エフ=宝泉薫

痩せ姫と芸能、美や死についてつらつらと。

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最近の記事

蛇とダイエット

女子大生のユミは、彼氏が飼っている蛇を半年ほど預かることになった。 商社勤務の彼氏いわく、できれば出張先にも連れて行き、自分で世話をしたいのだけど、今回は海外なのでそういうわけにもいかないらしい。彼氏は無類の蛇好きで、細長いフォルムや冷たい肌触りがたまらないという。 ユミもまた、蛇にどこか似ている。 身長は160センチ以上あるのに体重は40キロ前後、ひどい冷え性で平熱も34℃台だ。しかし、蛇にかなわないのは食欲の違い。蛇という生き物は拒食状態がデフォといわれるほどで、数日

    • 何処までもやせたくて(93)

      おかしいな。 恵梨にメールしたのは、4時すぎなのに、まだ返信がない。 時計を見ると、夜の10時近く。 しびれを切らして、ケータイに電話してみると、 「どうしたの?」 と、すっとぼけてるから、 「私のメール、見てないの?」 「ううん、見たけどさ… 聞きたいことがある、って言われても、私はあまり話したくないんだよね」 「話したくない、って、おかしいじゃない。 あんなに夢中だったのに、突然別れたい、なんて。 Eクンも、理由が全然わかんない、って、首ひねってたしさ」 「Eさん

      • 何処までもやせたくて(92)妹の心変わり

        「カウンセリングって、どんなこと話すの?」 目の前にEクンがいるのが、なんだか不思議。 午前中、相川さんのいるクリニックで初めてのカウンセリングを受け、それだけでも緊張したのに、午後にはこうして、昔の片想い相手と一対一で会ってるなんて。 「うーん、なんていうか、悩みごとを聞いてもらうだけなんだけど。 でも、相手はプロだから、話しやすいんだよね」 じつは、相川さんも一緒にいてくれたせいか、話すことでかなり気持ちがすっきりして、ビックリした。 でも、なるべく平静を装わないと

        • 何処までもやせたくて(91)本格的過食?

          伯母にクリニックの話を持ち出された翌日…… やはり、相川さんのいるクリニックに電話をすることにした。 最初はそんなつもりなどなくて、いろいろな嘘を考えてみたのだけど、そのうち、それどころじゃなくなってしまったから。 夕食前に体重を測ったら、とうとう30キロ台に。 計画的過食によって、あえて増やしてるとはいえ「3」から始まる数字が目に入った瞬間、パニックになった。 だから、夕食を控えめにして、調節しようと思い、伯母には「最近頑張って食べてたから、胃が疲れてるみたい」と言っ

        蛇とダイエット

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        • 何処までもやせたくて
          93本
        • 2084年
          2本
        • かすみ嬢の居場所
          71本
        • ダイエット大好きJK・水内姫那
          13本
        • 彼女がいい子な理由
          4本

        記事

          2084年(2)ツイッギーを超えた女

          このあたりが特殊な一画と化したのには、ひとりの女性の存在も大きかった。 中林美緒。 2036年生まれの彼女は、ここにある名門女子大の幼稚園に通い、大学まで進んで卒業した。 小学校時代から雑誌モデルを始め、高校時代にはコスプレイヤーとしてデビュー。 このとき、二次元体型に近づくために行った極端なダイエットがその運命を変えることになる。 身長165センチで48キロだった体重を33キロまで減らし、アニメやマンガ、ゲームのキャラに扮したコスプレの画像や動画を発信。 顔が痩せにくいと

          2084年(2)ツイッギーを超えた女

          痩せ姫とフリーダイビング

          痩せ姫の生き方は、スポーツのアスリートにも似ている。 で、どの競技がより近いかなと考えるうち、ふと思い当たったのがフリーダイビング。 潜水してその距離などを競うものだ。 息が続くギリギリまで潜り続けようとする姿は、命の限界まで空腹に堪え、痩せ続けようとする制限型の拒食に通じるかもしれない。 肺に障害が起きることもあるようで、そういえば、痩せ姫も自然気胸になったりする。 痩せ型の若い男性に多い病気だ。 ひとつ間違えれば死の危険も、という意味では、スキーのジャンプとかも近いの

          痩せ姫とフリーダイビング

          2084年

          2084年、東京。 人類の痩せ願望はとどまるところを知らず、日本はその先頭をひた走っている。 そんな「痩せ」王国を象徴するのが、首都に生まれた特殊な一画。 海外からは「スキニータウン」などとも呼ばれるそこは、世界のどこよりも、細い女性たちが行き交う場所だ。 もともと、この一画には、私立の名門女子大やそこに連なる高校、中学校、小学校、幼稚園があり、芸能事務所やモデル事務所、国内外の高級ブランドショップ、スポーツジム、バレエ教室、ダンススタジオ、エステサロン、自然食レストランな

          痩せ姫が映える色

          痩せ姫はどんな色も似合う。 というのは前提として、当事者たちの感覚からちょっと考えてみた。 ひとつは、水色が好きなんだけど、顔色がよくないのでそういう色の服を選べなくなったという痩せ姫の言葉。 もうひとつは、明るく見えるよう、ピンクばかり着るようになったという痩せ姫の言葉。 たしかに、バランスを考えると、それもわかる気がする。 ピンク系で、ふわっとしたボリューミーな服なら、世間的には細すぎとか病的と思われがちな外見をカムフラージュできるので。 ただ、その一方で、むしろその外

