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日本全国不動産掘り出し情報③

このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。

今回は、「日本全国不動産掘り出し情報」
知る人ぞ知る全国各地の不動産情報を(株)遊都総研が解説するコーナーです。『月刊不動産流通2019年3月号』より、「大和郡山市」「茂原市」を紹介します。

★大和郡山市

江戸時代の住民自治制度復活か。
城下町でリノベによるまちづくりが始動

「近鉄郡山」駅。駅前広場 に相当するバスターミナル はやや離れた場所にある
城下町時代から続 く幅員の狭い道路

 奈良県北部に位置し、奈良市の南西部に接する大和郡山市。市域の大部分は平坦地で、奈良市の中心部からは約5㎞、大阪市の中心部からは約30㎞の距離に位置する。古くは溜池を利用した金魚の産地として知られ、高度成長期には大阪に近接する平坦地という地の利を生かし、工業団地の開発が進んだ。市域南部の昭和工業団地には電機や食品などの大手メーカーが立地、工業出荷額では奈良県1位を誇る。

 また市域西部では、高度成長期以降に宅地開発が進み、ベッドタウン化が進行。人口は1965年の約4万5,000人から、85年には約9万人へと倍増した。ただ近年は、95年の9万5,000人をピークに減少に転じている。

 古くからの中心市街地は市域北部、JR「郡山」駅と「近鉄郡山」駅の間に広がる一画。中心市街地一帯は、今なお城下町の風情を残すものの、幅員の狭い道路網が密集しており、その特異なまちの構造が発展の足かせにもなっているという。特に「近鉄郡山」駅前は駅前広場に相当するバスターミナルが離れた場所にあるなど、近鉄・JRの双方を利用可能という足の便を生かし切れていない格好だ。

 こうした中、同市では2018年10月、「郡山百代構想」を発表。城下町の特性を生かし、江戸時代の住民自治制度「箱はこもと本」(商工業保護政策として周辺の同業者を城下に集め、特許状を与えたうえ営業上の独占権を認めた、町ごとの当番制による住民自治)をモチーフにした「家やもり守会社」(リノベーションのまちづくり事業を行なうとともに、収益を上げ、まちに賑わいを作り出す民間のチーム)を提唱。補助金などに頼らず自立し、継続したまちづくりを行なっていくという。行政は、事業を円滑に進めるため、法制度の運用において、「家守会社」の取組みをバックアップする役割を担っていく。

 今後はこの構想がどのように具現化されていくのか、注目されるところだろう。

★茂原市

ニュータウン計画が頓挫。
今後は駅西側の区画整理に期待

かつては大手百貨店 が入居していた駅前 の再開発ビル

 千葉県のほぼ中央に位置し、東京から約70㎞、千葉市の中心部からは約30㎞の距離にある茂原市。東京までは特急で約50分、快速で1時間20分と、東京の通勤圏としてはほぼ最東端となる。天然ガスの産出地としても知られ、市内には関連する事業所が立地しているほか、主に長生郡を商圏とする商業の中心地としても発展。東京・千葉方面へのベッドタウンとしての側面を有する一方で、千葉県東部の中枢都市としての性格も強い。

 現在の人口は約9万人、2000年以降は頭打ちとなっているが、1955年~ 2000年までの45年間で約2倍に増加した。

 1992年には、JR「茂原」駅前の再開発ビルに、異例とも言える大手百貨店が出店。その商圏の広さが話題となったが、同店は2000年に撤退した。同ビルはその後、学習塾やオフィスなどが入居。14年には市立図書館が最上階フロアにオープンした。百貨店時代の集客力には及ばないものの、全国の地方都市の傾向と同様に、ここでも公立の図書館が再開発ビルの核テナントとなっている。

 なお同市では昭和40年代、主に大手総合商社などが構想した住宅団地(ニュータウン)の計画が複数存在した。計画人口数千人~ 1万人という大規模なものだったが、オイルショックで一度頓挫。一部ではバブル崩壊と前後して再事業化へ向けた調査も行なわれたものの、これまでに実現したのは、当初の規模を大幅に縮小して事業化した県公社による団地のみ。その需要層も、当初想定していた東京・千葉方面への通勤者による新規流入ではなく、地元での買い換え層が多いという。

 一方、JR「茂原」駅西側に広がる中心市街地では現在、区画整理事業が進行している。現況では狭く入り組んだ道路や移転に伴う空き地が目立つが、早急にまちらしい姿の形成が待ち望まれるところだろう。

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★次号予告

次回は4月18日(月)に、『月刊不動産流通2019年3月号』より、
「一問一答!建築のキホン」を掲載します。お楽しみに!

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