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『愛がなんだ』の絶妙な共感性と描写と人間関係。

映画『愛がなんだ』を観てから、ずっとあの映画のことを考えている。

ネタバレがあるので、映画を観たいかたはこの先は読むか読まないかご判断を。

上映場所や期間が広がり、この先もどんどんたくさんの人に観られるであろう作品。

この映画は絶妙な塩梅が凄い。
この絶妙さはなんなんだろうと考えていた。

・主人公てるちゃんがいつも幸せそうに笑っていたこと。何一つ悲劇のヒロインぶってないところ。時には切ない表情を浮かべていたけど、それでも健気にまもちゃんを好きでいる景色がたくさんあったからこそ、メンヘラ感が薄まり観やすかったんだろう。

・てるちゃんの好きな人、まもちゃんも純粋な片想いをしていたこと。
ただ、あの映画のなかで映ってなかっただけかもしれないけど、決してヤリチンではなかった。てるちゃんとはそーゆー関係だったとしても、ようこさんにはとてもとても純粋な恋をしていた。
そこが一番の絶妙な決め所だと思った。そして私にとっては一番共感できなかったところ。純粋に恋してるまもちゃんは可愛くて素敵だった。
現実の恋愛だとセフレの彼には他にもわんさか女の子がいる。
ゴキブリが部屋に一匹いたら、そこにはゴキブリの巣がありたくさんいるように
男にひとりの女の子の影があったら、もっともっと他にも女の子の存在がいる。
まもちゃんにはそこの描写がなかった分、てるちゃんに優しくなくても嫌いになれなかった理由かもしれない。

・過度な性的なシーンがなかったことも絶妙なところだった。どちらかと言うと、女の子が一度は好きな男の子にされたい仕草をたくさんシーンに詰めていただいた(あえてここ敬語)ような感覚は感じた。
てるちゃんが料理をするシーンで後ろから抱きついてきて、おいケチャップ食べさせるのはずるい。
お風呂で向き合ってシャンプーしてもらうのも、動物園に行ってなんとなく未来の話をするのも。過度なシーンがなく、そういった情景が散りばめられてたことによって切ないのにポップさを感じたのかもしれない。

・キャスティングが非常に親近感が湧いた。
岸井ゆきのさんの、どこにでもいそうな片想い女子は本当にハマっていた。ちょっとあどけなさの残る感じとか、そこまで狙ってないカジュアルな服装も。成田凌さんのいつも少し髭残ってて、けだるくて、前髪長い雰囲気イケメン系男子も世田谷にマジでたくさん住んでいる。
江口のりこさんの人に左右されない自分の世界を持つ感じも、若葉竜也さんの愛のありすぎる優しくも脆い表情とか、深川麻衣さんの自分主義だけどどこか俯瞰してすべてを見てそうな役もすべて隣で実際起こってそうな気持ちになるほど親近感の湧く俳優陣たちだった。

・てるちゃんの子供の頃の女の子。
あのシーンがとてもアクセントになった気がした。子供の頃の自分と、大人になった今の自分。よくあるシーンかもしれないけど、この映画では必要なシーンだったろうなって。

・休符のような、町や空の情景描写。
定期的に、観ている側がふと物思いにふけたくなるような合間のシーンも絶妙だった。
人の生活感を感じて、てるちゃんは今考え事してるのかなとか思ったり、あの休符のような空間があるからこそ、物語というメロディーがとても気持ちよく流れていたんだろう。

この手の恋のお話は本当にいくらでも暗いものにできるしアングラになる。
でもそれを上手い絶妙なバランスで作られているから、たくさんの恋する女の子の共感は勿論、男の子にも話題になっているのだろう。

『愛がなんだ』を観て数日経ち、それでも私の心の中で、てるちゃんやまもちゃんが生活をしているもんだから、いてもたってもいられなくなりまたnoteに記してみた。

私もまもちゃんくらい真っ直ぐにようこさんに恋するような好きな人と出会いたかったな。

自分を好きになってくれなくても、せめて真っ直ぐ誰かを好きな人を好きになりたかった。

だから、てるちゃんの好きな人がまもちゃんだったのは、間違ってないしとてもとても素敵なことだったんだよ。
って、いつかてるちゃんに伝えてあげたい。


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