【文字起こし】筆極道vol.1 其の一(ハッと気付いた…)

※ 【】内は語り手の名前です。
※ 句読点、助詞や語尾の修正を適宜入れてます。
※ YouTubeの動画を聴きながら読むと、その場の雰囲気も一緒に伝わってオススメです!!

【武】
ハッと気付いた。運転中に、一瞬夢見てたみたいだ。でも夢じゃないなって思ったのは、到底夢とは思えなかったからだ。
携帯を見た。そしたら、時間が3日、自分が本来車を運転していた時間から経っていて、
一度目を覚ましたら次々と記憶をフラッシュバックしてきて、自分が6人もの人間を殺めてしまった事、その後、甲虫の中に閉じ込められていた事、そう、あれは全部夢だったんかなって思うんだけど、それもなんかあやふやで、なんかまるで自分の髪を描きあげようとする手が、昆虫の腕の様に依然として思われたりもしてきて…。

【土井】
オーストラリアに行くって出てきたのは、勿論嘘で、旦那と子供は、私の過去を知らないみたいだけど、そして私が住んでるあの高層マンションの一室が、何があった場所かも知らないみたいだけど、私は忘れることはできない。
私の前の旦那は人を6人殺した。
その罪で捕まって、何日か後に、いつの間にかいなくなった。元々死刑だって裁判を受けなくても分かっていたから、いつか居なくなるものと思っていたけど、いきなり居なくなると納得がいかず、ひょんな事から公安が人体実験に使ってることを知った。
それを聞いて私は居ても立っても居られなくなって、その主犯格の中村という男に接近して、私も公安になりすますことにした。
公安はお互いの業務を言わないから、実際に私が公安じゃ無くても彼は私のことを公安の人間だという事を信じている。
オーストラリアだって言って出てきたのは、今日私がやらなくてはいけないことがあるからだ。そのために、オーストラリアってわざわざ嘘をついて出てきた。

【千葉】
オーストラリア、
と我々が呼んでいるのは、
世間には知られて居ないが、
オーストラリア、
ほんとは、
オーストリアだった。

【Baraki】
裕也はたまに、そう、それは3ヶ月に一度ほど、どう考えても自分自身が経験したことのない、古いヨーロッパの街並みを夢の中で思い浮かべることがよくあった。

何だろう、この知るはずもないあの街角。
何百人と、何百年も続いてる、踏み続けられた煉瓦の街並み。

御茶ノ水で、楽器を買ってるような自分が、経験した事のない筈の、絶対に知る筈のないそんな街角を夢見るようになってから、
もしかしたら自分は、本当は裕也だと思っているけど、全く違う存在なのではないかと、そんな風に思うようになっていた。

【一志】
そう、私は一体誰なのだ。
オーストラリアを夢見て、石畳を一歩一歩進み、新宿にいるはずの私は、オーストラリア、世界各地、私がいったい誰で、何で、自分と他人との境界線ももはや分からない。
自分は私はいったい何なんだ!
どこにいて何をやってるんだ!!
その時裕也は思った。

「そうだ、おっパブに行こう。」

おっぱいを揉めば、そう私はオーストラリアでもオーストリアでもない、新宿歌舞伎町にいる。
そのまま一歩一歩進んで、それなりの看板を探して、お店に入れば、自分か自分でないか分からないけど、まずおっぱいを揉めると思い、裕也は自らの胸をゆっくり揉みしだきながら、路地裏からひょっこり現れた。

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