スズキセイラ

札幌に暮らすフリーライター。歌人修行中。日々のちいさな喜びごとを。

スズキセイラ

札幌に暮らすフリーライター。歌人修行中。日々のちいさな喜びごとを。

マガジン

  • 音のないことばたち。

    ことば を つむぐ。ひと を つなぐ。

  • 「わたし」というひとの話

    仕事でもなんでもない、ただのひと。 それもわたし。

  • その歌に まだ名前はない。

    迷子のように、なにもわからないまま短歌をつくりはじめました。 まだ名前はありません。 #短歌 #tanka

  • スープの冷めない距離からみたわらじ荘のはなし

    「住んでないけど荘民」のわたしが見たシェアハウスわらじ荘と(仮)ミートハウスと(仮)谷地頭荘のはなしを。

  • ポートフォリオ

    仕事実績まとめ

最近の記事

塔 掲載歌(2023. 12月号)

2023年最後の塔では、作品2梶原さい子さん選の鍵前に7首掲載いただきました。 ※ ※ ※ 眠れない夜はすべてが耳になる海をめざして落ちる水滴 ぼんやりとひとの言葉の先をみて証明写真は笑いすぎない わたしにも温度があるということの涙にながしたいのは自意識 くちびるを読み解きたくて見つめてる名づけられない花だとしても いま鍵をかけているのは置き去りのことば 部屋からそっと離れる 寄り道とよぶには遠くかえれない街あかりみな星の切先 目に海を携えながら張力は零さずにい

    • 塔 掲載歌(2023. 11月号)

      塔11月号では作品2 岡部史さん欄の鍵前に7首を掲載、さらに選歌後記で言及いただいております。 ※ ※ ※ ※ ※ さみしさを胸に引きうけ立つ決して遠くなれない離島のままで たよりないいのちの軌跡戒めをとかれたようなモンシロチョウは ためしても見えないこころランドルト環を永遠欠けさせている あじさいが土をえらんで変える色わらいかたから忘れてゆくの 沈みゆく午睡の際(きわ)でひかる波 伏せたページのずっと潮騒 海の泡はじけるときはみな白くあなたに何も残せなかった

      • 心に積まれるもの

         いつからか、いろんなひとがわたしに物語を手渡しては去っていった。 中学生のとき、グループで仲がよかったMちゃんが、「きのう妹を殺す夢を見ちゃった」と言ってきた。 Mちゃんのお母さんは、私たちが15歳当時に30歳の若さで、Mちゃんとは血縁がなかった。料理が上手で(何回かおうちに招いてもらった)働き者の、気持ちのいい女性だったと記憶している。そのお母さんとお父さんのあいだに、Mちゃんには小さな妹がいた。嘘偽りなく仲の良い家族だったけれど、何の引っかかりもなかった訳ではないと思

        • 塔 掲載歌(2023. 9月号)

          9月号では、吉川宏志代表選の新樹集に掲載いただきました(作品2 小林幸子さん選、6首)。 新樹集へ入れていただくのはこれで2回め。心からうれしいです。 ※ ※ ※ ゆうぐれは背中の時間届きたい思いばかりがのびてゆく影 ゆるせないことがゆるせず六月は雨のかたちの言いわけが降る 掴もうと手をのばすとき覚めるゆめあらゆる過去は液体だから 霧雨が脆さにしみる朝 追えば聲の、からだの、とけだしてゆく ともだちの定義のちがうさみしさにすこし傾くバス停の夜 青いあおい酸素のい

        塔 掲載歌(2023. 12月号)

        マガジン

        • 音のないことばたち。
          58本
        • 「わたし」というひとの話
          6本
        • その歌に まだ名前はない。
          34本
        • スープの冷めない距離からみたわらじ荘のはなし
          5本
        • ポートフォリオ
          3本

        記事

          はやくゆうれいになりたいゆうれいは花をたべると姉がいうから/ 永汐れい(東京歌壇 2021.10.24)

