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15年前、同級生がインターネットで身バレした話。

昔から自分はインターネットに関するリテラシーが低かった。

そういった知識を学ぶことができないまま、裸一貫でインターネットに飛び込まざるを得なかったのが、我々の世代だ。

そのせいで様々な面倒にも巻き込まれたし、時には自らトラブルを引き起こすこともあった。

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ギリギリ昭和生まれである自分達にとって、はじめてインターネットに触れる時期というのは、小~中学生時代のパソコン・携帯電話普及期にあたるはずだ。

多感な時期ということもあり、そうした世代の男性が「#はじめてのインターネット」体験を語ろうとすると、どうしてもアダルトなエピソードが多くなってしまうだろう。

肝心の自分はというと、我が家にパソコンが無かったため、インターネットを通じてアダルトコンテンツに触れるのはもう少し先の話になる。それよりも自分は漫画の方が好きだったので、「I’s」や「ラブひな」に「オヤマ!菊之助」あたりの方が、よっぽど強烈な性体験として記憶に刻まれている。特に菊之助。

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高校に入ると、親からdocomoの携帯電話を買い与えられた。もちろん今で言うガラケーだ。SONYのSO503iSという機種で、ジョグダイヤルと呼ばれる特殊な十字キーがお気に入りだった。

そうするとdocomoの提供するインターネットサービス「iモード」を通じて、自分もようやくインターネットに触れることができた。

だが、生まれて初めてのインターネット体験では、トラブルにもバンバン巻き込まれることになる。

想定外のパケット通信料や、各種サービスにおける想定外の月額利用料金。所謂出会い系サイトでのトラブル。小心者の自分の目には、インターネットの利便性よりも、その危うさの方が色濃く映った。

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そんな自分のインターネット接触期において、インターネットリテラシーのようなものを学ぶきっかけになったのが、高校の同級生であるタナカ君(仮)のエピソードだ。

タナカ君とは中学校からの同級生だったが、一緒に遊んだり登下校をするような仲ではなく、お互いに大勢いる同級生の中の一人だった。

ある日の部活帰り、同級生の一人が「タナカ君のホームページが見つかった」と騒ぎ出した。たしか、魔法のiらんどに設けられたブログだったと思う。そこには高校生らしきブロガーの日常が記されていた。

内容は完全に自分達の高校生活と一致しており、ブログの筆者がタナカ君だと特定できそうな情報も散見されてしまっていた。ブログ上で用いられるハンドルネームも「タナカ」のまんまで、ブログタイトルに至っては「タナカ's history」のようなド直球ネーミングだった。

しかしタナカ君の迂闊な振る舞いがあったとはいえ、当時の我々が広大なインターネットの世界から、知人のブログを見つけ出して本人と特定するような真似が出来たであろうか。おそらく、タナカ君が親しい友人にだけブログの存在を教えたのが、どこからか自分達まで漏れ伝わってしまったのだろう。

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ブログの噂は、同級生の間で早速広まった。

特別に社交的なわけでもなければ、クラスの中心人物でもないタナカ君は、仲良くもないスクールカースト上位の男子女子達からボロクソにからかわれた。そのブログにはたいしておかしなことも書かれていなかったのに、連中は「history」「歴史くん」などとブログのタイトルを揶揄して、わざとタナカ君に聞こえるほどの小声で呟いたりした。

けれどタナカ君は誰かに助けを求めるでもキレるでもなく、連中の嘲笑など全く聞こえないように振舞った。

というか、タナカ君は普段からボーっとしている不思議な奴だったので、自分がからかわれていることに気付かなかったのかもしれない。 そもそも、あのブログが本当にタナカ君のものだったのかもわからないわけだし。

しばらくすると連中はタナカ君を弄ることにも飽きてしまい、それ以外の同級生達も、タナカ君のブログのことをいつしか忘れるようになった。

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高校を卒業して数年が経つ頃、大学生になった自分は、友人からmixiの利用を勧められた。

SNSというものが理解できなかった自分は、「つまりmixiとはブログのようなものだ」という友人からの雑な説明を受けて、タナカ君のブログのことを思い出した。まさか残ってはいまい。そう思いつつ検索してみると、なんとタイトルもそのままに、タナカ君のブログはまだ存在していた。

不謹慎な高揚を覚えながら、既に疎遠になった彼のブログを読み進める。その更新内容は、高校を卒業する頃に書かれた日記だった。

「お前らのことは、絶対に許さない」

そこには、からかわれていた当時の出来事および関係者に対する、呪詛の言葉が残されていた。

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タナカ君には本当に申し訳ないが、正直に言うと当時の自分は、その内容に対して冷ややかに引いててしまった覚えがある。

気持ちは分かるし同情もするけれど、身バレしてしまったブログでわざわざそんな言葉を残すなよー!またトラブルのタネになっちゃうじゃんか!インターネットリテラシー!

そんな風に呆れていたのだけど、今から考えるとタナカ君がそういった言葉を残したのは、彼なりのささやかな復讐だったのかもしれない。いつかまた誰かが、このブログを読み返したときのために。

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FacebookやTwitterにInstagram。各種SNSやインターネット上において、自分自身を特定されかねない情報や画像を晒すことには、いまだに抵抗がある。

そしてふと思い出した時、今でもタナカ君のブログを検索してしまうのだ。しかし現在は既にインターネット上から削除されてしまったようで、いくらググってもヒットすることはない。

もしタナカ君の手でブログが閉鎖されたのであれば、彼の気持ちに何らかの整理がついたということなのだろうか。今となってはもう、確認のしようもないのだけれど。

#はじめてのインターネット #エッセイ #昔話


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よこせ/マンガ家

昼は会社員、夜は自称マンガ家。隔週ペースで新作マンガをアップしています。ライフ桜新町店推し。ご用の方はTwitterのDMまでお願いします。
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