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日本全国不動産掘り出し情報⑦

このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。

今回は、「日本全国不動産掘り出し情報」
知る人ぞ知る全国各地の不動産情報を(株)遊都総研が解説するコーナーです。『月刊不動産流通2019年7月号』より、「水俣市」「魚津市」を紹介します。

★水俣市

公害都市から環境先進都市へ。
高速交通網の整備も進む

水俣市の中心市街地。国道3号線がそのまま目抜き通りとなっている

熊本県の南端に位置し、西に不知火海(八代海)、南に鹿児島県出水市が接する水俣市。高度成長期に発生した工場排水による水俣病で世界的に知られるところとなり、長らく負のイメージを抱かれてきたが、近年は環境先進都市として注目を集めている。

1993年には全国に先駆けてゴミの分別収集を開始。2008年には国の「環境モデル都市」の認定を受けたほか、環境NGOなどによる環境首都コンテストでも、たびたび全国1位を受賞してきた。市民による高度なゴミ分別により、工業団地にはリサイクル関連産業などが立地している。

現在、まちの玄関口となっている肥薩おれんじ鉄道「水俣」駅に降り立つと、公害の重苦しい雰囲気は感じられない。15年に改装された駅舎にはクルーズトレインなども停車。地元の農産物を素材としたカフェなども併設され、さながらリゾート地の駅といった印象だ。

同市の中心市街地は、海と山に挟まれた狭い平坦地に細長く集中していることから、同規模(人口約2万~ 3万人)の地方都市に比べ、比較的コンパクトにまとまっている。また、同市を貫く幹線道路・国道3号線も、地形上の理由などから市街地を大きく迂回するバイパスは建設されておらず、幹線道路がほぼそのまま市街地の目抜き通りとなっていることから、結果的にまちなかの空洞化はある程度抑えられてきた。しかし近年は、同市の南に隣接し、平坦な開発用地が比較的多かった出水市にロードサイド店が出店、商圏人口の流出が顕著だという。

一方、高速交通網では、04年には九州新幹線の部分開通により「新水俣」駅が開業、11年には全線開通により福岡・関西方面と直結した。さらに19年3月には南九州西回り自動車道の水俣ICが開業。これら高速交通網をいかにしてまちの発展につなげていくのかが、次の課題と言えるだろう。

魚津市

第三セクターと地方私鉄が複雑に並存。
北陸新幹線との接続が課題に

2013年に改築された「電鉄魚津」駅。並行するあ いの風とやま鉄道側にホームは無い

富山県東部に位置し、富山湾に面する魚津市。古くは宿場町・城下町・門前町として栄え、近現代は港町・商工業都市として発展してきた。現在の人口は約4万人、その中心市街地は蜃気楼で知られる臨海部近くの平坦地に広がっている。

同市の鉄道網は、あいの風とやま鉄道(旧JR北陸本線が第三セクターに移管)と富山地方鉄道本線がほぼ並走して市街地を南北に貫く形で敷設されているが、両路線の関係はやや複雑だ。旧JR北陸本線は、古くからの中心市街地からやや北に離れた場所に「魚津」駅を設置。駅周辺の整備が進んだのは昭和40年代以降と比較的新しい。一方、富山地方鉄道は古くからの中心市街地からほど近い一画に「電鉄魚津」駅を設置。1967年には日本海側初の高架駅としてターミナルビルが開業するなど、当時としては全国的に見ても「先進的な地方都市」の景観が出現した。ただし、「電鉄魚津」駅付近はあいの風とやま鉄道が同じく高架で並走しているにも関わらず、駅は設置されていない(一方、「魚津」駅は富山地方鉄道側の駅も併設)。言わば、中心市街地の表玄関を旧JRが「素通り」する状態が続いていたのである。

さらに、2015年に北陸新幹線が長野から金沢まで延伸開業したが、魚津市内には新幹線の駅が設置されず、今度は同市自体が「素通り」される形となった。同市の北陸新幹線の最寄り駅は、北に接する黒部市に設置された「黒部宇奈月温泉」駅となるが、同駅に接続しているのはあいの風とやま鉄道ではなく、富山地方鉄道本線となっている。

こうしたことなどもあり、同市では「電鉄魚津」駅に並行するあいの風とやま鉄道側にも新駅を設置し、両線の接続改善を図ろうとする運動が起こったが、構想は具体化していないという。同市は、第三セクターと地方私鉄の並存という、複雑な課題に対峙し続けていると言える。

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