          はやくゆうれいになりたいゆうれいは花をたべると姉がいうから / 永汐れい ゆうれい。 初めて東京新聞の紙面(正確には、デジタル版だけど。)でこの一首を見たときは、びっくりした。 ゆうれいは、誰なのだろう。 文脈からいくと、姉はゆうれいの生態(おそらく死者だけど。)を知っているらしい。主体に「ゆうれいは花をたべるんだよ」と話して聞かせたのだろう。 では、何のために? ※ 嘘をつくことは悪だろうか。 誰かが大切な誰かのために嘘をついたとして、それは責められることなの

          はやくゆうれいになりたいゆうれいは花をたべると姉がいうから/ 永汐れい(東京歌壇 2021.10.24)

          塔 掲載歌(2023. 4月号)

          あざやかな緑の表紙の塔4月号。 作品2 岡部史さんの選で、鍵前2番目におります。探して、最後に目次を見たときのよろこび…。7首を掲載いただきました。 自分らしいと思える歌を選に入れていただき、とても嬉しい。 ※ ※ ※ 心地よいはやさが違うひとといて一秒ごとにすすむ秒針 ひと気ないオフィスの自販機 落下する水はだれかの伝言のよう タイマーを押し忘れたらタイマーの沈黙に気づくまでの空白 あるはず、と思えば夜をやすらいで冷蔵庫にはひかりも仕舞う 涙ぐむように半月欠けさ

          塔 掲載歌(2023. 4月号)

          東直子先生のこと

          いつかきちんと文章にしよう、と思いながら数年が経ってしまいました。 私にとって、東直子先生は、こころのなかで慕う短歌の師です。 そう思うようになった、大きなきっかけがありました。 私が勘違いから歌人養成講座に入ってしまい、短歌を実作するようになったのは2020年の6月。 とにかく、短歌が好きなのだけど、どうにも思うように作れなくて苦しんでいました。 全部だめ。全然だめ。作りたいものは、こんなんじゃない。紙のようにぐしゃぐしゃに丸めて、遠くにほおり投げてしまいたい。 分

          東直子先生のこと

          塔 掲載歌(2023. 3月号)

          3月号の塔誌。 作品2 梶原さい子さん選で、鍵前2番めに7首を載せていただきました。目次にも名前が載り、驚きまじりの嬉しさです。 ※ ※ ※ 途切れてもこえてもいけない線をひく硝子のような気づかいの輪に 線描の横顔ばかりちらついて冷えた睫毛の針葉樹林 だいじょうぶ、ゆっくり鏡は笑ってる瞳に嘘を漂流させて なんぜんかい揺らいでここに帰る旅 洗濯槽のいたいけだった あたたかな時間にいつか消えるから祈りは六花の結晶に似て ほんとうに知りたい夜は揮発性うつわに満たすこ

          塔 掲載歌(2023. 3月号)

          元気をもらう、という搾取あるいは依存

          どうにも元気が出ないとき、ふっ、と浮かぶ歌がある。 一度聞いたら(読んだら)覚えてしまうシンプルなフレーズ。 ものすごくホラーな一場面を想像してしまう。 もっと元気をください もっと もっと もっともっともっともっともっともっと… 何かを得て、さらにその何かを欲しがる行為 この一首の場合は、「何か」が「元気」に該当する。 目に見えないパワー、気力。 少女たちは誰かを(主体を?)取り囲みながら「もっとください」「もっとください」と迫っているわけだ。 真実、こわい。

          元気をもらう、という搾取あるいは依存

          塔 掲載歌(2023. 2月号)

          今月から、若葉集を卒欄して作品2へ移りました。 作品2のかたはたくさんたくさんいるので、自分の名前を探すのに時間がかかります。 人混みをかき分けるようにして、自分の名前を見つけたときは驚いて叫んでしまいました。 作品2山下泉さん選で、鍵前に7首を掲載いただきました。 尊敬する歌人の方々と並んで、震えが…!目次の4番目に名前を入れていただきました。 ※ ※ ※ 千年の約束のように雪虫が冬をしらせてあとかたもなく 珈琲のカップにゆびをあたためて冬の深度をはかる眠たさ 噛み

          塔 掲載歌(2023. 2月号)

          塔 掲載歌(2023. 1月号)

