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日本全国不動産掘り出し情報④

このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。

今回は、「日本全国不動産掘り出し情報」
知る人ぞ知る全国各地の不動産情報を(株)遊都総研が解説するコーナーです。『月刊不動産流通2019年4月号』より、「時津町」「あわら市」を紹介します。

★時津町

長崎市のベッドタウンとして雇用を創出。
埋め立て地が成長センターに

交通量が多い国道206号線と207号線の交差点

 長崎県の中部に位置し、南に長崎市、北に大村湾が接する時津町。町域の西部は山地が多いが、東部は比較的平坦な地形で、大村湾に面して埋め立て地が続く。町域の南側は長崎市と、東側は長与町と市街地が連続している。

 1969年に長崎都市計画区域に指定されてからは都市化が進行、人口は70年の約1万人から2010年には約3万人に増加した。長崎市のベッドタウンとしての側面がある一方、埋め立て地には工場などが立地。近年は郊外型の商業施設なども進出し、雇用の場も多いことから、一定の求心力も有する。町内に鉄道は無いが、長崎市の中心部へは路線バスで約30分、本数も日中10 ~ 15分間隔と多い。

 また、時津港から対岸の長崎空港までは大村湾をショートカットする高速船の運航もあり、臨空都市としての性格も持っている。なお、東側に隣接する長与町も、ニュータウンの開発が相次ぎ、時津町同様、人口が急増したまちだが、同町には無い鉄道の駅を有しており、水資源の提供などで同町とは補完関係にあるという。

 道路網の軸は、町域を南北に貫く国道206号線と、同町の中心部で206号線から東西方向に分岐する国道207号線。何れも地形上、市街地を大きく迂回するバイパスを建設することが困難なことから、通勤時や休日にはしばしば渋滞が生じていたが、07年206号線は町域北部で日並バイパスが開通し、渋滞が大幅に緩和された。

 同バイパスは距離にして2㎞程度だが、広大な埋め立て地に建設されたことから、平坦地の少ない長崎県内では珍しく、郊外型の量販店が集中的に立地する景観が広がっており、近年になってバスターミナルなども設置された。埋め立て地を分譲する長崎県土地開発公社では、今後も同地区で商業地や宅地の分譲を計画しており、長崎県では数少ない成長センターとして注目されるところだろう。

★あわら市

北陸新幹線の延伸で人手不足に拍車。
芦原温泉では企業の福利厚生施設に期待

「おみやげ」などの看板が目立つJR「芦原温泉」駅前。 2023年には新幹線が停車する

 福井県の北端に位置し、日本海に接するあわら市。2004年に旧芦原町と旧金津町の合併により誕生した。現在の市域に相当する地域の人口は長らく3万人前後で推移している。

 旧2町の中心市街地は4㎞ほど離れた位置にあり、旧芦原町はえちぜん鉄道三国芦原線「あわら湯のまち」駅、旧金津町はJR北陸本線「芦原温泉」駅周辺にある。後者は合併前から「芦原温泉」の駅名を名乗っており、金津町は芦原温泉の実質的な表玄関の役割を果たしてきた。温泉旅館等の宿泊業は、合併前も合併後も、同市の主要産業の一つだ。15年3月の北陸新幹線金沢延伸開業後は、石川県内の温泉地よりも入込客数が増加したという。

 さらに23年春に予定されている北陸新幹線敦賀延伸開業時には、現在の「芦原温泉」駅に新幹線の駅も併設される。同駅周辺では、大規模な再開発計画は無いものの、新幹線を見据えた整備も始まった。

 ただ、敦賀延伸開業後は、東京方面とはダイレクトに結ばれるものの、大阪方面からの直通列車は敦賀で分断されることになる。これまで芦原温泉を支えてきた関西方面からの集客への営業を懸念する声もあるという。さらに、温泉旅館等の宿泊業は、全国的に人手不足が深刻だ。特に福井県では、北陸新幹線の開業により、隣接する石川県同様、宿泊業を含むサービス業の有効求人倍率は全国的に見ても高い状況が続いている。これらの宿泊業はもともと、社宅や寮などが比較的充実している業種であり、北陸地方は特にその充実度が高いとされてきたものの、それでも求人難は解消されていないのが現状だという。

 温泉旅館という業種の特性もあるが、こうした産業では社宅や寮など住居系の福利厚生が大きな鍵となるだけに、今後はこれまで以上に、観光・宿泊業界と住宅・不動産業界との連携に期待したいところである。

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★次回予告

次回は5月16日(月)に、『月刊不動産流通2019年4月号』より、
「一問一答!建築のキホン」を掲載する予定です。お楽しみに!

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