、初めにCTOが倒れて、それをカバーしたCIOが倒れて、その翌月に菊池さんがジョインするという。」
菊池「当時はもう綱渡りですね。今はもう軌道に乗って落ち着いてきたので、そこまで激務じゃないですけど、スタートアップ立ち上げ期の、さらに量産品の初出荷でしたから、当時は大変だったですね。」

順調に見えても様々な困難があったんですね。知りませんでした。今日は色んなお話しをありがとうございました。今後とも頑張ってください!
青柳・菊池「ありがとうございました。」

Secualについて

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Secualは、窓に貼り付けることで安価にセキュリティーサービスを後付け導入できるIoTデバイスの『Gateway & Sensor』や、不審者を検知するAIを搭載した次世代監視カメラ『Secual Cam Ady』などの製造・販売を手がけるIoTxセキュリティーのスタートアップです。

『安心をもっと身近に、多くの人に』というスローガンを掲げ、昨今では積水化学工業との提携によりスマートシティの分野にも進出し、益々急成長しています。これにともない、特にフロント部分のサービス開発の分野で、積極的にエンジニアを募集しています。ご興味のある方はぜひコンタクトをしてみてください。


さて、時間のキリがちょうど良いので今回はこれくらいにして、また次のnoteにつなげていきましょう。良かったらコメント・高評価・チャンネル登録・あとTweetをしてくださると嬉しいです。では次回、スタートアップ取材記事でお会いいたしましょう。今回はこの辺で。

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