          塔1月号では若葉集 なみの亜子さん選で6首を掲載いただきました。ありがとうございます。 ※ ※ ※ 記憶とはこぼれるしずく海沿いの鉄路の窓は無邪気にひかる 歩道には掃きあつめられた黄葉のただひとときの整然として 約束と束縛のはざま かさねあう手に混ざらないそれぞれの脈 幾重にも窓をひらいた画面から〈雨が近い〉と詩片がとどく ちぎれてもちぎれても声をあげない雲柔らかくほほえむような 呼びかけたわたしの声の昏がりに引き摺られてくる夜のカーテン / 鈴木精良 ※ ※

          塔 掲載歌(2023. 1月号)

          連作「がたんごとん」

          「ゆにここ」での石川美南さんの連作講座「ゆめみがち短歌教室」(2022.9〜12月)の課題として、連作をつくりました。 夏に訪問した「生きるための道具と詩歌 がたんごとん」さんでのことを、思い出しながら。 ※ ※ ※ 『がたんごとん』     鈴木精良 記憶とはこぼれるしずく 海沿いの鉄路の窓は無邪気にひかる のりかえのホームで待てどひとけなく時刻の谷にひらくこすもす 十七番塩谷ゆきぽつりバス停の心細さの点(とも)るつまさき ーー「生きるための道具と詩歌 がたん

          連作「がたんごとん」

          塔 掲載歌(2022. 12月号)

          塔12月号、今月は若葉集 山下泉さん選で6首を掲載いただきました。ありがとうございます。 ※ ※ ※ 触れなければ沁みない水だ キャスターが夜のニュースで語る淡々 誰ひとり傷つけることなく閉じて揺りおとすのは雨の残骸 笑いあう 山積みの懸念ひとつずつ片づけるまでながい宿題 まだここが居場所とちいさく鳴いているブランコ心のこりが揺らす 朝の月しろく鎮静剤とけて街灯すべて眠りはじめる 移ろいの季節の張力にぎる手にふたりは一日年老いてゆく ※ ※ ※ 3首めは桝枯

          塔 掲載歌(2022. 12月号)

          塔 掲載歌(2022.11月号)

          塔11月号が届きました。 今号では、若葉集 小林信也さんの選で5首を掲載いただきました。 ※ ※ ※ 間違えることのたのしさきみが言う海は些細なひかりの集合   同量になりますように祈りつつふたつのグラスへ泡を注いだ   木は森に悪意は善意にかくされてうつくしさだけで手にとるトマト   爪弾けば楽器とよばれる虚しさをことばにしても風になるだけ   意図せずに救われること まひるまの街路樹の戦ぎ青かったこと / 鈴木精良 ※ ※ ※ 1首めはとりばけいさんと

          塔 掲載歌(2022.11月号)

          塔 掲載歌(2022.10月号)

          今月は、若葉集 永田淳さん選で鍵外に8首を掲載いただきました。 8首は自己最多…!うれしいです。 ※ ※ ※ わかりあえなさの確かな毎日に心臓のふりをしてる空洞 境い目のないそらからの水のあと くらい油に虹はひかって はじめての言葉やしぐさ、生いたちは知らない国の童話のように うれしくておなじ仕組みのあるからだ真夏の汗のつぶとめどなく 泣きそうな背中はわかる予報では午後からあめの鈍色(にぶいろ)をして あまい水こぼせば蟻の群がってつよいことばを言わされている

          塔 掲載歌(2022.10月号)

          塔 掲載歌(2022.9月号)

          今月も心待ちにしていた会誌が届きました。 9月は若葉集 前田康子さん選で6首を鍵外に掲載いただいております。ありがとうございます…! 目次の2番目に載せていただき、うれしくて声が出てしまいました。 ※ ※ ※ 飛び石のような日かげへとびこめば夏の余白はひんやり青い 遠くへは行けないけれどベランダにふたりの最寄りの月をながめた 慎重にことばを選ぶとおくても近づきすぎても測れない明日  波紋 眠らないまぶたは眠れない信号をただ瞬いている  疲れた顔じゃないほうの顔で夜

          塔 掲載歌(2022.9月号)