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日本全国不動産掘り出し情報②

このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。

今回は、「日本全国不動産掘り出し情報」
知る人ぞ知る全国各地の不動産情報を(株)遊都総研が解説するコーナーです。『月刊不動産流通2019年2月号』より、「出水市」「美濃加茂市」を紹介します。

★出水市

新幹線の開業で鹿児島市内が通勤圏に。
転入者の取り込みに期待

開発途上の九州新幹線「出水」駅前。ホテルが2棟・マ ンションが1棟建つのみで、未利用地も目立つ

 鹿児島県北西部に位置し、熊本県に接する出水市。現在の人口は約5万人、鹿児島市からは80㎞ほどの距離にある。市内には幹線道路の国道3号線が通り、鉄道ではJR鹿児島本線「出水」駅がまちの表玄関として機能してきた。2004年に九州新幹線が「新八代」~「鹿児島中央」間で部分開業すると、在来線の「出水」駅には新幹線の駅が併設された。11年の九州新幹線全線開業時には、博多・関西方面への大都市圏直結効果が大きくうたわれたが、実は出水市にとってインパクトが大きかったのは、全線開業時よりも04年の部分開業のときだったという。

 部分開業時、博多方面へは乗り換えを要するなど、不便を強いられる形となったが、「出水」~「鹿児島中央」間は1時間弱から20分弱へと大幅に短縮したことで、鹿児島市内へ通勤・通学する層が増加した。一部には、鹿児島市から同市への逆通勤の動きもあるという。

 こうした中、同市は市内の事業所へ新幹線などの公共交通機関(定期券)を利用して通勤する場合、最大で月額2万円の補助を出すなど、新幹線効果で転入者を取り込もうという構えだ。なお、同様の補助は、「鹿児島中央」駅へ新幹線で1駅手前となる薩摩川内市でも実施されている。

 「出水」駅前は、鹿児島市の新幹線通勤圏となった「川内」駅前に比べ、開発途上の感が強い。現況ではホテルが2棟・マンションが1棟建っているのみで、未利用地も目立つ。また、中心市街地は同駅より南へ2㎞ほど離れた一画にあるが、閑散とした印象を受ける。さらに、新幹線部分開業時に第三セクターとなり、「出水」駅に車両基地などの拠点を置く在来線・肥薩おれんじ鉄道も、経営環境は厳しい。

 今後は全線開業を果たした九州新幹線という地の利を、いかにして活用していけるのか、注目される。

★美濃加茂市

工業団地やバイパス開通で持続的に成長。
外国人等の人口増で宅地開発も進む

「美濃太田」駅北側。バイパスに接し、量販店が立ち並ぶ 一画

 岐阜県南部に位置し、古くは中山道太田宿として栄えた美濃加茂市。高度成長期以降は工場の立地が進み、1989年以降は国道41号線美濃加茂バイパスが順次開通したことに伴い、工業団地に加え、宅地開発や商業施設の立地が活発化した。

 70年に約3万5,000人だった人口は、2015年には約5万5,000人に増加、近接する自治体からの転入も多く、ほぼ一貫して増加を続けている。また1990年代以降は、主に工場勤務の日系ブラジル人を中心に外国人居住者が増加。地元工務店では、こうした外国人居住者向けに低価格の住宅を販売。近年では外国人向けの宅地分譲が、好調な売れ行きを見せているという。

 同市の中心市街地は、JR高山本線・太多線と長良川鉄道越美南線が交差する「美濃太田」駅周辺の一画。同駅の南口は、古くからの典型的な地方都市の景観が広がっているが、北口は広い区画に郊外型の商業施設が面的に立ち並び、ある種特異な景観が広がる。美濃加茂バイパスの開通に伴い、同駅北側とバイパスを挟んだ平坦地に量販店などが集中的に立地したためだ。

 さらにそのバイパスの北側では、美濃加茂中部台地、あじさいヶ丘などの大規模区画整理事業が竣工、住宅地や工業団地が広がっている。集中的に立地した商業施設は、こうした背後の住宅地だけでなく、バイパスを介して広域からも集客しているという。

 一方、発展著しい同駅北側に比べ、南側は公共施設等が集中しているものの、空き店舗や空き家などが多い。こうした中、同市では2017年、時間貸しスペースの仲介サイトと提携し、公共施設の有効活用を開始した。市内や県内からの利用だけでなく、名古屋近郊からの利用も見込むなど、新たな交流と経済循環を目指すという。地方では今や数少ない成長余力のある同市の動向に、今後も期待したい。

※PDFファイルをダウンロードしていただくと実際の誌面がご覧いただけます
※(株)不動産流通研究所の著作物です。二次利用、無断転載はご遠慮ください

★次号予告

次回は4月1日(金)に、『月刊不動産流通2019年2月号』より、
「事例研究 適正な不動産取引に向けて」から
「貸室内で死亡した賃借人に、善管注意義務違反があったとする賃貸人の損害賠償請求が否認された事例」を掲載します。お楽しみに!

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