宇野昌磨選手の国別対抗戦FSを見て思ったこと。

この1ヶ月は、ずっと宇野昌磨を応援してきた身としては、すごく苦しい1ヶ月だった。

世界選手権の演技は、リアルタイムで見て以来、一度も見返していない。

ただただ悔しくて。ただただ辛くて。見ると、心がちぎれそうになるから、蓋をして、重しをつけて、自分の胸の奥底に沈めたままにして、何も考えないようにしていた。

ただ応援しているだけのファンがこんなのなんだから、当の本人はどんな気持ちなんだろう。想像すると、また心がちぎれそうになって。とにかく宇野選手が元気で過ごせていますように、と。時折流れてくるアイスショーのニュースを読んだりしながら、そう祈っていた。

ファンというのは、難しい。良いときも、悪いときも、変わらずに応援し続ける。それがファンの務めだと思う。

もちろんどんなに結果が悪くたって宇野選手にガッカリしたことなんて一度もないけれど、それでも「変わらずに」いられるかというと、ちょっと嘘になる。

ここ最近、宇野選手の周りでは「コーチや練習環境を変えた方がいい」とか「勝ちに意識が向きすぎていて本来の良さが失われている」とか、いろんな声が飛び交っていて。もちろんそれは悪意によるものばかりではない。熱心に応援しているからこそ、つい何か言いたくなることも、ある。

でも、もしこういう声が宇野選手の耳に入ったらと思うと居ても立ってもいられなくて。僕がコンクリートなら今すぐ宇野選手の防波堤になるのに、とワケのわからないことを思うぐらい胸を痛めていたのだけど。

本当は心のどこかで「そうした方がいい」と思っている自分もいて。努力しているのも、勝負をしているのも選手なのに、そういう無責任なことを勝手に思ってしまう自分がすごく嫌だった。

そしてそのピークが、昨日の国別対抗戦のSPだった。初挑戦の4F+3Tは失敗。リカバリーを狙った4Tのあとのセカンドジャンプも辛うじて2Tがつけられただけで、3.8点もの減点がついた。

結果、ライバルだったネイサン・チェン選手にも、3つ下のヴィンセント・ジョウ選手にも、大きくスコアを引き離され、宇野選手は少し袋小路にぶち当たっているようにも見えた。

もう伸びしろがない。世界の頂点に立つタイミングを完全に逸した。そう言う人も、少なからずいた。

そんな中での、FS、だった。

スコアと順位だけを見れば、SPとそんなに変わらないのかもしれない。

やはりネイサン選手にも、ジョウ選手にも10点ほど差をつけられ、事実上、世界で4番手という評価が固定した恰好だ。それは、五輪銀メダリストとしては決していいポジションとは呼べない。この1シーズンは、傍から見れば停滞や迷走と位置づけられるのかもしれない。

それでも、僕はあのFSに、久しぶりに宇野選手らしさを見た。

冒頭の鮮やかな4F+3T、そしてランディングまでキレイに決まった4F。単独の4Fに関して言えば4点以上の加点を引き出す好ジャンプだった。4Fを2本入れるというチャレンジが実っただけで飛び上がるぐらいうれしかったんだけど、それ以上にテンションが上がったのが後半の4S、そして3A+4T。どちらも失敗に終わったものの、果敢に攻めぬく心の強さに、ああ、こういう宇野昌磨が好きなんだよな、と柔らかくて温かい気持ちがふつふつと溢れ出てきた。

そして何より最後の3S+1Eu+3F! その前の3Aが単独になってしまったことから急遽コンビネーションをくっつけた形になったのだけど、そこでちゃんとコンビにしてきたことに、宇野選手の成長を見たのだ。

宇野選手は咄嗟のリカバリーがなかなかできなくて、FSでコンボを3本使えずに終わるということがしばしばあった。それこそ地元開催だった2017年のGPFではラストの3Sでコンビネーションをリカバリーすることができず、ネイサン選手を逆転できなかった。あのときも確か愛ゆえの辛辣なコメントがネットでも多く見られた記憶がある。

それが、今日はきちんと3S+1Eu+3Fを入れられた。もちろんトップ選手であればリカバリーぐらいできて当然なのかもしれない。でもそうやって以前はできなかったことがちゃんとできるようになったことは、純粋にうれしいし、称えたい。そういう小さな成長ひとつひとつを見せてもらうのが、アスリートを応援する喜びだと思うから。

外野のいろんな声というのは当然選手の耳にも入る。それによって気持ちが乱されたり、本来の自分を見失ってしまうことも、きっとあるのだと思う。

でもこうやって思い切り失敗して、転んで、顔を歪めながら立ち上がって、また次のジャンプを跳ぶ宇野選手を見ていたら、どうかこれからも自分のためだけに滑ってほしいと、心から思った。

宇野選手が望むなら今の練習環境を継続すればいいと思うし、変化を求めるならコーチや拠点を変えたっていいと思う。ガンガン勝利を狙ってもいいし、そんなことは関係なく自分が満足できる演技を追求したっていい。誰かのように、なんてならなくていい。宇野選手は、宇野選手のままで、もう十分に素晴らしいのだから。

最後にリンクに立つのは、選手だけ。すべてを引き受けるのは、自分だけ。だから宇野選手にはこれからも望む未来をまっすぐ突き進んでほしい。

そう。すべては、心のままに。

そして、僕はそんな宇野選手のスケートを見ながら泣いたり笑ったり、時には人生というものを教えてもらいながら、こんな素晴らしい選手と同じ時代を生きることができた喜びを、応援させてもらえる幸せを噛みしめていく。それだけで十分なんだ。

宇野昌磨選手、今季も本当にお疲れ様でした。

また来シーズンも、宇野昌磨選手らしいプログラムを見せてもらえることを心から楽しみにしています!

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横川良明

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