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光海なぞれよ今

「不動さんは打てば響く人だから」

たしかに名は体を表すとは言う。だけどべつに動きたくなくて動かないわけじゃないんだよ。こんなことを面と向かって言われたら、いろいろと思い返しちゃうだろうが。ミステイク・マーダー!のイベント初日を思い出してみよう。何を言われたのか。

「不動さんは “ 当 然 ” 最後まで僕たちと走るんですよね」
「頑張りましょうね!!」
「ぇ眠いけど…」
「やらないんですかそうですかハァ残念だなあ~まあお忙しいですもんねごめんなさい引き止めちゃってほんとこんなこと言うのもアレですけど “ そ の 程 度 ” ってことであとは僕たちでやっときますんでどうぞおやすみなさいオツカレシタ~」
「は?」
「あっ!じゃあやりますねはいやりましょうさあやりましょう」
「頑張りましょうね!!!」

ああこれは打てば響く人間だね。間違いない。ほんと何度目だって話だよ。このあまりにもくだらないやりとりはほんの1週間程度の出来事であって、過ぎてしまえばあっという間。詳しいことは院長が書くらしいから、投票イベントでラウンジ1位獲りたいっていう野心に溢れた諸君らはそれを読むのが良い。

とにかく僕の書いてきたものなんていうのは何の役にも立たない。これはべつに自虐じゃない。実際のところ本当に役に立たないからだ。僕はそういう意味でまったくもって特別じゃない。ラウンジ「ミリオン総合病院」で1年ちかくかけて僕がやったことは、誰にでもできることだ。ただ一点、いったいどうして自分の時間を割いてまで、そんな苦労を背負い込んいでるんだと思われても不思議はない。

それは何の変哲もない、しかし凡庸と呼ぶにはあまりにも眩しい「当たり前」。何日もろくに寝ないことが偉いんじゃない。眠らずに遊び倒してでも楽しみたいことがあった。力になりたい友だちがいた。ただそれだけのこと。しんどいかしんどくないかで言ったらしんどいに決まっている。でもその悲鳴は、最初から最後まで楽しみ抜くこととまったく矛盾しない。重ねてきた時間と共有してきたものから溢れ出る切実さが、エンターテイメントの根幹にはある。

僕はずっと享楽の渦の真ん中にいたかった。それが元で妬み嫉みに打ちのめされたことも散々あった。でも道中の悲哀は感傷に値しない。厳然たる事実として、自分ほどこのコンテンツの奥底まで浸かった人間はそういないんじゃないか。そうだ。僕はこんな人間だから、たぶんこれからも南には行かないんだろう。

ことほど我儘気儘に書けば書くほど、自分の内から湧き出てくる言葉がだんだんと閉じたものになってきていることに気づかされる。あざとさをかなぐり捨てるとそこには自由があって、ただただ思いつくままに筆を走らせる悦に身を委ねながら、あの日見た光の海を思い出す。いや思い出すのとは少し違うか。あの光景が脳裏に焼きついて一向に離れない。

僕はいわゆる「両日参加」は初めてのことだった。加えて、ミリオン単独ライブへの参加も初めてのことだった。今までずっと追いかけきた方々からすれば「何度やんねん」と思った曲も多数あったことだろう。でも僕には兎にも角にもすべてが新鮮だった。これが本当におんなじゲームを5年もやってる人間か?マジで言ってんのか!?体感した一曲一曲を丁寧に語り明かせばどれだけ長くなるかわからない。だから今回は焦点を絞ろう。

当然ながら感想は人の数だけあって良い。だからこんなことを考えていたのはともすると僕だけかもしれない。2日間を通じて強く感じたのは、「これまで」と「これから」が絶妙な塩梅で両立していたこと。特に「これまで」というのが本当にいけない。ソロ曲がゲーム尺だったこともあってか、遊んでた当時どんなことがあったかなんて、そんなことばかり思い出された。

徹夜つづきで深夜にいきなし歌い出す奴おったな。
寝落ちする度にあいつのこと起こしたな。ああそれは自分もやってもらったわ。付き合ってんのか。
御上に外出るなってめっちゃ言われてしんどかったな。
でもだいたい皆しんどかったから毎日しょうもない話して紛らわせてたな。
どうして煽られたくらいで熱くなるんだろうな。忙しい言うてるのに。いつもそうだわ。天気の挨拶か。
会った人たち皆から会えて嬉しいって言われるの嬉しいよな。
嬉しいに決まってる。

本当なんなんだろう。このどうしようもなく些細でくだらない応酬の連続に、何よりも励まされてきた。だからこそ2日間連番したいと誘われたときは、こんなふうに声をかけてくれる人間が果たしてどれだけいるんだろうかと込み上げてくるものがあった。言葉にしてみるとよりハッキリとする。最初からまあセンチなこと。だからだろうなと今ようやく理解できた。未来飛行で泣きすぎて前が見えなくなったのはどうしてか。

僕ははじめからずっと渦の真ん中にいたんだ。
でもこれたぶん皆そうなんだよ。皆でひとつの真ん中だ。
良かったな。つづけてて、本当に良かったな。

10年という節目に立ち会えたことを、この先も忘れない。最後に、この場所まで連れてきてくれたおじいさんへ。

ありがとう、親友。

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