          痩せ姫が映える色

          何処までもやせたくて(90)計画的過食

          29.5キロ。 起きてすぐに測った体重の数字が、朝の散歩に出た今も、目に焼きついている。 伯母の家に来て、一気に4キロ以上も増えた体重。 四捨五入すれば、もう、30キロ台だよ。 でも、ショックはショックだけど、これでいいんだと、言い聞かせる。 これは、あの人に連れ戻されないようにするための、計画的過食の結果にすぎないのだから。 母がこっちに来るという約束を破った日、ガッカリした気持ちのあとに、冷たいあきらめのような心がやってきて、私のなかに居座った。 私がどうなろうと

          何処までもやせたくて(90)計画的過食

          何処までもやせたくて(89)約束なんて、

          「じゃあ、今、冷蔵庫から出すわね。 飲み物は、何がいいかしら」 「あ、いただけるなら、コーヒーを、ブラックで」 さすがに、カロリーのある飲み物は避けたい。 体は何か甘いものを、欲してる気もするけど。 ちょっとだけ体重を増やして、とりあえず元気になるのが、今の目標なのだから。 伯父さんも参加して、三人でお茶会みたいになった。 久しぶりに食べたスイーツは、信じられないほど美味しくて、これならいくらでも食べられそう。 えっ、やばいよそれ、まさか、本格的な過食の始まり? 「私

          何処までもやせたくて(89)約束なんて、

          何処までもやせたくて(88)お腹がすいちゃった

          伯父伯母の家に来て、二度目の朝食。 思い切って、白米に挑戦してみることにした。 美味しい料理を作ってくれる伯母に申し訳ない、という理由もあるけど、それだけじゃない。 昨日、朝と夜におかずだけの食事をして、昼にホットケーキを食べて…… にもかかわらず、朝に測った体重がまったく変わってなかったから。 このままじゃ前に進めないという焦りと、あんなに食べたのに太らずに済んだという安堵、そして、母に会うときまでにもうちょっとマシな顔になっていたい、という見栄のようなものが、背中を押

          何処までもやせたくて(88)お腹がすいちゃった

          何処までもやせたくて(87)ホットケーキと母の変化

          伯母とのホットケーキ作りは、想像してたよりも楽しめた。 けっこう美味しくできて、自分でも、ひと切れ味わうこともできた。 朝食をちゃんと食べたせいで、お腹が張っていて、お昼を抜いたから、そのかわりに、ひと切れぐらいなら食べても大丈夫、って、自分に必死に言い聞かせて。 ホットケーキを作りながら、改めて感じたのは、伯母との相性のよさ。 会話をしていても、ストレスをそれほど感じずに、やりとりができる。 朝に続いて、ホットケーキまで食べられたのも、そのおかげかもしれない。 「伯母

          何処までもやせたくて(87)ホットケーキと母の変化

          何処までもやせたくて(86)ひと口ずつ、一歩ずつ。

          でも…… 伯父と伯母が醸し出す、穏やかだけど張り詰めた空気から、自分には「食べる、食べない」という選択肢など、与えられてないことは明らか。 問題は「何をどれだけ食べ、何をどれだけ食べないか」だ。 勇気を出して、言ってみる。 「これ、全部食べるのは無理そうだから、絶対、残しちゃうから、 食べられそうな分だけ、取り皿に移してもいい?」 「残したっていいのよ。好きなものだけ、食べてくれれば。 半分くらいは、食べられるでしょ」 半分なんて、一日、いや、三日かかっても無理だ。

          何処までもやせたくて(86)ひと口ずつ、一歩ずつ。

          何処までもやせたくて(85)不安のにおい

          伯母の家に着くと、伯父が晩酌をしていた。 「おっ、よく来たね。半年ぶりくらいかな」 「はい。なんか、お世話になることになっちゃって。すみません」 「謝ることなんてないよ。 上京してから、一度しか遊びに来てくれてないでしょ。 ちいたんといっぱい会えるって、楽しみにしてたのに……」 子供の頃のあだ名で呼ばれ、ちょっとビックリ。 「あ、ごめんね。 ちいたん、って呼んじゃいけなかったんだっけ。 伯父さん、ちょっと酔っ払ってるみたいだね(笑)」 「ううん、なんか、懐かしくて、嬉し

          何処までもやせたくて(85)不安のにおい

          芸術品みたいになりたかったな~かすみ嬢の居場所(終)

          「骸骨みたいだー」って言われるけどさ、私の身体には文章をこねくりまわせるだけの脳があって、透けて見えちゃうどころか浮き上がってるけども血が流れる血管があって、それらをぜーんぶ守る皮膚があって、私は私だよってつい思っちゃうの。  先生も先輩も「今のままだともう間もなく死んでしまいますよ」っておっしゃるけども、とても私は元気だから身体的に死ぬとはとても思えないのです。精神的に死んじゃうんなら、肉体的な死を望みたいよって、今日も少し涙が出ました。  そして、夜だからこのまま言ってし

          芸術品みたいになりたかったな~かすみ嬢の居場所(終)

          病院に行くのを止める方法~かすみ嬢の居場所(70)

           病院に行く前にということで、何人もの人から声をかけていただいた。コメントやDM、質問箱でも。  ずーっと私の理想で、憧れの中の憧れの痩せ姫さまには、 「世界観を拝見出来なくなるのが寂しく思います」  と。  彼女の言葉は、一言一言が本当に重くて、考えさせられることばかりです。ある時は私の指標になり、ある時は私にストップをかけるものとなり。 その言葉は今と変わらず、素敵なものであり続けることでしょう。  Coccoさんのことをはじめ、好きなもの、綺麗に感じるものが似ている

          病院に行くのを止める方法~かすみ嬢の居場所(70)