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日本全国不動産掘り出し情報⑤

このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。

今回は、「日本全国不動産掘り出し情報」
知る人ぞ知る全国各地の不動産情報を(株)遊都総研が解説するコーナーです。『月刊不動産流通2019年5月号』より、「八幡浜市」「青森市」を紹介します。

★八幡浜市

「伊予の大阪」と称された港町。
今でも港周辺がにぎわいの拠点に

フェリーが発着する八幡浜港のターミナルビル

 愛媛県西部、佐多岬半島の付け根に位置し、北側に伊予灘、西側に豊後水道(宇和海)が接する八幡浜市。古くは海上交易の港町として栄え、「伊予の大阪」と称された。戦後はトロール漁業の拠点としても発展、それに付随する形で水産加工業が盛んになった。現在でも四国と九州を結ぶフェリー航路の拠点となっており、まちの中心は鉄道の駅ではなく港という印象が強い。市域の多くは、入り組んだ入江に急峻な山地が迫る地形のため、平坦地が少なく、その中心市街地は埋め立て地を含む海岸沿いや、それに続く谷伝いに密集している。

 人口は約3万5,000人ながらも、愛媛県内では松山市に次いで地価水準が高いまちだ。密集した市街地では、港近くの比較的平坦なエリアで南北方向に延びるアーケードと、港から市街地東側のJR「八幡浜」駅方面へ向けて東西方向に延びるアーケードがL字型に交差しており、その長さは県内屈指を誇る。「八幡浜」駅に降り立つと、そこには典型的な小規模な地方都市といった景観が広がるが、港方向へ向かうに従い、かつての「伊予の大阪」を彷彿とさせるまち並みへと変わる。

 しかし、比較的近年までにぎやかだったこのまちの中心市街地も、産業の低迷や人口の減少で空洞化が進み、空き家や空き店舗が目立つようになってきた。こうした中、港に面した一画で2013年、新たな水産市場と道の駅がオープン。道の駅にある海産物直売所は比較的広域から集客、にぎわいを見せている。また、16年には港近くの一画で、四国では珍しい「黒い温泉」が湧く日帰り入浴施設がオープン。こちらも連日にぎわっている。同施設の近くにあり、中心市街地を南北に貫くアーケード商店街でも、同施設と連動した活性化事業が始まった。同市の求心力は、今も昔も「港」にあると言ってよいだろう。

★青森市

ようやく開発が本格化した「新青森」駅周辺。
中心市街地とバランスのとれた発展が課題

地平の在来線と高架の新幹線が直角に交差する「新青 森」駅

 青森市は、JR「新青森」駅周辺で2002年より石江土地区画整理事業を推進。事業で売却される18区画の保留地のうち、14区画の売却が決定、残りは4区画となった(19年1月時点)。

 「新青森」駅は、1986年に在来線の駅が先行して開業。2010年に東北新幹線の「八戸」~「新青森」間が延伸開業し、一旦終着駅となるが、16年には北海道新幹線の「新青森」~「新函館北斗」間が開業。現在は、東へ3㎞ほどの中心市街地にあるJR「青森」駅に代わり、同市の表玄関として機能している。

 しかし、同土地区画整理事業では、長らく保留地の売却が進まず、開発は足踏み状態が続いていた。この状況に転機が訪れたのは13年のこと。保留地の規制緩和を実施し、高さ制限などを修正した結果、オフィスビルや商業施設などの計画が前進したほか、大手ホテルチェーンも19年秋に大型ホテルをオープンする。同駅周辺には宿泊施設がほぼ皆無だっただけに、地元では「ようやく新幹線の駅前らしくなる」と期待を寄せる声も大きい。

 実は、これまで「新青森」駅の周辺開発が進まなかった理由は、2つある。北海道新幹線が計画された当初、青森市は中心市街地に近い在来線の「青森」駅に新幹線の駅を併設することを望んだ。しかし「青森」駅は、青函連絡船の港に接する「行き止まり」である関係上、JRとしては北海道方面への速達性を鑑み、中心市街地ではなく、かといって無人の荒野でもない現在の位置に新駅を設置することになる。また同市は、比較的早い段階でコンパクトシティの構想を打ち出しており、中心市街地からやや離れた位置にある新青森駅周辺の開発には、一定の規制をかけざるを得なかった。本来ならば、開発の起爆剤となる「新幹線の新駅」にブレーキがかかっていた格好だ。

 今後は、規制緩和によって開発が進む「新青森」駅前と、「青森」駅を中心に、市街地をいかにバランスよく発展させていくかが課題といえる。

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